次は写真と一緒に、本製品の特徴をざっくりとご紹介したいと思います。『JUNO-106』の音源部分にはDCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)を内蔵しています。これは、ピッチ(周波数)の設定をデジタルでコントロールする発振器の事で、サウンドの元となる波形を作るセクションです。これによって、従来のアナログ・シンセのVCO(ボルテージ・コントロールド・オシレーター)と比べ、ピッチが狂う事はほとんど無く、とても安定しています。波形は、ノコギリ波、矩形波のスイッチでどちらかを選択したり、2つをミックスして音を作る事ができます。パルスウィズ・モジュレーションのツマミを操作すれば、矩形波の倍音を変化させる事ができ、サブ・オシレーターのツマミを上げればオクターブ下を補う事が出来ます。

ローランドが80年代に発売し、テクノ・ハウス系ユーザーに人気が高かった『JUNO-106』のサウンドと魅力 Te170102_ju06_6-700x468

『JUNO-106』には、HPF(ハイパス・フィルター)が搭載されています。HPFのツマミを操作すれば高い周波数の音だけを通過させ、低い周波数をバッサリと切り捨てる事が出来ます。また、VCF(ボルテージ・コントロールド・フィルター)は、LPF(ローパス・フィルター)になっていて、こちらは低い周波数を通過させ、高い周波数を切り捨てる事が出来ます。このセクションは、DCOで作った音色の倍音成分をカットしたり強調したりして音色に変化を付けます。

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面白い機能として、「POLY1」「POLY2」のボタンがあります。「POLY1」のボタンは前に押された和音のリリース音が残り、アンビエントのような減衰音を生かした曲の演奏にマッチします。そして「POLY2」のボタンは前に押された和音のリリース音を消してから、次に弾いた和音を発音できるので音を濁らせずに、はっきりした展開の曲調に使うのに向いています。

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ポルタメント機能を使えば、音階をなめらかに変化させる事ができ、シーケンス・フレーズに軽くポルタメントをかければテクノ的でカッコいいですし、ポルタメントを深めにかけて和音を弾き、低いコードから高いコードに「ミュイーン」と音がゆっくりと上がって行く様な奏法もできます。

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そして『JUNO-106』に搭載されているコーラス・スイッチはとてもカッコいいサウンドです。このコーラスをかけると普通のシンセの音色から、ステレオ感がグッとワイドになり、豊かで拡がりのあるサウンドになります。「Ⅰ」・「Ⅱ」と2つのボタンがあり、「Ⅰ」は浅く、「Ⅱ」は深くコーラスがかかります。同時にかける事は出来ませんが、シンセ・パッド等の音色にコーラスの「Ⅱ」をかければ、『JUNO-106』独特の「ホワーン」と暖かみがあり、心地良いサウンドになります。

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『JUNO-106』のパッチ・メモリー機能は、バックアップ用のバッテリーが内蔵されているので、全部で128種類の音色を本体に記憶させる事ができます。本製品は、61鍵盤、6音ポリフォニックのプログラマブル・ポリフォニック・シンセサイザーなのです。

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次は実際に『JUNO-106』がどんな音が出るのかをご紹介したいと思います。本製品のおいしい音色をツマミ操作で変化させ、シーケンサーを使って様々なフレーズを鳴らした動画を撮影しました。『JUNO-106』の暖かく揺らぎのあるアナログなサウンドをご覧ください。

▼『JUNO-106』をシーケンサーで鳴らした動画はこちら。
ROLAND JUNO-106 DEMO SEQUENCE

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『JUNO-106』は旧式のシンセサイザーなので不安な要素もあります。内蔵されているカスタム・チップが壊れると音が出なくなり修理が必要になってくるようです。古い機種ですのでチップの生産は終了しており、その場合はビンテージ・シンセの専門店に修理をお願いするか、筆者はあまりおすすめしませんが、パーツを取り出すために『JUNO-106』をもう一台購入し、チップを取り出して使う方法があるなど、少々不安になる側面がある事も否定できません。筆者の『JUNO-106』は幸い問題なく使用出来ていますが、いずれそうなる事も覚悟して大切に使うようにしています。これから中古市場で『JUNO-106』を探そうとしている方は、その事を念頭に置いて購入する事をおすすめします。

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ちなみに、2015年にローランドから『JUNO-106』をコンパクトなサイズで再現した、『Roland Boutique JU-06』と言うサウンド・モジュールが数量限定で発売されています。こちらの『Roland Boutique JU-06』は、『JUNO-106』のパネルのデザインを彷彿とさせるカラーリングで、単3電池、USBバスパワー駆動が可能。16ステップ・シーケンサーを搭載しているので、本体のみでもフレーズを作る事ができ、オプションの小型キーボード『K-25m』と接続すればキーボード・シンセとして使う事もできます。『JUNO-106』の音が欲しいけど安定性も重視したい方や、ライブなどで気軽に持ち運びしたいという方は、そちらを購入するという手もあります。

発売から30年以上が経ち『Roland Boutique JU-06』として、今なお現代に受け継がれている『JUNO-106』のサウンド。技術が進歩し、音楽のスタイルが変わっても、人々が良いと思う音色はそれほど大きく変わっていないのかもしれません。筆者はおそらく、よほどの事がない限り『JUNO-106』を手放す事はないでしょう。最近ではDAW上にソフトウェア・シンセを立ち上げた時も、PCとMIDI接続した『JUNO-106』の鍵盤で打ち込みをする事もあるくらいです。もはや部屋にある事が定着し、ないと落ち着かない存在になっています。その暖かみのあるアナログな音色といい、グレーのルックスといい、『JUNO-106』は、生涯にわたって使用したいと思わせる、定番のアナログ・シンセサイザーなのです。

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