TOKYO HEALTH CLUBのニューアルバム『VIBRATION』が6月8日(水)にリリースする。近頃ライヴでよく目にするヒップホップクルーJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBや宅録女子ZOMBIE-CHANGなど、〈OMAKE CLUB〉と呼ばれるレーベルを束ね、J-WAVEのキャンペーンソングへの楽曲提供や、センスの良いミュージックビデオを量産し、なにやら騒がしくなってきたその台風の目TOKYO HEALTH CLUB。今回、名門〈レキシントン/Manhattan〉から満を持してのフルアルバムをリリースする彼らの、その実態は一体……?

TOKYO HEALTH CLUB。パッと見た感じ、サングラスで揃えたクールな印象の今時オシャレな四人組ヒップホップクルーだが、THC。と略してみればヒップホップマナーに則ったハードコアでブリブリなラップグループを彷彿とさせる。しかし、東京ヘルス倶楽部。とひとたび日本語に直すと卑猥な響きと相まって、急にこの四人組が、サングラスで武装してキメてはみたものの、そのグラスの向こうでは気のいい兄ちゃんたちがそれを気取られないように、風俗街で舐められまいとしているような、どこか哀愁のある佇まいも感じられる。その実、多摩美の美大生出身のこの4人組、道を外した、いわゆるヒップホップエリートでは決してないが、だからこその人懐っこさや独特のユーモア感覚が放つ、彼らならではのヒップホップ・センス。掴めそうでリスナーを煙にまく、どこまで本気? かがわからない彼らの実態、これまでに至る活動歴を振り返ってみる。

ニュータイプ・ヒップホップクルー・TOKYO HEALTH CLUBの実態に迫る! music160606_thc_2

そもそもの始まりは、メンバーのSIKK-Oが飲み会の悪ノリでTSUBAMEの作ったビートにラップを乗せたことだというが、それに味をしめたのか音楽活動を開始、最初のうちはベースでライヴに参加していたJYAJIEが自分もラップがやりたくなったのか、MCにコンバート。フィーチャリングで時折ゲストとして参加していた外部メンバーDULLBOYもやっぱり一緒にラップがしたくなってグループに合流。そんなゆるい経緯もあって多摩美術大学の同級生、4人が集まって結成したTOKYO HEALTH CLUBは何かの意思表明なのか、2012年9月に謎の動画『OMAKE OP』をYouTubeにアップ。今から思えばこれが、彼らにとって、人知れずネットの片隅からあげた狼煙なのだろう…。

OMAKE OP

[omakeTV] Tokyo Health Club Animal E.P.

その後も美大生ならではの高いスペックで告知動画の制作・デザイン力を発揮しつつ、DJ/トラックメイカーのTSUBAMEが主宰する自主レーベル〈OMAKE CLUB〉よりリリース第一弾、初の全国流通作品『プレイ』を全12曲、当時税込ワンコイン(500円!)の、まさにオマケ感覚で買える金額でリリースした。ちなみにこの当時のプロフィールには、「コロコロコミックの新解釈により誕生した」とある……へー……。

TOKYO GAS / TOKYO HEALTH CLUB

プレイ / TOKYO HEALTH CLUB

“とくになにもなし”、という収録曲がこのアルバムにあるように、メッセージも野望も特段あるわけではない、とにかく「やってみた」感が満載のこのアルバム。ここだけの話、美大生がやっているからなのか、どうにも筆者的にはそのスタンスが少し鼻につくも(ヒップホップ特有のヤンキー文化ってやつです、すみません)……よくよく考えてみれば、そもそもヒップホップって「韻を踏む」という最低限のルールでビートに言葉を乗せる遊びっていう面白さの側面もあるのだし、そう考えると、彼らの初作品『プレイ』は文字通りヒップホップの純粋な楽しさを表現した、すごく素直なアルバムなのでは? と。そういう意味でも確かに風通しの良い、さらには「これで2,000円とかとるのも他のアーティストさんたちに申し訳ないね」なんて話し合いがあったのか無かったのかわかりませんが、500円でリリースした、というのも果たして戦略からなのか謙虚さからなのか、どこからどこまで本気なのか、なんなんだTHC? という一部の思惑をよそに、約3ヶ月でアルバム500枚完売の報もあって、リスナーの間で気になる存在だった彼らは、その翌年、早くもレベルアップした姿をみせる。〈OMAKE CLUB〉第二弾リリースとなる2ndアルバム『HEALTHY』を全14曲またしても税込999円という低価格でリリースした。

I.W.N.B. / TOKYO HEALTH CLUB

この作品でそれまでの「遊び」感から脱却し、一皮剥けた感のあるTOKYO HEALTH CLUB。各曲の切り口もブラックなユーモアもたっぷりに、ヒップホップならではの暗喩や言葉遊びも更に巧みになっていく。とりわけ、Licaxxxやモデルの高山都らが出演したミュージックビデオが話題となった煌びやかなナンバー“CITY GIRL”で世間のシティポップの潮流にも乗っかる形でTOKYO HEALTH CLUBの名は一躍知れ渡っていく。この人気曲は、〈OMAKE CLUB〉所属の女の子ラッパーMCperoを招きリメイクし、7インチで『CITY GIRL 2015』と題され、あらたにリリースされた(B面にはご存知、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMACKA-CHINのRemixが収録)。

CITY GIRL / TOKYO HEALTH CLUB