支持する“DJ”の変化が“サウンド”の変化を表す

コンスタントにリリースするレーベルは〈Underwater〉から〈Skint〉へ移籍し、そこでフロアライクな12インチをマイペースで発表しつつ、自身のレーベル〈AT Records〉を立ちあげたりと、1stアルバムが生み出したある種の”呪縛”から解き放たれたかのごとく、彼は自由に活動するようになります。活動初期、トップDJのファットボーイ・スリムやダレン・エマーソンらが激プッシュした“It Just Won’t Do”なんかは、かからない夜はないんじゃないかってほど、当時のパーティーDJ達のほとんどがスピンしていました。ただし2nd以降は支持するリスナーはもちろんのこと、より幅の広いDJたちが絶賛し始めます。満を持した3rdアルバム『フルイド・モーメンツ』(10年)の楽曲群には、カール・コックス、カール・クレイグ、リッチー・ホウティン、ジョシュ・ウィンク、ローラン・ガルニエ、ニック・ファンシウリ、アシュレー・ビードルなどのリストにすると長くなる程の大物達が大絶賛。この頃から言わば、“ミュージシャンズ・ミュージシャン(=同業者が絶賛するミュージシャン)”なアーティストへと成長してゆきます。

Tim Deluxe – Freedom

★カール・クレイグにも通じるカッコいいテック・ハウス。最新作『ザ・ラディクル』へと繋がる「ジャズ感」はこの頃からも感じます。このアルバム・タイミングの来日(伝説の<Typhoon Party@代官山UNIT>!)でも、1曲目にかけていて盛り上がりましたね!

大の親日家! 今年も走ります!?

ありがたいことに彼は大の親日家です。初期のクラブ界隈の活動から身を引いた時期からかなりヘルシーな生活を送っていることもあり、昨年から自分自身で<東京マラソン>に応募して来日し、今年も2年連続ランナーとして走りました。 無事に完走! 結果はなんと3時間7分(参考タイム)と自己ベストである3時間23分を上回る記録も打ち立てました!

2014年<東京マラソン>にて

また2011年にリリースしたEP『トランスフォーメーション』は、東北大震災の被災者へのチャリティーとして〈Beat Records〉からリリースされました。この作品はドイツ出身のトップDJ/プロデューサーにして、名門レーベル〈INTERNATIONAL DEEJAY GIGOLOS〉のオーナーであるDJヘルが自身のレーベルでのリリースを懇願するほどの内容で、そんな作品を日本のために届けてくれる姿勢からも彼が「アーティスト」としてだけではなく「人間」としての成長が成熟へと移行していることが伺われます。

Tim Deluxe – Transformation

★これがDJヘルがリリースを懇願したEPのリード楽曲。ピアノのリフがとにかくカッコいい!!!

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