そういった意味で本稿の主役であるThe Josephsも抜きん出たヴォーカルが無二の魅力のバンドだ。2012年にNaoaki Tsudaが大学時代の友人であるKazunari Yoshidaとともに“Dearjon”名義で作曲活動をスタート。以降、各々ギターを担当し、メンバー交代を経て、2015年にヴォーカルのJuliaが参加、バンド名を現在のThe Josephsとし、本格的に活動を開始。現在はTomofumi Nozaki(Ba)を加えた4人編成で大阪を拠点に活動中だ。彼らのユニークさの一つにJuliaの活動拠点が大阪とフランスという意外性があるのだが、それは彼女のバックボーンと関連があるのだろう。東京では先日初のライブを行ったばかりという、バンドが個々にローカルで活動し得る近年のインディバンドのメリットをまさに体現しているバンドとも言えるだろう。

彼らも結成当時はバンドキャンプやサウンドクラウドに楽曲をアップしていたが、今年10月5日にフィジカルで9曲入りのアルバム『DUNE』をリリース。しかも面白いのが、レーベルが上質な国産ポップスをメインフレームとしてリリースするネットレーベル〈Ano(t)raks〉と、タワーレコードが新設した〈LUCK〉からのリリースであること。ちなみに〈Ano(t)raks〉第一弾は7月のevening cinemaで、その和製AORサウンドは〈Ano(t)raks〉のそれまでのリリース……Homecomingsや吉田ヨウヘイgroup、The fin.らをいち早くコンピレーションでフックアップし、PAELLASやSlow Beach、POST MODERN TEAMらの単独作品も発表してきた確かな審美眼に通じるものだ。そして、〈LUCK〉でフィジカルのリリースを行うことは、情報量が飽和しつつあるインディーズの中でも、さらにバンド/アーティストがリスナーにリーチする機会を設けることが主眼になっている。もはやクラウドにゴマン音源が存在する中、〈LUCK〉という強力な目利きがフィジカルでリリースしたいバンド、それがThe Josephsだったというわけだ。

The Josephs、yahyel、Ryu Matsuyama。ザ・エックス・エックスら世界のミュージックシーンと共振する新世代の才能 The-Josephs-DUNE-758x758-700x700

肝心のThe Josephsの特徴は冒頭にも書いたように、まずJuliaの日本人ともフランス人ともイギリス人ともつかない、国籍不明な迫力のあるアルトヴォイス。地声の迫力は一瞬、男性なのか女性なのか判別しかねるほど独特。日本のバンドで女性ヴォーカル、しかも海外で評価されるといえば、ほぼかっこいい、よりカワイイという形容詞が先行しがちだが、Juliaのヴォーカルは可愛さとも、またR&B的な巧さとも違う。クールな吟遊詩人てきといってもいい深い味わいがある。

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photo by 松尾裕矢

サウンド的にはクラブ×バンドの時代性を反映したサウンドとは大きく出自を異にするもので、大きくいえば90年代のUKインディやUSのオルタナティヴロックの影響が感じられる楽曲が多いのがThe Josephsがバンドとして堂々としたスタンスを築いている証左かもしれない。アルバム『DUNE』から先行配信された“Dusk”はハードボイルドとさえ呼べるロックのニュアンスでありつつ、ギターリフはいい意味で緩く、そこに乗るJuliaのヴォーカルもシャンソンの様な崩したかっこよさが特徴的だ。また、もう一つ、PVがアップされている“Daytona Drive”はタイトなリズムにザ・キュアーやザ・スミス的な、まさにUKのネオサイケやネオアコのテイストすら感じさせるギターサウンドが重層的にアレンジされていて、2016年の今聴くと、ある種のロック名曲の趣すらある。もしくはそうしたサイケデリアにザ・エックス・エックスにも通じるドリームポップ感を聴き取るリスナーもいるかもしれない。何れにしても初期のソニック・ユースやブリーダーズ、スローイング・ミュージズあたりの90sオルタナティヴロックの影響が背骨にあるのだろう。最近では珍しいバンドらしいアンサンブルが、エレクトロニック・ミュージックも世代として通過してきた上で構成されているのだろう。いい意味で、かっちりしすぎていないアレンジも邦楽ロックバンドにはあまりいない存在感を醸し出している。

The Josephs – Dusk (Lyrics Video)

テン年代に合ってはもはやオーセンティックにも聴こえるオルタナティヴなサウンドに乗るJuliaのヴォーカルは、時にジョニ・ミッチェルのような哲学的なムードや、PJハーヴェイにも通じる意志の強さも感じる。地声の強さに比べて、ファルセットや高音はまだまだ磨く余地はあるものの、ぜひナマで聴いて、その存在感を確かめたいヴォーカリストであることは間違いない。

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photo by 松尾裕矢

まだまだ謎の多いバンドだが、それだけにオルタナを背景にしたバンドと、いわゆるYOUTH WAVE以降のダンス×バンドたちとの交流、対バンがあるのか、また、フランスの音楽シーンと新たなケミストリーは起こって行くのか? 大いに楽しみな存在だ。

EVENT INFORMATION

NEIGHBORHOOD Vol.12
The Josephs 1st ALBUM 「DUNE」RELEASE PARTY

2016.11.23(水)
ライブハウス 地下一階
ADV ¥1,800/DOOR ¥2,300(1ドリンク別)
Luck & the HoneyBees、Banana Collection、TOXXIES、The Josephs
DJ:merry(Neu!Neu!Neu!)、nishikawa

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

『DUNE』

2016.10.05(水)
The Josephs
¥2,000(+tax)
LUCK by ano(t)rack
LUCK-1002
 
<収録曲>
1.Back To The Stage
2.San Marino
3.Daytona Drive
4.Rogue Royal
5.Love Beat
6.Dusk
7.Million Miles
8.San Marino(Acoustic)
9.Million Miles(Acoustic)
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