2014.11.12(WED)@白寿ホール
Red Bull Music Academy presents Scales Of Infinity

1ヶ月に渡り東京各所で開催されてきた<Red Bull Music Academy Tokyo 2014(以下、RBMA)>も終盤。<Scale Of Infinity>と題されたシリーズのヘッドライナーは、世界最速のミニマル・ピアニスト、ルボミール・メルニク。加えてアイスランドのエレクトロニカバンド、ムームのチェリストでもあるヒルドゥル・グズナドッティルが、<RBMA>東京の個性的な公演地の中でもレアなクラシックのホールに出演した。

ロビーに到着すると外国人のオーディエンスの多さにまず驚いたが、各所のセミナーやライブの感想などを歓談しており、コアなミュージックラバーが集っているようだ。

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(photo by So Hasegawa)

前半にはヒルドゥルがエレクトリック・チェロを携え登場。床に跪き風の音の如き声を放つ。それをリアルタイムサンプリングしつつ、立ち上がると今度は単音、そして弓を使ったサウンドと徐々に重層的な音像がホールを静かな緊張感で埋め尽くしていった。ごく小さな音から確かな低音まで体感できるホールとの相性が生んだ異次元の40分だった。

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ヒルドゥル・グズナドッティル(photo by So Hasegawa)

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ヒルドゥル・グズナドッティル(photo by So Hasegawa)

15分の休憩のあいだにステージにはグランドピアノがセットされ、後半にはメインアクトであるルボミール・メルニクが登場。冒頭に初めての来日、そして東京での公演にエキサイトしている旨と、この日の演目が3つのパートから構成されることを説明をした上でピアノに向かう。第一部はゆったりしたBPMながら途切れることなくループする旋律が重なりあい、まるで航海のような心地を誘う。第二部は“Butterfly”がテーマ。ミニマルなリフレインのレイヤーが時に読経のようでもあり、時にサイレンにも聴こえるという安寧と緊張感が相俟った体感を残した。ラストの第三部は、“Windmill”と題されたマイナーキーと低音のリフレインを軸にした演奏。激しさを増すグルーヴは、“風車”というより暴風雨のよう。

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ルボミール・メルニク(photo by So Hasegawa)

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ルボミール・メルニク(photo by Suguru Saito)

感情や物語ではなく、獰猛な自然の疑似体験といった趣きの音の構築に圧倒。人間の恐怖と快楽の狭間が紙一重であるという気づきを与えてくれる稀有な演奏がフィニッシュすると、それまで張り詰めていたオーディエンスからスタンディングオベーションが起こり、内的興奮の熱量を実感。終演後は本人もロビーに現れ、ファンやミュージシャン仲間と歓談する光景も目にしたが、想像以上に小柄な本人とあの圧倒的なサウンドスケープのギャップに少し驚いたが、熱心に語り合う姿にメルニク自身も演奏を楽しんだことが伺えた。

(text by Yuka Ishizumi)

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