00年代~10年代を通じて、アメリカのロック・シーンでますます影響力を増してきたUS新世代フォーク勢。中でももっともいぶし銀的な活躍が光る男=M・ウォードが、ソロ名義の最新作『モア・レイン』を完成させました。そこで今回は、先日の来日公演も話題になったボン・イヴェールを筆頭にますます盛り上がるUS新世代フォークの歴史をプレイバック。最新作『モア・レイン』が出来るまでを振り返ってみましょう!

M・ウォード

『モア・レイン』ジャケット

悩めるアメリカと新世代フォークのヒーローたち

広大な土地に生まれた地域性を特色にした、フォーク・ミュージックの豊かな土壌が広がるアメリカの音楽シーンには、90年代以降、その魅力をよりモダンに解釈したアーティストが続々登場。そのはしりと言えるのが、90年代末~00年代初頭にオルタナ・カントリーの雄と言われた初期のウィルコや、その前身バンドのアンクル・テュペロ。彼らはラムチョップやボニー・プリンス・ビリーらとも共振しながらフォーク/カントリーの歌心を音響美でコーティング。現在に繋がる実験的なモダン・フォークの基礎を築いていきました。01年の名盤『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』と05年のライヴ盤『キッキング・テレビジョン:ライブ・イン・シカゴ』で、その実験性は頂点を極めることに。

Wilco – Time Lapse: Misunderstood in Chicago

Lambchop – Paperback Bible

00年代に入ると、より土着臭漂うブルースをポストロックやハードロックで再解釈したマイ・モーニング・ジャケットも人気を獲得。ヒゲもじゃの大男が時に髪を振り乱して音響美を融合させたハードロックを演奏したかと思えば、時にはスウィートなソウルを披露するその不思議な音楽性をして、08年の『イーヴル・アージズ』が出る頃には、米ローリング・ストーン誌に「アメリカが自分たちのレディオヘッドを手に入れる時が来た」と評されることに。ボナルーのようなジャム・フェスティバルが現代のロック・シーンとの距離を詰めていったのも、今思えば、後に同フェスの常連となる彼らの登場と同時期のことでした。

My Morning Jacket – From The Basement – Thank You, Too!

そして00年代も中盤になると、まるで9・11同時多発テロ以降の混乱を反映するかのように、アニマル・コレクティヴやデヴェンドラ・バンハートといったよりナード気質のフリー(ク)・フォーク勢が台頭。中でもスフィアン・スティーヴンスの『Illinois』は、室内楽のプロダクションを取り入れたプログレッシヴな作風で前衛フォークの最先端を提示。よりマスな舞台では人気ドラマ『O.C.』のサウンドトラックにインディ・バンドの楽曲が多数使われ、映画『終わりではじまりの4日間』でヒロインのナタリー・ポートマンが主人公にザ・シンズを薦めるなどUSインディがお茶の間レベルでブレイクし、彼らと共振する形で正統派インディ・フォーク勢からもブライト・アイズが登場。彼が“When The President Talks To God”でブッシュ政権を批判するなどして、US新世代フォークはアメリカのリベラルな若者たちの代弁者として共感を得ていきました。

Sufjan Stevens – The Predatory Wasp Of The Palisades Is Out To Get Us!

Bright Eyes – First Day Of My Life

その熱気は、00年代後半にもなるとローラ・マーリングやノア・アンド・ザ・ホエール、マムフォード&サンズといったUK勢にも飛び火。同時に本国アメリカからも宗教的な讃美歌の響きを応用したフリート・フォクシーズや、簡素な弾き語りからスタートして壮大な音響美を手に入れたボン・イヴェール、R&B/ソウル的な要素も取り入れたフォスフォレッセントら新たなスターが登場。そして現在へと繋がっていくというわけです。

Fleet Foxes – White Winter Hymnal

Bon Iver – Holocene

Phosphorescent – Song For Zula

次ページ:その中心にいつもいた男。US新世代フォークいぶし銀、M・ウォード。

杉山仁

ライター

乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、Hard To Explain~CROSSBEAT編集部を経て、現在はフリーランスのライターとして活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』をはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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