々の「人生」は一言で形容できるものではない。人の感情は波のように浮き沈みを繰り返す。それが分・時間・月・年の単位となれば、良いときも悪いときももちろんあるだろう。また、人間はそれぞれの性格や哲学などで物事の受け止め方や対応方法も違う生き物。分かりやすい「人生」なんて一つもない、だからこそ人生は楽しい。音楽やアートも同じで、人々は形容やカテゴライズしてその解釈を分かりやすくしたがるが、音楽やアートもそんな複雑な「人間」が作るのだから、出来てくる作品もまたフォーマット化なんて出来ないものだろう。

アーティスト、Moby(モービー)を形容することは非常に難しい。彼の作品群で聴かれるのは、テクノ、ブレイクビーツ、アンビエント、ロック、ブルースやゴスペル風サンプル、など時代や概念を超えて訴えかけてくるものばかり。出自がレイブ・カルチャーという先入観もあるが、彼の作品群はその先入観を軽々と打ち砕き、我々に非常に形容のしがたい素晴らしい「刺激」を与えてくれる。あなたは彼の最新作『Innocents(イノセンツ)』をもう聴いただろうか。そしてこの作品の間違いなくハイライトな曲であろう“The Perfect Life (with Wayne Coyne)”を聴いただろうか。ザ・フレーミング・リップスのウェインとのデュエットだけあって、非常にエモーショナルであり、ゴスペルの祝祭性と土着性を兼ね備えたナンバーは「人生」について非常に美しく謳ってくれる。

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