ガンと闘病していたボウイの容態を知ってか知らずか、ボウイとの蜜月期を振り返るようなアルバムをイギーが作ろうとしていたことには運命の巡り合わせを感じるし、乱暴に言えば『ポスト・ポップ・ディプレッション』は、『イディオット』と『ラスト・フォー・ライフ』の約40年越しの“続編”と捉えることも可能だろう。

Iggy Pop & Josh Homme Cover Bowie “China Girl” Post Pop Depression Tour Warm Up LA 3/9/16

↑ 新バンドでのウォーミングアップ・ギグの映像。“China Girl”はボウイとの共作で、ボウイの1983年作『レッツ・ダンス』にも収録、その印税でイギーの破産危機が免れたというエピソードも

ジョン・ケイルからビル・ラズウェルまで。イギーの華麗なるコラボ遍歴

新作はホントに最終章?イギー・ポップの華麗なるコラボ遍歴にフォーカス iggypop_familytree-01-780x520

商業的な成功とはほぼ無縁ながら、先述のボウイを筆頭に様々なアーティストから愛され、世代もシーンも超えて絶大なリスペクトを受ける「人たらし」なイギー・ポップ。それは、ステージ上での破天荒な振る舞いとは裏腹に、彼がとても思慮深く、ジェントルで、頭のキレる人物だからこそだし、アルバムの方向性によってどんな音楽にも舵を切れる器用さが多くのプロデューサーを魅了してきたことは間違いない。そんなイギーのコラボ遍歴をかいつまんでご紹介していこう。

まず、ストゥージズのデビュー・アルバム『イギー・ポップ・アンド・ストゥージズ』(1969年)について触れなくてはならない。本作は当時ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退したばかりのジョン・ケイルがプロデュースしており(ピアノやパーカッションなどで演奏にも参加)、その爆発的で凶暴なガレージ・ロックによって、ヒッピー/サイケデリック・ムーヴメントの最中にあったアメリカの音楽シーンに鉄槌を喰らわせた。このアルバムに収録された“I Wanna Be Your Dog”は、現在のイギーのライブ・レパートリーにおいても重要なキラーチューンで、ニルヴァーナやソニック・ユースら多くのバンドにカヴァーされている。

The Stooges – I Wanna Be Your Dog

その後イギーはソロとなり、80年代には自分よりも若い世代のミュージシャンたちと積極的にコラボするようなる。ニューウェイヴに挑戦した『ソルジャー』(1980年)では元セックス・ピストルズのグレン・マトロック(ベース)、元XTCのバリー・アンドリューズ(キーボード)らが参加し、1982年の『ゾンビー・バードハウス』はブロンディのクリス・ステインがプロデュース。イギーからの影響を公言していた名匠ビル・ラズウェルが手がけた『インスティンクト』(1988年)では、キッスも顔負けのハード・ロック/ヘヴィ・メタルに接近してファンを驚かせた。

Ambition-Iggy Pop

↑ 『ソルジャー』収録の“Ambition”はグレン・マトロックが作詞を手がけており、自身のソロ・ライブでカヴァーも披露している

Iggy pop-Instinct-Cold Metal

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