GOLD PANDA JAPAN TOUR 2013
SPECIAL GUEST STAR SLINGER
2013.04.12(金)@代官山UNIT

★Star Slinger

【ライヴレポ】ゴールド・パンダ、スター・スリンガー来日公演レポが到着! news130604_goldenpanda_2

ファースト・アルバム『Volume 1』の日本盤リリースを控え、4月13日初めて日本の地を踏んだスター・スリンガーことダレン・ウィリアムス。インディ・ロック・バンドからヒップホップ/R&B系アーティストまで、ジャンルを横断して多くのリミックスをこなしてきた当代随一のプロデューサーの初来日だけに、会場後方までぎっしりと人で埋め尽くされている。彼の持ち味はソウル・ミュージックを中心としたサンプリング・マジックと多ジャンルを越境する折衷的なビート・センスだが、今回のライヴはそれらの魅力が最大限に発揮された多幸感溢れる1時間となった。

冒頭から、ゆったりとしたビートに乗せて女性ソウル・シンガーのヴォーカル・サンプリングがアップリフティングに響き渡り、一足先に夏の訪れを感じるような立ち上がり。その後も膨大なサンプリング・ヴォーカルが入れ替わり立ち代わりフロアを彩り、それに合わせてビートも硬質なヒップホップから流麗なハウスまで多彩な変化を見せていく。セットが終盤に差し掛かると、折衷主義を信条とする彼の本領がさらに発揮され、多幸感に満ちたヴォーカル&ピアノのループで魅せるハウス風のビートから一転して、騒々しくトライバルなM.I.A.の〈Bucky Done Gun〉をプレイ。驚きの選曲に会場からは大きな歓声が飛んでいた。ラストには、昨年大ブレイクを果たしたラッパー、ケンドリック・ラマーによる〈Bitch, Don’t Kill My Vibe〉のリミックス・ヴァージョンも披露され、彼の初来日ライヴは大団円を迎えた。

スター・スリンガーはこれまで、過去の音源をサンプリングによって現代に蘇らせ、数々のリミックス仕事によって世界各地のシーンやジャンルを繋いできた。ポップ・ミュージックの膨大に広がる歴史とネットワークを縦横無尽に行き来し、その全てを愛する生粋のポップ・ラヴァー。それが一ジャンルに属すことのなく活動を続ける、彼の本当の姿なのだろう。ポップ・ミュージックの多様性を凝縮するように、1時間の間で次々と表情を変えていくライヴからは、そんな彼の本質が垣間見えたように思う。

★GOLD PANDA

【ライヴレポ】ゴールド・パンダ、スター・スリンガー来日公演レポが到着! news130604_goldenpanda_1

日本でライヴを披露するのは約1年4か月振りとなるゴールド・パンダ。過去に日本に住んでいた事もある大の親日家でこれまでにも何度も日本で公演を行っているため、すでに日本にもファンが多いアーティストだが、今回のライヴはセカンド・アルバム『Half Of Where You Live』のリリースを6月に控えたライヴだけあってこれまで以上に高い注目が集まっていた。

ユーフォリックに自らのセットを終えたスター・スリンガーからバトンを受け取った彼のライヴは、打って変わって抑えたビートと最小限の上音のシーケンスだけで構築された静謐な立ち上がり。ベッドルーム・ミュージック的とも言えるパーソナルな質感の音作りを基調とする彼らしいスタートで、祝祭的なムードに包まれたスター・スリンガーのライヴとの対比も相まって、一気に会場がゴールド・パンダ色に染まっていく。ラップトップをメインで使用していた以前とは異なり、サンプラーやドラム・マシーンを主に使用したパフォーマンスへと変えた事で、音の躍動感が段違いに向上。以前はステージでどこか手持ち無沙汰な表情を見せる瞬間もあったが、今回のライヴではフロアの反応を見ながら機器を叩いて音を変化させていく姿が印象的だった。音のレイヤーを過度に重ねることなく、ビートと上音の細やかな変化によってフロアを静かに揺らしていくスタイルながら、ファースト・アルバム『Lucky Shiner』収録曲のフレーズが飛び出すと観客から大きな歓声の上がる瞬間も多数。セット後半からは次第に音がドリーミーに変化し、ダンスを意識して再構築されたビートと相まって徐々にオーディエンスの熱量も高まっていく。そして、彼の代表曲の1つである〈You〉のヴォーカル・ループが響き渡った瞬間、会場はこの日一番のピークを迎えた。ラストを飾ったのは、デビュー曲〈Quitter’s Raga〉。同曲のプレイ中もずっと鳴り止まなかった観客からの歓声は、彼がここ日本でいかに愛されているかを改めて思い知らせてくれた。

ゴールド・パンダは、以前からダンス・カルチャーと自分とは距離があると言い、今でもライヴをする事には慣れていないと話していた。しかし、この日見た彼のライヴ・パフォーマンスからは、世界各地をツアーしてきた事によるパフォーマンスの洗練と、セカンド・アルバムを完成させ、自身がさらに成長・進化を遂げているという自信が伝わってきた。

text by 青山晃大
photo by Teppei