今夏は選挙に揺れる日本だが、Mon The Biff党員の筆者としては「今年のフジロックではビッフィ・クライロ、ビッフィ・クライロをどうぞよろしくお願いします!」と声を大にして言いたい。Mon The Biffとは熱心なビッフィ・ファンの間で使われる合言葉で、ファンがバンドを煽る際に叫んでいたり、自作グッズにこの文字を入れて身につけていたりする。彼らの<フジロック>初出演となった2014年、ホワイト・ステージ、観た人からは「想像以上にカッコよかった!」という声が相次いだ。が、やはり欧州圏での人気・知名度と比べれば日本が少々出遅れていることは否めない。というわけで本稿では、今年こそ彼らの日本におけるブレイクスルー・ポイントになってほしいと願っている筆者が、彼らの魅力を暑苦しくプレゼン。数々の海外フェスでヘッドライナーを飾る実力派バンドである彼らについて、ぜひ苗場への出発前に予習して、その素晴らしいライブを120%堪能してほしい。

ビッフィ・クライロ(Biffy Clyro)の結成は1995年、スコットランドのキルマーノックにて。ヴォーカル&ギターのサイモン・ニール、ベースのジェイムス・ジョンストン、ドラムのベン・ジョンストンの3人で、ジェイムスとベンは双子。メンバーはこの時から変わっていない。ほどなくグラスゴーに拠点を移してインディーズで活動していたが、スコットランドで2000年に開催された音楽フェス、<Tイン・ザ・パーク>の未契約アーティスト・ステージに出演したことで〈ベガーズ・バンケット〉との契約を獲得。翌年ファースト・アルバム『ブラックンド・スカイ』をリリースした。ニルヴァーナやパール・ジャムといった90年代のオルタナティヴ・ロックに影響を受けつつもポストロックやマスロックも取り入れたサウンドは、2作目『ザ・ヴァーティゴ・オブ・ブリス』ではさらにエクスペリメンタル色を強め、技巧性の高いパフォーマンスで次第にファンを獲得していく。この時期の彼らの音楽性をわかりやすく表現しているシングルといえば3作目『インフィニティ・ランド』収録の、現在でもライブで演奏されることが多い“グリッター・アンド・トラウマ”だろう。

Biffy Clyro – Glitter & Trauma (Official Music Video)

バンドがUKでのブレイクを迎えたのは2007年にリリースした4作目『パズル』にて。この時期、バンドは精力的にフェスに出演するとともに、ミューズやリンキン・パークといったビッグ・ネームの大規模公演で前座を経験しファンベースを拡大。バンド自身「テクニカルな部分をひけらかすのに飽きも感じてきて、もっとオーディエンスとコネクトする曲を書きたいと思うようになった。」と語っている通り、変拍子などの複雑な構成を控えめにして大衆性を獲得したサウンドは幅広いリスナーに受け入れられ、全英チャート2位という好成績を収めた。翌2008年には初来日も実現し、夏には<サマーソニック>出演のため2度目の来日を果たしている。

波に乗ったバンドはその勢いのまま、わずか2年のインターバルで5作目『オンリー・レヴォリューションズ』をリリース。UKチャートの初登場は8位ながら、ロング・ヒットの末に最高位3位まで上昇した。ビッフィ入門者に最新作以外のアルバムから一枚薦めるならまず本作だ。“ザ・キャプテン”、“バブルズ”、“マウンテンズ”といった現在でもライブのハイライトとなる名曲が目白押しで、収録曲12曲中のうち6曲がシングル化されている。リリース翌年には単独公演と<サマーソニック>のために再び来日した。NMEやQマガジンといったメディアの音楽賞でベスト・ライブ・バンド賞を次々と獲得し、バンド史上最大規模(フェスを除く)となったウェンブリー・アリーナ公演も実現。その模様は『レヴォリューションズ / ライヴ・アット・ウェンブリー』としてCD/DVDでリリースされている。こうしてUKにて押しも押されもせぬ人気バンドとなった彼らはこの頃からフェスでトリ周辺が定位置となり、2011年の<ソニスフィア・フェスティバル>ではスリップノットと並びヘッドライナーを、2012年の<ダウンロード・フェスティバル>ではヘッドライナーのメタリカの前というスロットを堂々と務め上げた。2014年と今年は<レディング&リーズ・フェスティバル>のトリに抜擢されている。

Biffy Clyro – Mountains (Official Music Video)

次ページ:粒ぞろいの楽曲がずらりと並ぶ最新作『エリプシス』について