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スマホで仮想ライブ体験!amazarashi最新作レビュー

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「見えないけれどたしかにそこにいる」——メールインタビュー以外、一切、メディア露出がないままアルバムをチャート上位に送り込み、既に渋谷公会堂クラスのホールを毎回完売しているamazarashi。本人の正体不明なミステリアスさを凌駕する、その音楽性と世界観の強度が成せる技と言っていいだろう。

姿が見えないまま毎回ライブは完売、SIXなど異業種クリエーターのコラボも続々

昨年のアルバム『夕日信仰ヒガシズム』に伴う全国ツアーはファイナルで追加公演である東京・渋谷公会堂を含む7公演を盛況の内に終了。また、今年3月には台湾で開催された<T-Fest 2015 明日音楽祭>に出演し、初の海外公演も経験。また、2月リリースの1stシングル『季節は次々死んでいく』は前年からOAされていたアニメ『東京喰種トーキョーグール√A』のエンディングテーマにも起用され、ジャケットのアートワークは『東京喰種〜』の作者である石田スイの描き下ろし。また『ジョジョの奇妙な冒険25周年』や、Googleの謎解きパズル『Google Puzzle』などを手がけるクリエーター集団SIXの本山敬一が、“穴を掘っている”に続き、今回のMVディレクションを担当。独特なamazarashiの歌詞を表現するために生の牛肉がレーザーカッターによって切り取られる斬新な手法を用いたことも記憶に新しい。いかにamazarashiが同時代の異業種クリエーターから注目されているのか? もはや自明だろう。

amazarashi -“穴を掘っている”(“Digging Holes”)

メジャーデビュー1st EPに収録された “無題”が新たな息吹を吹きこまれて再生

本人が見えない状態ながら、ファンを着実に拡大してきたamazarashiの新作『千分の一夜物語 スターライト』は初のアンプラグド・アルバムだ。発端は昨年9月9日に一夜限りで開催されたライブ。バンドの中心人物である秋田ひろむが書き下ろした5章に渡る小説の朗読と、バンド編成にストリングスを入れたプレミアムな内容は、その後、あまりの反響により大阪と東京でアンコール公演が行われたほどだった。

そして肝心のアルバムの内容だが、小説『スターライト』の内容に沿ったライブと同様の曲順で、曲目は12曲に絞られている。1曲目の“光、再考”からバイオリンの単音やストリングスの合奏が生々しい緊張感を増幅し、エレクトリック編成とは違う緊迫感を聴き手の心の内に醸成する。他にもインディーズ時代の名曲“ムカデ”や“つじつま合わせに生まれた僕等”が新たな息吹を吹きこまれて再生され、ベーシックがほぼ一発録りという臨場感も相まり物語の渦中で身動きができないほどだ。

そして特筆すべきは、初期の作品 “無題”の収録だ。ある種の生きづらさを抱え、あらゆる嘘と真実を暴き出し、それでも”生”のベクトルへ自らを向かわせる壮絶な作品が多い秋田の作風の中では、聴感や選ばれた言葉は比較的柔らかい。自分が描きたい絵を描き続け、認められ、季節とともに忘却され、それでも最後に掴む思いが《信じてた事 正しかった》というリフレインとともに昇華されていく。描かれた物語は生易しくはないけれど、共感度の高い名曲としてこのアレンジが世に出ていく予感も大いにある。もちろん、小説の到達点である“スターライト”がラストに配され、輝度を上げて解き放たれるような展開もライブ、そしてこのアルバム同様ハイライトになっている。

amazarashi -“無題”

個々の存在だった曲を束ねた小説『スターライト』終章が加筆されて同梱

石角友香

ライター

大阪府出身。関西版ぴあ編集部で音楽コーナーを担当したのち独立。関西発信の今や幻(?)の音楽/カルチャー誌「MaMAマガジン」編集長を経験。現在は東京在住。音楽ポータルを中心に主に日本のバンド/アーティストのインタビュー、ライブレポート、特集記事の編集・ライティングを行う。音楽以外にも著名人の仕事上の失敗談や仕事観を探る週刊企画の編集や、企業誌なども担当。また、「FUJIROCK EXPRESS」の速報レポートや会場レポートを届けるチームに’13年から参加。10数年 観客として参加していたFUJIROCKを違う角度で体験中。

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