作品としてはどうだろうか。一言で表すならば、やはり『あんたへ』はamazarashiのアルバム史上、言語表現の振り幅が最も広いアルバムだ。まず驚いたのはM-4”冷凍睡眠”。怒涛の言葉数を畳み掛ける長篇ポエトリーリーディングに仕上がっており、文庫本と親和性が高いという意味で特筆すべき楽曲である。表題曲M-2“あんたへ” は、苦悩しながらも必死に生きている誰かに向けた応援歌。M-3”匿名希望”では、秋田ひろむ自身の今を歌っている。amazarashi流ラブソングと捉えられるM-5”ドブネズミ”は、センチメンタルな響きのキーボードが印象的。昨年11月にリリースされたライブDVD『0.7』に弾き語りで収録されていたM-6”終わりで始まり”はバンドアレンジが施され、「これがスタートラインだよ」という詩が一つの区切りを感じさせる。

【レビュー】文庫本をフォーマットにしたamazarashiのニューアルバム『あんたへ』。秋田ひろむにとって、変わるものと変わらないものとは? news131022_amazarashi

Qeticでは今年のamazarashiの活動を追ってきたが、改めて振り返ってみると、外向きの性質のものが多かったように感じる。ライブはステージの前にスクリーンを貼り、タイポグラフィや映像を多用する演出を継続しているものの、今年は<RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013>への出演、初回生産盤のDVDに収録されているLIQUIDROOMにて行われたTK from 凛として時雨とのツーマン・ライブ、秋田ひろむとしては中島美嘉へ楽曲提供を行なった。さらに『あんたへ』の通常盤アートワークが、秋田ひろむのポートレートをモチーフにしたコラージュになっていることからも、これまである種の匿名性を貫いてきたアーティスト像とそのマインドに、変化が訪れていることに気付く。

CD版あとがきの最後に、秋田は「僕が僕に宛てた手紙であるのは以前と変わらない」と述べている。「こうして人生の道すがらたまたま出会ったのだから、少しでも耳を傾けてもらえたなら幸いだ」と続けているように、amazarashi、秋田としての表現のスタンスは変わらないが、『あんたへ』はこれまで以上にリスナーが作品に入り込むための余白が用意されている。その意味において、『あんたへ』はamazarashi史上におけるターニングポイントとなることを予感させる作品だ。今こそ、amazarashiと向き合ってほしい。

text by Shota Kato(CONTRAST)

Event Information

amazarashi LIVE TOUR 2014「あんたへ」
2014.01.11(土)@東京・Zepp Tokyo
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代別)
問:ホットスタッフ・プロモーション(03-5720-9999)

2014.01.18(土)@愛知・名古屋ダイアモンドホール
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代別)
問:サンデーフォークプロモーション(052-320-9100)

2014.01.19(日)@福岡・福岡イムズホール
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代無)
問:キョードー西日本(092-714-0159)

2014.01.25(土)@大阪・Zepp Namba
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代別)

2014.02.08(土)@北海道・札幌PENNY LANE24
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代別)
問:ウエス(011-614-9999)

一般発売:2013年11月30日(土)スタート

追加公演
2014.02.01(土)@東京・Zepp Divercity Tokyo
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(共にドリンク代別)
OFFICIAL HP先行予約:2013年12月1日(日)~12月15日(日)イープラスにて
チケット一般発売日:2014年1月11日(土)
ホットスタッフ・プロモーション(03-5720-9999)

Release Information

2013.11.20 on sale!
Artist:amazarashi
Title:あんたへ(初回生産限定盤:CD+DVD+文庫本ブックレット)
SMAR
AICL2603
¥2,100(tax incl.)