「エレクトロニカ」 —このジャンルは近代的な電子音楽を意味するものとして定義され、クラブ・ミュージックに一端をなすが、必ずしも踊ることを目的とはせずにエレクトロニック・リスニング・ミュージック、ブレインダンシング、IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)などとも呼称されるジャンル。

主にヨーロッパで90年代後半から生まれ、ドイツのレーベル〈Mille Plateaux(ミル・プラトゥー)〉が『Clicks & Cuts』と題したコンピ・シリーズでこのエレクトロニカを集中的に取り上げ、またイギリスでは名門〈Warp〉が「アーティフィシャル・インテリジェンス」(通称、AI)と言われるEPシリーズにより実験的なエレクトロニカを多数リリース、この時期からシーンとして大いに盛り上がりました。そしてエレクトロニカが、よりオーバーグラウンド化した要因は、やはりレディオヘッドのトム・ヨークが『Kid A』制作にあたりオウテカの『コンフィールド』などのエレクトロニカに多大な影響を受けたと発言したことでしょうか・・。

そんな「エレクトロニカ」。英米日だけではなく世界に浸食していることは皆さんご存知? ここではそんな各国のエレクトロニカ事情の一部をご紹介したいと思います〜!

【アジア】ヨーロッパからの影響をアジア的に解釈

flica(フリカ)ー マレーシア

マレーシア・クアラルンプール在住のEuseng Setoによるソロ・プロジェクト、flica(フリカ)。 マレーシアの良質レーベル〈mu-nest〉からリリースされたデビューアルバム『windvane and window』が大きな評価を得て、この度新作『nocturnal』もリリース(日本でも〈schole〉がライセンス盤をリリース)、ピアノ中心に構成され、緻密に組み立てられたビートとリズムはメロディに溶け込むように静かに鳴り響く良質な美メロ・エレクトロニカ。

VARO(ヴァロ)ー 台湾

台湾を代表するポストロック・バンド ” Tin Pan Alley ” の女性ギタリスト Wan Tingを中心に2004年に結成され、ユニット名のVAROとは彼女が尊敬するスペインのシュルレアリスム女流画家”レメディオス・ヴァロ”から取られたそうです。エレクトロニカというよりはレイヴィーなテクノな感じですが、どこかローファイで女性的な感じがかっこいいです。

【ロシア/東欧】寒そうな地域なのにどこか温かくドリーミー

Nikakoi(ニカコイ)ー グルジア

グルジアの音楽家で映像作家、ニカ・マカイゼによるエレクトニカ名義でロシア語で「名無し」(Nobody)を意味するNikakoi(ニカコイ)。エイフェックス・ツインのような不可解なリズム・ビートに、どこか怪しげな美しいメロディーの乗った緩急のあるエレクトニカ。日本にも何度か来日経験もあるので知っている人も多いのでは?

MODUL(モジュール)ーロシア

ロシアの3人組のエレクトロニカ・トリオ。活動歴も長くコンスタントにリリースするだけあり、シンセのメロディーやベース音など重厚な感じもあるドリーミーでアンビエントなエレクトロニカ。メロディーの要所にロシア感が漂います〜。

【アフリカ】さすがは人類発の地! 謎多き肉体派!

SHANGAAN ELECTRO (シャンガーン・エレクトロ)

これはアーティスト名ではなく、とあるコンピ盤のタイトルから派生したジャンル。日本でも2011年あたりから”辺境系”電子音好きに話題となりましたね。乱打されるマリンバの音とチープなキーボードの電子音が絡み合い、民族色あったり無機的だったりのソロやコーラスの歌声と一緒に、やたらとぶっ早い打ち込みのリズムに乗って疾走、一体どうやって生まれた音楽なのだろうか?

【南米】ラテン色濃い、伝統・ミーツ・電子音!

Cumbia Electrónica(クンビア・エレクトロニカ)

これまたアーティスト名じゃなくてジャンルの呼称です。クンビアというコロンビアの伝統音楽で、かのザ・クラッシュのジョー・ストラマーが愛したことでロック・ファンやケルト・ミュージック好きにはご存知な人も多いので? そんなクンビアと電子音が邂逅した音楽を「クンビア・エレクトロニカ」とか「デジタル・クンビア」と言います。

ヨーロッパの影響を受けつつも各国の要素が垣間見えるのが素晴らしいエレクトロニカの世界。一部コレ、エレクトロニカ? という解釈すら興味深いです!

(text by Qetic・ダブルビー)

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