Zak Waters(ザック・ウォータース)といえば、Madeon(マデオン)を一躍ポップアイコンにまで押し上げたビッグアンセム“The City”のヴォーカルを務めたことがキャッチコピーになっているが、もはやそれも早晩必要なくなるだろう。なぜなら、EDMの文脈で紹介されることの多かったデビュー・アルバム『リップ・サーヴィス』から2年、ザックはより自分の内面を反映させた極上のR&Bアルバム『ジー・ファンク・エラ』を私たちに届けてくれたのだから。エッジーな感性を躊躇なく取り入れて何度目かの全盛期を迎えているアメリカのメジャーシーンにおいて、彼もまた、裏方から表舞台へと駆け上がった1人だが、今作で早くも自分のポジションを明確にしてみせた。

新作に収録された楽曲の多くがセルフ・プロデュースだという事実からも、彼の「ザック・ウォータースのサウンドを確立するんだ」という意気込みが伝わってくる。コアにあるのはオールドのファンクとR&B。そこにLAのオールライトな空気がブレンドされ、万人受けを超えた“億人受け”間違いなしのアルバムに仕上がっている。大人の色気を滲ませる“All We Get”のような新境地もある。これはどこからどう聴いても楽しい。

今回は『ジー・ファンク・エラ』について、本人にメールインタビューを行った。その回答を読んでいるだけで、彼の乾いた笑い声が聞こえてくるような気がする。これは、本人も相当満足しているに違いない。

Interview:Zak Waters

極上のR&B!ザック・ウォータース新作インタビュー interview150907_zakwaters_1

――2013年にリリースされたデビュー作『リップ・サーヴィス』のサウンドには迷いがなく、すでにあなたがやりたい音楽の形が完成しているように感じたのですが、リリースした後のまわりの反応はどうでしたか?

日本では『リップ・サーヴィス』がザック・ウォータースとして初めてのリリースだったこともあって、アルバムを聴いてくれた日本の皆からの反応は特に印象的だった。あの時のことは今でも鮮明に覚えているよ! <サマーソニック>で演奏した時に、これ以上ないっていうくらいの笑顔で踊るファンを見て、改めて音楽の素晴らしさを実感したし、「自分は音楽が好きなんだ」っていう初心を思い出させてくれたね。しかも、ライブでは合唱まで起こったんだよ!

――新作『ジー・ファンク・エラ』は前作以上にソウルフルですよね。自身のルーツ(幼少期に聞いていたというマイケル・ジャクソンや、<サマーソニック>のステージでカバーを披露してくれたアース・ウィンド・アンド・ファイアー)に立ち返った印象を受けました。アルバムデビューしてから2年の間にご自身のなかで何かサウンドに対する意識の変化はありましたか?

『リップ・サーヴィス』は、ジャラッド・Kとのコラボレーションがメインだったから、『ジー・ファンク・エラ』では音楽的にもよりパーソナルな部分にフォーカスしたいと思っていたんだ。“Sleeping In My T-Shirt”のMVでは1968年のビュイック・レサブレっていう最高にイカしたクラシックカーを使ったんだけど、それは僕がかつてザップ・アンド・ロジャーを流しながらLAの道を走っていた時のフィーリングを再現しようと思ったんだ。他にも、小さい頃から聴いていた2パック、ドクター・ドレ、DJ・クイックのようなサウンド、つまり自分が生まれ育ったLAからの影響をうまく取り入れたかった。でも、今回はザック・ウォータースズのキャラクターをすべて表現するために、あまりプロデューサーに頼らず制作したことは大きな変化かもしれないね。この音楽を聴いてLAのサンシャイン、ヤシの木、それから……渋滞(笑)を体感してくれたら嬉しいよ!

――“YOUFUCKINGLOVEME”、“Gotta Move Around”を筆頭に、今作の楽曲はどれもオーソドックスなポップソングとして機能しています。EDMマナーに引っ張られすぎず、オールドの良質なR&Bとの理想的な融合を果たしていると思うのですが、トレンディになり過ぎるのを避ける意図はありましたか?

ファーストと比べると、確かに少し大人っぽい印象を与えるかもしれない。それはシンプルに今の気分なんだ。トレンドのEDMではなく、僕のルーツにあるR&Bにフォーカスする狙いはあったけれど、かといってあまりそれに縛られず、様々なスタイルやジャンルの要素を自分なりに解釈してミックスすることができたし、アルバムを制作している期間は常に充実していたよ!

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