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ユース・ラグーン2年ぶりの新アルバム『サベイジ・ヒルス・ボールルーム』。今回そんな最新アルバム発売を記念して、インタビューを行った。

ユース・ラグーンは、2011年にデビューしたアメリカ北西部アイダホ州出身のミュージシャンだ。彼の実験的で柔らかいオリジナルサウンドと、「自分とは何か」を問いながら紡ぎだす詩(うた)は、お互いに拮抗しながら、彼ならではの音楽を作り出している。前2作『ザ・イヤー・オブ・ハイバーネーション』『ワンダラス・バグハウス』がどちらも音楽メディアPitchforkで「ベスト・ニュー・ミュージック」に選ばれたことは、驚くに値しない。

一方、ユース・ラグーン2年ぶりの新アルバム『サベイジ・ヒルス・ボールルーム』は様相を呈する。メロディーがより鮮やかで誰もが親しみやすい構成になっているからだ。初めて彼の音楽に触れる人にとっては、好感を持って迎えられるだろう。前作のリスナーなら、嬉しい驚きに違いない。「サウンドやメロディー、全てにおいて前作を踏襲しながら新しいものにチャレンジしている。ユース・ラグーンはドリームポップから目を覚まそうとしているのか」と。すでに公表された“Highway Patrol Stun Gun”の親しみやすいメロディ、ノイズ、美しい声の融合は顕著なもので、後半の“Kerry”、“Again”、 “Free me”と続く曲は何度も聞き入ってしまう。

特徴として、本作では盛んに「リアリティ」への移行が行われている。これまでは一貫して「死」への不安があった。「その日はあなたが死ぬ日でもある」と歌われた“17”、「決して死ぬことはない」と何度も静かに発せられた“Dropla”。これらの正直な言葉を幻想的なサウンドに乗せることで、現実からの「エスケープ」を図った。しかし、セカンドアルバム『ワンダラス・バグハウス』のツアー中に友人が亡くなり、「死」が現実のものとなったことは大きな転換点となっただろう。

本作でユース・ラグーンはまた一歩、自身の音楽スタイルを創り出した。1つの大きな節目を乗り越えた彼を賞賛したい。そして、これからも続く彼の「音楽的な挑戦」を迎え入れたい。今回最新アルバム発売を記念して、インタビューを行った。

Interview:Youth Lagoon

——ちょうどヨーロッパツアーが始まるところですね。今の気持ちは?

やっとショーで演奏する準備ができたなって感じてる。自分自身のための時間が少し必要だったから、そう感じるまでには少し時間がかかったんだ。準備のためにしっかり時間をかけるのは、良いことだけでなく、必要不可欠なことだった。僕がアルバムをレコーディングする時は、他の物事から距離を置いて、自分が何を探し求めているのか具体的にするために、多くの時間が必要なんだ。そういったプロセスは、レコーディングの時とショーの時では、違っている。ショーには、はっきりとした意図や目標が必要で、それがなければやる意味がない。そしてそれを見つけ出すのは、純粋に心理的なプロセスなんだ。ツアーに関して僕が好きな部分は、そこで何が起きるか決して分からないこと。ある夜はひどいライブをして、誰かが僕を殴ろうとしてくるかもしれない(これは実際に起きたことでもある)し、僕のバックパックが盗まれるかもしれない。またある夜は、ツアーバンが故障するかもしれないけれど、次の夜は僕の人生で最高の夜になるかもしれない。そういうところがすごく好きなんだ。ツアー中に同じような日が2度あることは、ごく稀だよ。

——最新アルバム『サベイジ・ヒルス・ボールルーム』のコンセプトについて教えて下さい。

アルバムは、異なった部分から成り立っていて、1つの統一されたコンセプトはないよ。僕にとってアルバム制作のプロセスは、目的を達成するために、衝動的に行動することと辛抱強くいることのちょうど良いバランスを取ることなんだ。でも、アルバム全体に滲み出ているひとつの概念は、「人間は皆欠陥を抱えながらも、完璧に振る舞おうとすること」だよ。

音楽を求め続ける。ユース・ラグーン新作インタビュー

『サベイジ・ヒルス・ボールルーム』ジャケット

——新しいアルバムを聴いてすぐに、どのメロディーも様々な楽器の混じり合った親しみのあるものになっていて、前2作と比較して、よりクリアでポジティブなサウンドになっていると感じました。どのようにして、新しいサウンドに変化を遂げたのしょう? また、自分自身にどのような挑戦を与えましたか?

物事を解釈しやすい形にして引き渡すようなことは好きじゃないんだ。アルバムに入っている曲は、それぞれ異なった視点から見ることができるし、他の人たちがどんな風に解釈するかに興味がある。受け取り方っていうのは、明らかに僕がコントロールできることじゃないから。この考え方に到達するまでには長い時間がかかったよ。どんなアートであっても価値あるものにする一つの要素は、一人ひとりにとってユニークなものであること。つまり、一人ひとりが、違ったレンズを通して物事を見ているんだ。僕自身は(このアルバムの)どの要素も親しみやすいとは考えていないけど、それも僕のコントロールできることではない。時には僕自身、自分の決断がどうしてそうなったのか分からないこともある。曲を完成させて、翌日それを聴き直してみると全く不思議なものに思えていたり。それは誰もが、全く同じ視点や心境を持つことは2度ないからだよ。僕は、とにかく歌い始めて何が出てくるのか、そういった潜在的な姿から歌詞にアプローチすることが好きなんだ。時にはまったくめちゃくちゃなもので、そこから何も汲み取れなかったりする。またある時には、めちゃくちゃなものから何か意味のあるものが形作れたりもする。

——『サベイジ・ヒルズ・ボールルーム』というタイトルを選んだ理由を教えて下さい。

何かエレガントさを感じさせながらも、不穏で不気味な響きのあるタイトルにしたかった。いつも情景を想像しながら考えるんだけど、このときはディストピア(反ユートピア)的な世界の中にある、派手な金色のボールルームをイメージした。全てがクソみたいな見た目の町で、それだけが唯一残された美しい場所みたいな感じで。そして、そのイメージに何か名前を付けなきゃならなかったんだ。

——プロデューサーの アリ・チャント(Ali Chant)とのレコーディングは刺激的だったと思います。彼との関係はどのようなものでしたか?

アリ・チャントのレコーディングスタジオ“Toybox”について調べた後、オンライン上で連絡を取ったんだ。スタジオは驚くほど素晴らしくて、数日に渡ってレコードを聴きまくった。全ての曲にユニークな曲調があるのは、彼のエンジニアリング・スタイルの成果。実際に会いに行く数ヶ月前は、ウェブカムを通して、デモテープを送ったり一緒に会話をしていたんだ。そして、彼こそ今回のアルバムでコラボレーションするのに最適な人物だと確信したよ。僕らはこれらの曲がどのようなサウンドになるか、似たようなビジョンを共有していたから。

——セカンド・アルバム『ワンダラス・バグハウス』リリース後の2年間は何をしていましたか? ワールドツアー等に出掛けていたのでしょうか?

あのアルバムと共に、1年以上かけて世界中を回ったよ。でも、その間に沢山の個人的な問題があったんだ。僕がツアーで海外にいる間に、親友が地元の川で溺れて亡くなってしまったんだ。僕は、全ての予定をキャンセルして、友人や家族と一緒の時間を過ごした。葬儀の後にツアー活動に出掛けたけど、一旦その活動は終わりにしようと決めた。そして1年間地元で、作曲に専念することに決めたんだ。その他にも、今はあまり話したくない色々なことが起きたよ。難しい数年間だったけど、人間として成長させてもくれた。自分がどういう人間で、音楽を通して何を成し遂げようとしているのか、より健全に把握できるようになったよ。僕の音楽においての目標は、いつも変化し続けて、エキサイティングでいられること。僕には、すでに次の音楽に向けての構想があって、それを形にしていくことが待ちきれない。何であれ、僕はいつも自分の限界に挑戦し続ける。他の人たちがそれに続けば素晴らしいし、もしそうならなくても、自分ためにそれをやらないといけないんだ!

Youth Lagoon – “The Knower”(Official Audio)

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Yoshito Seino

クリエイティブライター/ローカライゼーション・スペシャリスト

1985年生まれ。幼少期から映画を見始め、これまでロンドン、カンヌ、香港、東京国際映画祭等で取材。​​​言葉を通じて、映画の良さを伝えることに関心あり​。​最近はもっと違った自分を発見したいと思い、写真を撮られたり(モデル!?)してます​。​

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