めちゃくちゃ面白いだけの映画

–––楽しみにしています。『TOKYO TRIBE』の1つの要であるラッパーは土着感、すなわち地元を大切にする特性がありますよね。お2人は地元に対して、どんな想いをお持ちですか? 園監督も清野さんと同じく愛知県ご出身ですが。

 愛憎。愛と憎しみ、両方ありますね。若い時は散々な目に合っているから、良い思い出が1つもない町なんで。でも、今は地方の方が可能性持っていると思います。色んな意味で。今、名古屋は日本で一番金を持っている市なんで。みんな東京の金持ちは引っ越そうと思っている。

清野 へぇ。私は単純に地元が大好きですね。東京の家よりも実家に帰ったときの方が、いっきに疲れが抜けるし……あと、人が少ないから、すごく落ち着きますね(笑)。

【インタビュー】園子温 × 清野菜名、“TOKYO”という街への不安と期待 film140827_tokyotribe_6
–––監督にお聞きしたいのですが、前作『地獄でなぜ悪い』に続き、『TOKYO TRIBE』『新宿スワン(監督のみ)』『ラブ&ピース』とそれまでの作風とは違った作品を立て続けに打ち出していますよね。そういったモードになったきっかけは何だったのでしょうか?

 震災後の『ヒミズ』『希望の国』とシリアスな映画が続いたリバウンドですね。あと“映画の楽しさ”の原点に戻って作りたいって揺さぶりをかけられた感じかなぁ。僕は、その時の心境の変化が映画に反映されるんで。映画は「何か問題抱えてなきゃいけない」とか「テーマを持ってなきゃいけない」って考え方自体に問題を感じているんですよ。“めちゃくちゃ面白いだけの映画”なんてアメリカにはいっぱいあるからね。日本はその“めちゃくちゃ面白いだけの映画”をちゃんと作っている気がしない。コーラとポップコーンだけで楽しめる映画。賞を取ったり、年末に何かのベストテンに入りたいとか関係ない、ある意味野心のない映画ね。ただ単純に面白くて、娯楽を提供する映画を目指していたから『TOKYO TRIBE』が出来たんだよね。今年の秋に撮る映画はまた別の次元になっています。

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