——それと琴の弾き方が特徴的ですよね。従来のように座らずにスタンディングで演奏していて。

ジェシカ マイクを使って歌うから、座りながらはできないんですよ。体勢の問題です(笑)。

——(笑)演奏で使っている琴はご自身のものですか?

ジェシカ 実は今回の来日のタイミングで、やっと自分の琴を買うことができたんです。それまで使っていた琴は母のものだったんですね。私は5年前にヴィクトリアからトロントに引っ越したのですが、それは音楽家として生きていくための引っ越しだったんですね。そのときに琴を買おうとインターネットで探しても、カナダにはトロントの一軒だけのお店にしかなくて、そこに琴を買いに行ったんです。でも、母に「どれがいいのか教えて」と聞いたら、「私の琴をあげるから買わないで」と言ってくれて、結局は買わなかったんです。それで爪などのパーツを買って、本格的に琴を取り入れることになりました。

——日本で手に入れた念願の琴はいかがですか?

ジェシカ 今回買えた琴はものすごくいいもので、レンタルに出されていたものをリーズナブルな価格で手に入れることができました。比較的に新しくて、琴は古いものがいいというわけではなく、ベースやコントラバス、バイオリンとは逆なんです。母からもらった琴はピックアップで音を拾っていたから、ある意味、琴本来の音ではなかったので、ライブでも誤摩化しが利いていたのかもしれませんね(笑)。

【インタビュー】琴を操るSSW・ジェシカ・スチュアート × Creators’ Lounge主宰者・加藤豊紀から見る日本とカナダの文化交流とは? interview131010_jessica-stuart_0196

加藤 今回、ジェシカが琴を探し出せたのは稀なことみたいですね。私がアテンドして問い合わせをしたんですが、プロフェッショナルなものは相当の値段がすると聞いていましたし、当日に楽器店に行ったら奇跡的に見つかったということで。日加文化交流イベントでライブをやる蓮-REN-というグループの、25弦の琴を弾く衣袋さんが紹介してくださった五味楽器店で購入したんですよ。

——琴以外にも、日本の伝統的な楽器や文化から影響を受けることはありますか?

ジェシカ 楽器を演奏する上でのスキルは伝統的なものからの影響はあると思います。でも、私が曲を書いているときはそんなことはまったくなくて。そういう意味では、それほど影響はないと思いますね。

——では、トロントという街から受ける影響はどうでしょうか。トロントには世界中から色んな人たちが集まる街という印象があるのですが。

ジェシカ 私は小さいアイデアから広げていくという作曲の方法をとっていて、寝る前に突然音楽が浮かぶことが多いのですが、それがどこから湧いてくるのかはまったく分からないんです。最新作の歌詞に関しては、相反する価値観をテーマに書いています。自然と街との生活、ひとりの人を思う一方で他の人を想ってみる。なので、ある意味、それが環境から来ているのであれば「Yes」ですし、そうでなければ「No」ですね。

——その点について、加藤さんはどうですか。

加藤 トロント自体は大好きな街ですね。移民国家なので、誰でもチャレンジできるという環境が出来上がっていると思います。ある意味、みんなが外国人というか。私はまだまだ英語を話せないのですが、必死に伝えようとすれば理解しようとしてくれます。トロントは受け皿が広いので、チャレンジのし甲斐がありますね。周りの日本人もアグレッシブに活動しているアーティストが多いですし、かなり刺激を受けています。

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