2011年1月の下北沢SHELTER公演を以て、惜しくも活動休止したエモーショナルロックバンドSTARBOARD。そのフロントマンである今村寛之がヴォーカル&ギターとしてThe Flosristという新バンドを結成した。メンバーは、元TRIBAL CHAIRの須長英幸(ベース)、元P2H(PICK 2 HAND)、School Food Punishmentなどのサポートで知られる椎名洋輔(ギター)、NATURE LIVINGの渋谷徹(ドラム)。4人は長きにわたってインディーシーンで活躍してきた実力者たちだ。

そんなタレントたちが一同に介したThe Floristでは、シューゲイザーという新たな武器を軸に、壮大なスケールのサウンドを表現している。しかしシューゲイザーといっても、あくまでもバンドにとっては一つの要素にすぎない。エモ、ニューウェイブ、ポストパンクなどから受けてきた影響が土台に敷かれ、それらを踏まえた上で、シューゲイザーという新たなエッセンスがサウンドの中心に置かれている。

実際に、2014年4月23日(水)にリリースされた1stフルアルバム『Dark Entries』では、美しいメロディーと轟音をバランスよく織り交ぜたシューゲイザーのマナーを踏襲しながらも、彼らが得意とするエモ―ショナルな楽曲はもちろんのこと、ストリングスを主旋律としたドラマティックな曲にチャレンジ。そのサウンドは、もはやシューゲイザーという枠を大きく飛び越えたもので、独特の浮遊感を帯びた今村のヴォーカルを含め、インタビュー中に出てくるマイ・ブラッディ・バレンタイン、スロウダイブ、ライドらには無い、彼らだからこそ打ち出せる独自の世界観だ。きっとシューゲイザーに限らず、多くの音楽ファンから好評を得ることだろう。

The Florist – “Sun Kills Moon”

今回は『Dark Entries』のリリースを記念し、The Floristへのインタビューをお届けする。The Floristのウェブ媒体によるインタビュー、しかもメンバー全員参加はこれが初めて。結成当時のエピソードから振り返り、それぞれのシューゲイザー観を語ってもらったメンバーインタビューをじっくりと読んでいただきたい。

Interview:The Florist

【インタビュー】エモからシューゲイザーへ。STARBOARD今村寛之によるロックバンドThe Florist、待望の1stアルバムをリリース! interview140425_the-florist_5016-1

今村寛之(Vo.&G)、須長英幸(B)、椎名洋輔(G)、渋谷徹(D)

––––まずは皆さん4人の関係性から紐解いていきたいんですが、4人が集まった背景を聞かせてもらえますか。

今村寛之(以下、今村) 僕がやっていたSTARBOARDが2011年に活動休止をした時に、これからも音楽は続けていこうと思ったんです。でも、今度は生活があった上で音楽をやっていくというスタンスで、ソロ活動をしようかなと思っていたんですよ。その頃に会った人たちから「今、何やっているの?」と聞かれる中で、最初に須長くんに会ったんです。彼もTRIBAL CHAIRが終わりそうな雰囲気を出していて(笑)。須長くんは僕とバンドをやりたいと言ってくれて、(渋谷)徹くんにも以前に「今村くんが歌うなら俺もやりますからデモを下さい」と言われたことがあったんです。

渋谷徹(以下、渋谷) すごく狙っていましたからね(笑)。

今村 それで、まずは3人でスタジオ入ってみたら、「やっぱりバンドって楽しいな」と実感できて、また楽しい時間が過ごせるなと思えたんです。そのときに僕だけがギターを弾くという構想はなくて、自分がいいなと思うギタリストは誰かなと考えたときに、椎名くんはSTARBOARDのときにPICK2HANDとBRIT BANQUETでも対バンをやっていて、ギタリストとして彼が浮かんだんですね。当時の椎名くんはschool food punishmentのサポートメンバーをやっていて、それが終わったと聞いたので、すぐに「一回スタジオに入らない?」ってメールしました(笑)。それが初めてこの4人でスタジオに入った瞬間でしたね。

椎名洋輔(以下、椎名) 俺は徹くんと須長さんとは初対面でした。

須長英幸(以下、須長) 俺は徹くんのバンドのNATURE LIVINGとは何度か対バンしていたんですけど、それは俺が入る前のTRIBAL CHAIRだったんですよ。だから、俺以外のメンバーとは仲がよかったというか。

今村 結成でいうと、2012年春ぐらいだよね。多分、椎名くんが入る前も1、2回しかスタジオに入ってなかったと思う。

––––生活があった上での音楽とありましたけど、それは無理なく活動していきたいっていう言い換えだと思うんです。

今村 そうですね。みんな、いろいろな経験をしてきたと思うので、いい経験の裏側には何かを犠牲にもしてきたと思うんです。今は何かを犠牲にしなくてもいいっていうスタンスでやれたらなと思っていて。

––––解散を経験してきた今村さん、須長さん、椎名さんがいる一方で、渋谷さんにはNATURE LIVINGがありますよね。今は活動が止まっている状態ですけど、ご自身としては、ドラマーとしてやりたい場所を見つけていたんですか。

渋谷 僕は単純にライブがしたかったんです。それで、NATURE LIVINGのライブがほとんど無くなってきた中で、「ライブしたいな、今村くん呼んでくれないかなー」と思っていたんです(笑)。アコースティックでの今村くんのライブを観たんですけど、「それならバンドでやろうよ」って言ったんですね。

今村 あったね。

渋谷 今村くんにはバンドをやって欲しいなと思っていたので、会う度にそうやって声をかけて。

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