黒王マイケル・ジラ率いるオルタナ界の帝王スワンズ。この期におよび絶頂期を迎えた彼ら(不動のメンバーはジラだけだが)は82年ノーウェーブ期のNYに現れ、90年代USオルタナ期まで活動。一貫した“地下音楽精神”で、ソニック・ユースと並ぶ2大巨頭とまで称された地下音楽を好むものにとっては、まさに帝王そのものだ。

デビュー当時、賛否両論にハッキリ分かれたという衝撃のデビュー作『Filth』ではノイズ、ポストパンク、フリージャズ、ドローンに“得体のしれない何か”を加えた重くて、遅くて、恐ろしいグルーヴを持つジャンクロックを開拓した。その特異な音と呪縛的グルーヴが、その後のオルタナ、ドローン等に生んだ影響たるや計り知れないだろう。後期は歌を重視した美しいアートロック~フリーフォークにも転じ、長年に渡り帝王の座に君臨していたが、96年ジラのソロ活動を重視するためバンドを解散。

しかし2010年14年の沈黙を破り突如復活。復活作となった『My Father Will Guide Me up a Rope to the Sky』は「久々にやってみました。」的お決まりのガッカリ感など一切なく、それどころか、あの暗黒サウンドは年を重ねたジラの異様なまでの貫禄と共に、全ての終りを告げられたような恐怖心と不安すら持ち合わせていた。しかし、スワンズにとってこれは第二期絶頂期の始まりだった。その2年後早くも完成した復活後2作目『The Seer』は驚愕のCD2枚組全9曲2時間超の大作。凶暴性と美しさを兼ね備えたキャリアを総括した作品に、バンド史上最高傑作と世界中で賞賛を浴びた。ここにきてその伝説的キャリア、充実の復活作、そして真骨頂とも呼べる規格外のライブ・パフォーマンスが話題を呼び、“今”再び絶頂期を迎えているのだ。

Swans – The Seer || live @ Best kept Secret Festival || 22-06-2013

そして完成したのが、前作から2年、復活後わずか4年で3作目となる『To Be Kind』。前作に続き本作もCD2枚組2時間越えの超大作。更に、80年代から続く名門レーベル〈MUTE〉と契約してのリリースとあり、リリース前からこれほどの注目を集めたのはスワンズ史上ないだろう。

ライブ活動の中でのジャムセッション的感覚で生まれた曲を煮詰めて再考された楽曲が中心となる本作。(実際に収録曲のうち3曲は2012年の来日公演の際に既に披露されていた)凶暴性、特異な反復的で重いグルーヴにはさらに磨きがかかり、ライブ同様の異様な緊張感と臨場感が本作のには存在している。ジラの歌声とその風格に次元の違いすら感じるほどだ。客演に迎えたセイント・ヴィンセントのどこか謎めいたコーラスも素晴らしい。キャリアを総括した前作の続編でありながら、絶頂期を迎えたバンドの勢いそのものを加味し、間違いなく最高傑作を更新しただろう。

そして今回、再び恐るべき超大作を完成させたマイケル・ジラに話を伺った。

(text by Takeda)

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