「サッカー界で神といえるプレーヤーは?」とたずねられると、恐らくほとんどの人が「ペレ!」と答えるのではないでしょうか? 国際オリンピック委員会から“20世紀最高のアスリート”と評され、引退から40年を経過した今なお、その輝かしい記録の数々は色褪せず、伝説としてその座に君臨し続ける、逆にそれは、今なお彼に並ぶものがいないということを示しています。そんな彼の、伝説を作り上げるまでの軌跡を描いた映画『ペレ 伝説の誕生』が、日本公開されました。この作品は、スラム育ちの少年だった彼がFIFAワールドカップのブラジル代表に選ばれ、奇跡的な活躍を繰り広げるまでの道のりを描いたストーリー。

スタッフ陣としては監督、脚本を『ファヴェーラの丘』などのジェフ・ジンバリストと、兄弟のマイケル・ジンバリストが担当、ペレ自身が製作を務め、キャスト陣には『ジュラシック・ワールド』などのヴィンセント・ドノフリオ、『チリ33人 希望の軌跡』などのロドリゴ・サントロらが演じており、ペレ自身の波乱万丈な人生の1ページと、迫力のゲームシーンには、映画として引き込まれるだけでなく、サッカーという競技や人とのつながりというものなど、様々な感動を与えてくれることでしょう。

また、音楽『スラムドッグ$ミリオネア』で<ゴールデングローブ賞作曲賞>、<第81回アカデミー賞>で作曲賞、歌曲賞を受けたA.R.ラフマーンが担当しており、映画の臨場感をさらにかき立てる役割を果たしております。

今回はこの映画の製作を担当、また作品自体のモデルでもあるペレ自身に、作品に込めた思いや、皆さんへのメッセージなどをうかがいました。

Interview:ペレ

【インタビュー】A.R.ラフマーンも参加!サッカー界の神、ペレが自身のレジェンドを描いたストーリーを語る film160726_pele_2

ーー本当に素敵な映画作品ですね。ペレさんにとってきっと誇りに思えるような作品かと思います。ペレさん自身にとって、これはどのような作品だと思われますか?

ありがとう。あなたのいうとおりで、映画で描かれる歴史やその時々の感情が的確に描かれていることに驚いたよ。過去にもたくさん映画作品を作ってきたけど、今作は僕の人生の始まりとルーツ、キャリア、そして家族を描いている。これまで作ってきた作品とは全く違う映画だよ。

ーー御自身が特に重要と思われているポイントなどはありますか?

僕にとってこの映画の最も重要な点は、新しい世代に何かを与えることができる映画だということだ。この映画は、僕がどうやってここまでたどり着いたかを描いている。若い世代に、僕のルーツを知ってもらうことは大事なことだと思っている。

ーーサッカーというスポーツで、世界的に輝かしい実績を残しているペレさんという存在は、それだけでも大きな影響力を持たれているようにも思いますが……。

僕は小さい頃にサッカーを始めて、学校にも行き、ゆくゆくは世界を旅するまでに至った。世界中の人々がペレのことを知ってくれた。だけど、僕のルーツや家族について知っている人はとても少なかった。この映画の重要性はそこにあると思う。若い世代に、僕がキャリアをスタートさせた若い頃を見せることが重要だと思った。

【インタビュー】A.R.ラフマーンも参加!サッカー界の神、ペレが自身のレジェンドを描いたストーリーを語る film160726_pele_5

ーー映画では、ペレさんのお父様も描かれていますが、お父様とサッカーの思い出なども覚えておられるでしょうか?

もちろん覚えているよ、忘れるわけがないね。父もブラジルのトップサッカー選手だった。サンパウロの名門チームでプレイしていたんだけど、たくさんのゴールを決めていたよ。僕達子供にもサッカーを熱心に指導してくれた。さっき果物という話が出たけど、オレンジをボールに見立てて練習していたものだった。ボールコントロールを養うためにオレンジを使っていた。当時、僕達の家族は貧しかったので、革製のボールを買うお金がなかったんだよ。

ーー劇中でもお父様と一緒に、果物を使ってサッカーの練習をするシーンがありましたね? お父様と一緒に行った練習で覚えていることはありますか?

そうだな……父からキックの仕方、ボールの置き方、ボールのコントロールの仕方などを学んだね。その後、よく父に僕のボールさばきを見せては、僕はこれだけサッカーができるようになったんだ、と見てもらった。それに対して父は「上手なのは分かったけど、左足でボールをキックすることを学ばないといけない。左足でプレイできる人は少ないからね」と教えてもらっていた。僕のスタイルは、そうやって全て父に指導してもらった結果なんだ。

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