が溢れ、選択肢が無限に増え、なかなか好きなものや目標が見つけられないこんな世の中だからこそ、学生時代の“青春”は誰にとってもかけがえのないものだ。例え、それが“学校のマドンナとの恋”だろうと“好きなこに声すらかけられなかった後悔”であろうとだ。「青春とは?」と聞かれた時に語弊を恐れずに言うのならば、それは「知らないことの幸せ」だと思う。「無知の知」なんてどこかの偉い哲学者の言葉があるけど、「知らないこと」が幸せな時だってある。少ない知識や経験の中で得体の知れないものに向かって、喜んだり、感動したり、刺激を受けたり、悶々としたり、ときに傷ついたり、痛々しい思いをすることが青春を成立させ、後々必ずそれぞれの財産になるのだ。

そんな青春の輝かしい部分やモヤモヤした部分を包括した映画『大人ドロップ』が4月4日(金)より全国公開される。原作は作家、樋口直哉が描いた青春小説『大人ドロップ』(2007年/小学館文庫刊)。監督は映画監督以外にも脚本家・演出家・小説家と幅広いマルチな才能を発揮する飯塚健監督だ。周囲が成長していっていることに焦りを隠せない主人公、浅井由を演じるのは、今年『愛の渦』(三浦大輔監督/3月公開)、『大人ドロップ』で主演を務め、『ぼくたちの家族』(石井裕也監督/5月公開)、『春を背負って』(木村大作監督/6月公開)、『わたしのハワイの歩きかた』(前田弘二監督/6月公開)など出演作が目白押しの池松壮亮。浅井にとって大人の象徴といえる幼馴染みのクラスメート、入江杏役に、2012年の『桐島、部活やめるってよ』で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』での好演も記憶に新しい橋本愛。本能のままに行動する同級生・ハルを、『ZOO カザリとヨーコ』の小林涼子。浅井の親友ハジメ役を、橋本とは『桐島、部活やめるってよ』で競演している前野朋哉が演じる。

今回Qeticでは、映画の公開に際し主演を務めた池松壮亮、ヒロインを演じた橋本愛の2人にインタビューを行うことが出来た。ストーリーや撮影中のエピソードはもちろん、等身大の役柄を演じた2人がいち若者として感じることや思うこと、1つ1つの質問に対して真摯に答えてくれた。

Story

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること film140328_otonadrop_01-1

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること film140328_otonadrop_02-1

(C)2014 樋口直哉・小学館/「大人ドロップ」製作委員会

主人公・浅井由(池松壮亮)は高校3年の夏休み直前に、親友のハジメ(前野朋哉)に頼まれ、彼が想いを寄せるクラスメート入江杏(橋本愛)とのデートをセッティングする。しかし、そのことが原因で彼女を怒らせてしまう。仲直りできないまま夏休みに突入してしまい、さらに彼女は学校を辞め、急遽遠くへ引っ越してしまうという。浅井の心のモヤモヤはより一層ますばかりだが、その気持ちが恋なのか、親友への対抗意識なのか、ハッキリとは分からない。

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること film140328_otonadrop_03-1

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること film140328_otonadrop_04-1

(C)2014 樋口直哉・小学館/「大人ドロップ」製作委員会

一方、大人になるために何かと経験を急ぐ女友達のハル(小林涼子)から、年上の彼氏との恋愛相談をされる。「大事なものを失っても経験しなければいけないことがある」とハルの言葉やハジメの言動の変化に、自分以外のまわりの人間が少しずつ大人の階段をのぼり始めていると感じ、焦り始める。「大人になるって、何?」——浅井はその答えを求めるかのように思い切って入江杏へ手紙を出した。数日後、彼女から返事が届き、学校を辞めた本当の理由を知ることになる。どうしようもない衝動に動かされ、浅井はハジメと共に片道200キロの旅に出るのだった・・・

Interview:池松壮亮/橋本愛

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること interview140327_otonadrop_main1-1

——まずは、この映画『大人ドロップ』への出演の決め手となった理由をお聞かせ下さい。

橋本愛(以下:橋本) 私は久しぶりに映画のお話を頂いたのでとても嬉しかったのと伊豆のロケと聞いて「外の空気吸いたいなぁ」って思いました。久しぶりに前野(朋哉)さんにお会いできるのも楽しみにしていました(『桐島、部活やめるってよ』で共演以来)。

池松壮亮(以下:池松) 僕の場合は、信頼を置いているプロデューサーからの話だったのできっかけはシンプルなんですけど、何があろうとやろうと思っていました。

——お互いの第一印象はいかがでしたか?

池松 思っていたよりと言ってはなんですが、良い子だなと思いました(笑)。

——どんな風に思われていたのですか(笑)?

池松 もっと寡黙な感じというかあまり心を開いてくれないんじゃないかと思っていたので。いや、全部“良い意味で”です(笑)。

橋本 第一印象ですか……あまり覚えていないんですよね(笑)。でも素敵な方だなとは思いました。

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること interview140327_otonadrop_1258-1

【インタビュー】橋本愛、池松壮亮。混沌としたこの世の中でいま思うこと、感じること interview140327_otonadrop_1237-1

次ページ:普通の青春映画なら見せなくていい部分をちゃんと描こうとしていたので。それに対してはすごく共感できました。(池松壮亮)