北欧らしいノスタルジックなサウンドと、イマジネーションを刺激する寓話的な詞世界、そして手拍子や「ヘイ!」の掛け声でシンガロングを巻き起こす楽しいライヴ・パフォーマンスが話題を呼び、ここ日本でも一躍人気バンドとなったアイスランド出身の5人組、オブ・モンスターズ・アンド・メン。世界中で大ヒットを記録した前作『マイ・ヘッド・イズ・アン・アニマル』(11年)から約4年、遂に2ndアルバム『ビニース・ザ・スキン』が届けられた。

彼らのブレイクの要因としては、マムフォード・アンド・サンズやザ・ルミニアーズ以降の「フォーク・ロック」の潮流と見事にフィットしたことがそのひとつに挙げられる。しかし、マムフォードが新作『ワイルダー・マインド』(15年)でエレキ・ギターやシンセを大胆に導入したアメリカン・ロックに接近、同じくUK出身のノア・アンド・ザ・ホエールが解散を表明するなど、フォーク・ロックが死語となりつつある2015年。オブメンはどうやって次の一手を打つのだろうか……? と心配もしたが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。

今作『ビニース・ザ・スキン』では、共同プロデューサーとして新たにリッチ・コスティ(ミューズ、デス・キャブ・フォー・キューティー、フォスター・ザ・ピープル他)を起用し、地元アイスランドとロサンゼルスの2都市でレコーディングを敢行。多幸感あふれる楽団的要素は影を薄めたものの、グッとスケール感と躍動感を増したサウンドに、世の中の光と影を的確に捉えたソングライティング、さらにメンバー全員が一丸となって声を張り上げる壮大なヴォーカル……と、音の節々から彼らの自信のほどが窺える力作となっている。リッチはシガー・ロスの過去作でミキサーを務めた経験もある人物だが、9曲目“Thousand Eyes”の後半で押し寄せるストリングス混じりの轟音は、もはやゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー。彼の参加が、バンド・サウンドをより強靭に進化/変化させたことは間違いないだろう。

7月には2年ぶりに<フジロック・フェスティバル>出演のためカムバックするオブメン。なんと、今回は最終日レッドマーキーのトリという大役だ。初登場がホワイトステージ、次がレッドマーキーの大トリ……という流れはまるで、彼らも敬愛するブロークン・ソーシャル・シーンをなぞっているかのようだが、この夏も超満員のオーディエンスを再び熱狂の渦に叩き込んでくれるはずだ。ではさっそく、紅一点でビョーク似のナンナ・ブリンディース・ヒルマルスドッティル(ヴォーカル&ギター)と、ラグナル“ラッギ”ソウルハッキソン(ヴォーカル&ギター)、バンドのメイン・ソングライター2人によるオフィシャル・インタビューをご覧いただきたい。

Of Monsters and Men – Crystals (Official Video)

text by Kohei UENO

Official Interview:Of Monsters and Men

[Nanna Bryndís Hilmarsdóttir(Vo&Gt)Ragnar “Raggi” Þórhallsson(Vo&Gt)

ーーまず、この場所について教えて下さい。

ラグナル“ラッギ”ソウルハッキソン(以下、ラグナル) 僕達は、ここアイスランドのスタジオにいるんだ。ここでアルバムの大半をレコーディングしたんだよ。

ナンナ・ブリンディース・ヒルマルスドッティル(以下、ナンナ) 美しい場所で、素敵な窓があって、外のバルコニーに出ると、その前に小さな池があるの。森も見えるのよ。

ラグナル すごくクリエイティヴな場所だよ。

ナンナ ええ。素晴らしい場所よ。

ラグナル レイキャビクのダウンタウンから15分しか離れていないんだ。

ナンナ そう。

ラグナル そこで僕達はショウをやったりするから。君の家からは、ちょっと離れているよね。

ナンナ ええ。でも、それほどでもないわ。他と比べたら、ここはどこも近いと思うわ。

ーーアイスランドの音楽シーンはどんな感じなんですか?

ナンナ アイスランドの音楽シーンでは、誰もが顔見知りなの。以前一緒にショウをやったことがある人達だったりしてね。だから、ネットワークがあるの。3つのバンドをかけもちする人もいたりして、バンド間のつながりが沢山あるのよ。

ラグナル 僕達のトランペット奏者は、アイスランドで色々なバンドと一緒にやってて、21公演もこなしたことがあるんだよ。21のバンドじゃなくて、いくつかのバンドと数公演ずつやってね。

ナンナ ええ、それってすごく良くあることよね。

ラグナル それがここのミュージック・シーンだと思う。

ナンナ そうやって、皆がお互いに助け合ってるの。

ーーバンド結成の経緯は? ナンナはもともとソロだったんですよね?

ナンナ ええ、昔、ちょっとソロで活動していたわ。でもそれが大きくなって、女性だけの小さなグループのメンバーとして、アイスランドでツアーをしていたの。そのあと、私がグループに男性を入れたくて、友人のブリニヤル、今の私達のギタリストと一緒にプレイするようになったの。そのあと、2009年だったかしら。

ラグナル そうだよ。

ナンナ あなたが入って。

ラグナル 僕が入った。

ナンナ 私達と一緒にプレイしたのよね。

ラグナル うん、バックグラウンドでね。すごくシャイで、テーブルの後ろにいたんだ。人前で歌ったのは、それが初めてだった。あまり声が出てなかったんじゃないかな。そのあと、彼女が僕を解放したんだ。どうしてそうなったんだっけ? ゆっくりとそうなったよね。

ナンナ 私達は一緒に作曲を始めたから、自然にそうなったのよね。私達はいつも、時間の経過と共に大きくなっているの。その後、アイスランドのムジクテラナ(Músíktilraunir)っていう音楽コンペティションに出場したの。若いバンドが観客の前で演奏できる舞台なの。私達は、アルナルと話をして。

ラグナル うん、僕達のドラマーとね。彼はドラマーとして始めたんじゃなくて、僕と同じようにバックボーカルと、可愛らしい小さな楽器を担当してた。

ナンナ ええ。そのコンペティションの後、初めてオブ・モンスターズ・アンド・メンとしてのショウをやったの。そのあとで、キット(クリスチャン)が入って。

ラグナル 僕達の元ピアノ奏者のアルニが入ったんだ。まだフルバンドに成長する途中だった。それで2010年には、アルナルがドラムになってて、ブリニヤルはエレクトリック・ギターを前よりラウドに弾くようになって、キットがベーシストになって、僕達はヴォーカルの義務を分担するようになった。

ナンナ そう。

ラグナル 義務だって。大層な言葉だよね。

ナンナ ええ、任務ね。

ラグナル ヴォーカルの任務(笑)。

ナンナ ヴォーカルの任務(笑)。

ラグナル 僕は、歌うことを義務づけられていたんです。

ーーその後、どうやってデビューまで辿り着いたんですか?

ラグナル 僕達がマネージャーに会った時、ことが起こり始めたんだ。彼女は僕達の音楽を世の中に出すためのコネクションを沢山持ってた。そこでアメリカからKEXPっていうラジオ局がやって来て、僕達の曲を録音して、アメリカのラジオでかけ始めたんだよ。それから僕達のレイキャビク郊外でのショウを見てくれたある男性が、別のラジオ局、フィラデルフィアの104.5の番組ディレクターと知り合いで、その局が僕達の曲をプレイしてくれたんだ。それから、アメリカのラジオやYouTubeで発展していって、そこから始まったんだよ。

ナンナ その頃、私達はプレイできるところなら、どこででもプレイしていたわ。それで今話したように、私達のショウをチェックしにきてくれた男性がいたりして、そういうちょっとした幸運が重なったの。

ラグナル うん。

ナンナ そうやって実現したの。

ラグナル 2010年のことだったと思う。

ナンナ ええ、2010年よ。

ラグナル そうだね。それから、レコード会社から連絡がくるようになって、僕達はいくつかミーティングに行って、〈ユニバーサル・リパブリック〉っていう良い家を見つけたんだ。そこからは急上昇して、制しきれないぐらい凄いことになって。

ーーその後、あなたたちの人生はどんな風に変わりましたか?

ナンナ 私達がバンドを始めてから変わったことは、沢山あるわ。アイスランドで音楽をやって生きていくって、ありふれたことじゃないの。だから私達は、それぞれに進んでいる道があって、音楽もやっていたけれど、なんていうか。

ラグナル これが仕事になるっていうのは後になってから思えたことだった。

ナンナ そう、音楽は好きだから夕方以降やるっていう感じだったの。

ラグナル だから、私達はそれぞれの道を歩んでいたの。学校に行ったり、仕事をしていたりね。それで、全員が何をやりたいかを探っていたの。

ナンナ そうしたら、デビューの機会が訪れたんだ。それからは、他のことをやらずにバンド活動をして、4、5年になるよ。僕がその前にやっていたこととは、全然違うよ。

Of Monsters And Men – Little Talks(Official Video)

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