2月に3枚目のジャズ・アルバム『Collective Scribble』を発表した大江千里がニューヨークの演奏仲間と結成した新ユニット“NYトリオ”を率いて4月25日(土)の神奈川・横浜モーション・ブルー・ヨコハマを皮切りに、ライヴ・ツアーを開催する。

3歳からクラシック・ピアノを習い、小学生でポップスに開眼。1983年にシンガー・ソングライターとしてデビューし、“十人十色”、“格好悪い振られ方”など数々のヒットを放つ一方で、松田聖子、渡辺美里らに楽曲を提供した大江。2008年に国内での活動を一旦停止し、ジャズ・ピアニストを目指して単身渡米、2012年リリースのアルバム『Boys Mature Slow』はジャズ誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、高い評価を得ている。最新作について、「一枚を通して一編の“ポエム”を読んでいるようなアルバム」と語る彼の、その世界がライヴでどのように展開されるのか必聴必見だ。

そして今回はモーション・ブルー・ヨコハマ、コットンクラブでの公演も控えている大江千里さんにインタビューを敢行。聞き手に音楽ジャーナリスト小川隆夫さんを迎え、新作について、そしてライブに対する思いを聞いた。

Interview:大江千里(聞き手:小川隆夫)

★ニューヨークの生活から生まれた曲を携えての来日公演

 
——大江千里さんは2月に3枚目の新作『Collective Scribble』を発表しました。前作の『Spooky Hotel』は小編成のオーケストラでしたが、今回は編成をガラリと変えています。
 
今回はサックスを入れたトリオになりました。『スプーキー・ホテル』は少し大きな編成でしたが、そのときの日本ツアーでバンドを縮小してやったことがあって、そのメンバーにヤシーン・ボラレスとベースのジム・ロバートソンがいたんです。ニューヨークではジムとデュオでずっとやってきて、そこにヤシンが加わったら、それまで以上に手ごたえを感じました。それでニューヨークに戻り、毎月このトリオのために 曲を書いてはライヴをやってを繰り返して、レコーディングしたんです。
 
——前作の発表から1年半くらいインターヴァルがあります。いつもなら1年ほどでアルバムが出ますが、今回はそれだけ準備に時間がかかったということでしょうか?
 
書く曲も少しずつ変わってくるので、それを1年ぐらい続けて「もう作るぞ」って決めてからも「いや待てよ、まだ早い」と。1枚目、2枚目がわりとテンポよく来てた分、自分の中でやり残していたものがあるというか、追いついてないなという感覚もあって、もう少し自分と対話をする時間が必要だったり探ったりで、今回はレコーディングまでにいつもより時間をかけました。

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——その「大江千里NYトリオ」が「ブルーノート東京」や「名古屋ブルーノート」、それから大阪と北海道のステージに登場します。
 
ぼくはけっこうあがり症なんです。やっぱり「ブルーノート東京」、それからもちろんほかのステージも特別な場所です。ですから、敢えて意気込まずに平常心で挑もうと思っています。いつもと同じ時間を過ごしながらステージに上る。それが自分には一番いいですから。
 
——ステージでは新作からの曲が中心になりますか?
 
そのつもりです。ただし「ブルーノート東京」初日(5月5日)のファースト・ショウは「jazz for children」と題したスペシャル・ライヴが予定されているんで、メンバーにもこの日のことを説明して、日本のひとなら子供でも知っている曲をいくつか用意しようと思っています。日本の童謡とかをヤシーンやジムに聴かせたら、「これ、ジャジーだね」なんていってましたから、こちらも面 白いことになりそうです。
 
——「コットン・クラブ」と「モーション・ブルー・ヨコハマ」では<大江千里ミーツ八神純子~未来の僕たちのために~>と題されたライヴが開催されました。
 
八神さんとは何度かジョイントして、やるたびに新しい発見があって、ぼく自身とても楽しみにしています。最初はハワイのチャリティ・ショウでご一緒したんです。そのあと、彼女がニューヨークに来たときは、ぼくが出ているジャズ・クラブにも来てくれて、一緒に楽しみました。2015年5月にはホノルルで第二弾をやります!

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——大江さんが書く曲からはさまざまな情景が浮かんできます。
 
ぼくは自分が一番得意なものをやめてピアニストになったから、曲を書くときも、昔はもっとエモーショナルだったけれど、いまは理詰めで書きながらも、景色があったりメロディに詩が乗っている感覚でストーリーを増やしています。自分自身の独白というか、ブルックリンで生活している日々の小さな驚きとか当たり前のこととか、あとは生活の中にある感動とか、そういうものをスケッチみたいにして増やしていって、 それが集まっていくうちにひとつのポエムになると。ジャズっていうのはすごくポエティックなものだと思っていますから、新作もそれを集めて出来上がりました。
 
——今回の日本ツアーでは、春の日本で感じたさまざまなものが演奏に反映されるかもしれませんね。
 
はい、ぼくもそうありたいと思っています。
 
——コンサート、楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。
 
会場によっても内容が変わりますから、ぜひいらしてください。

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photo Hiroyuki Matsukage
interview & text by Takao Ogawa
 

【小川隆夫プロフィール】
音楽ジャーナリスト。NY大学大学院留学中に多くのミュージシャン・関係者の知己を得、帰国後の1983年から音楽関係の執筆やプロ デュースを開始。著者多数。トーク・イヴェント「ONGAKUゼミナール」を毎月開催中。
 

Event Information

大江千里 NYトリオ ツアー
“Collective Scribble Tour” 2015

2015.04.25(土)@モーション・ブルー・ヨコハマ
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2015.04.27(月)@サンケイホールブリーゼ
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2015.04.29(水)@PENNY LANE24
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2015.05.02(土)@名古屋ブルーノート
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2015.05.05(火)- 05.06(水)@ブルーノート東京
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