–––– 藤井さんにお聞きしますが、こういう企画いいなってことはいつも考えているんですか?

藤井 職業柄そうですね。ただ一人で考えるというより作家さんなど、色んな人と話しながらってことが多いですね。

–––– お二方のアイデア・ソースってどんなことなんですか?

シンゴ 例えば藤井さんとの共通項で言えばプロレス。そしてやっぱり音楽ですね。音楽でいうと最初にAFRAに引っかかってくれましたし。

––––知り合った頃に行われていたシンゴさんのイベント<RADIOSHOCK!!!>は、そのときって結構盛り上がってましたね。

シンゴ 恵比寿のミルク(現在は閉店)ってクラブで最高で600人くらい入ってました。AFRAの他、TUCKERやスチャダラパーが出てくれたり、DJもsk8tingさんとか。たまにライブでジャッキー&ザ・セドリックスが出てくれたり。ジャンルを超えてその時々に面白い人たちに出てもらって。もともとミルクって場所がヒップホップもロック、はたまた格闘技とかオルタネイティブなものが全部集まっていました。ちょうどスチャダラパーのような僕が好きな「文科系ヒップホップ」というものがはまって。そんな時に藤井さんも観ていただいたんですね。

–––– もっと細分化してますよね。それでいうと今、<RADIOSHOCK!!!>の様なイベントはないですけれど、最近の若い子の音楽とかって聞かれてますか?

シンゴ パソコンやネットが僕らと違って子供のころから慣れ親しんでいる若い子が、例えば音楽や映像だけじゃなくアニメも自分で編集してすぐ作ってYouTubeでアップしたり、自分周りで映像つくってくれるクルーがいたりと。カートゥーン・ネットワークの人たちもそうですけど、色んなことが一人で出来てゆく人たちが生まれてきたこの5 – 6年だったので、そういう次世代に興味がありますね。

藤井 オッド・フューチャーなんかは音だけじゃなくてアートワーク等も含めて驚きましたね。

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シンゴ あと、僕にとっては一時期日本でも運営されていたニューヨークのセレクトショップ「Turntable Lab」と、その周辺でキャリアをスタートさせたディプロたちの出現が大きかった。自分たちで音楽もビデオもジャケットも作る、いわゆる自分たちがおもしろいものと面白いものを合体させちゃえばという。ヒップホップというとアメリカ的なものだったのが、例えばスリランカ出身の=M.I.A.に歌わせて、でもビートは野太いという。そこは藤井さんも好きで、それで普通にこういうことを話しているうちにわかる人が仕事をくれるようになった。

–––– そんなお二人からみて下の世代の勢いって感じますか?

藤井 TV業界では自分より下の世代に勢いを感じることはあまりないですかね。会社としての年功序列もあるし、経験やテクニックだとか、タレントさんや事務所との関係性などにおいても若手が不利になる要素は多いので、それらを飛び越えるほどの才能となるとなかなか…。それこそ一から自分たちで作っているFla$hBackSなんかを見ると、音楽業界の方では若手に勢いを感じますよね。

シンゴ 僕と藤井さんでも一回り離れていますもんね。

藤井 でももう若くはないですよ。

–––– そういったDIYっていっても昔のDIYは音楽でいうと録音とか編集までは出来ても、映像とかはパスの時代でしたけど、今は全部ですもんね、演出まで全部やるっていう。

シンゴ だから今回も『水曜日のダウンタウン』っていうその番組のオープニングをやらせていただいたんですけど、藤井さんからのアイデアでPUNPEEくんを使いたいと。それを聞いたとき思い切ったことをやるなぁと(笑)。ダウンタウンさんでゴールデンで新しい番組ってことでPUNPEEくんのラップで。音のディレクションも藤井さんとPUNPEEくんで。

–––– 指名ですよね、PUNPEEくんがいいっていう。

藤井 そうです。

–––– でしかも『水曜日のダウンタウン』では映像もちょっとシーパンク的な要素を使っていますよね。

シンゴ テレビって規制はあると思うんですけど、フォーマットがあるものを藤井さんと一緒だと少し破れる。シーパンクをそのまま思い切りやる訳じゃなくて、要素を取ってでもTV向きにやるっていうことを話して。例えばレイザーラモンRGさんの「あるあるジャパン」も当時メジャー・レーザーとか今で言うトゥワークとか腰振る音楽とかトラップとかをRGさんでやるっていう。

藤井 レイザーラモンとメジャー・レイザーをレイザーでかけるっていうのを思いついたので(笑)。

シンゴ そういうことは藤井さんとだから出来るっていう共通項があって、それは音楽だけじゃなくて格闘技にしてもなにしてもありますけど、共通する部分があるのでアイコンタクトができるっていうのはいいですね。

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–––– 藤井さんでいうと、格闘技はずっとお好きですか?

藤井 そうですね、中学生からずっと好きですね。

–––– 中学のころこういうものが好きだったとかありますか?

藤井 割と幅広くカルチャー的なものは好きで、特に音楽。あとはやっぱりTVが好きでしたね。

–––– 音楽の話でいうとそのころってこれ良く聴いたなってものはありますか?

藤井 そうですね。Showbiz&A.G.とか……D.I.T.C.周りが好きでしたかね

–––– Showbiz&A.G.!? 同級生とかに居ましたか(笑)?

藤井 うーん、でもナズの1stとか、NYのヒップホップがカッコいい時代だったじゃないですか? 後にウエストコーストものとかレゲエもよく聴くようになるんですけど。ただ、そのころからベースはヒップホップですね。

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–––– シンゴさんはヒップホップっていう感じでもないですよね。

シンゴ 僕らの頃はとにかく洋楽に飢えてるというか。僕は46(歳)なので、まあそれこそ中学の頃はソニープラザとかタワーレコードでアメリカを感じてたっていうか。それくらいアメリカや海外カルチャーに憧れて、それで当時はベストヒットUSAとかが始まったりとか。パンクの後のニューウェーブ、そこからニューウェーブの派生でダンス・ミュージックとかヒップホップとか。マルコム・マクラーレンがバッファローギャルズをやって、それでヒップホップを知ってごった煮で好きになって。僕の好きな「ポップな要素」っていうことを未だに追っかけていて、そこの熱は一番自分の中で音楽がモチベーションになっている。あと生まれたばっかりのちょっと流行りだす手前の音楽がすごく好きで、それはお腹いっぱいになる位毎日調べてしまう。

–––– シンゴさんはホフディランの初期メンバーでしたが、その気持ちもホフディランにもあったのでしょうか?

シンゴ 元々一番好きなアーティストはディーヴォってグループで、その中のメンバーの マーク・マザーズボーっていう人が大好きなんですが、今だとウェス・アンダーソンの映画音楽をやってたり、アニメのCMの音楽をやったり。いわゆるコンセプトしての音楽をやっている。ディーヴォのときからアートワークも自分からやって、ディーヴォの可愛いという部分、ダサ可愛いダサかっこいいところがアートワークとか含めて、その世界観が僕の一番の衝撃受けました。

ホフディランもそうですけど、僕はプレイヤーとしては上手くなかったから、ホフがメジャーデビューしてからは離れているんですけど、元々のホフのコンセプトは学ランでリズムボックスを使って、スチャダラパーとかと一緒にヒップホップのイベントに出たり。でもそのほうが結果目立っちゃうみたいな。そこでヒップホップで出てもスチャダラパーには敵わないじゃないですか。だからそのギミックとして、もちろんフォークが大好きでそこの良さを持ってくるんだけど、フォークグループがいきなりクラブシーンに出てくることとかってなかったので、そこは目立っちゃうかなと思ってやってました。だからコンセプトをずーっとこうしたらっていうことですね。

–––– なるほど、それって〈ODDJOB〉のやり方でも変わってない気がします。

シンゴ ほとんど変わってないですね。

–––– シンゴさんはそういう意味ではそれを一貫しているところがあると思うんですけど。

シンゴ だからプレイヤーじゃないから、藤井さんみたいに番組一個自分で企画から編集してって訳じゃないので。

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