ギリスのカーディフで結成された男女混合バンド、ロス・キャンぺシーノス!(以下、ロスキャン)。前作『ハロー・サッドネス 〜さよなら勇気、悲しみよこんにちは』を引っさげ、代官山UNITにて行われた来日公演では過去〜現在までの曲を出し惜しみなく演奏し、彼らの未来に更なる期待を感じるライブとなりました。そして、そんな期待に答えてくれるかのように約2年振りとなる ニュー・アルバム『ノー・ブルーズ』を引っさげ、ロスキャンがカムバック!

通算5枚目となる今作は、バンドが全信頼を置くジョン・グッドマンソン(ブロンド・レッドヘッド、デス・キャブ・フォー・ キューティー他)とトム・キャンペシーノス!の共同プロデュース。“これぞ、ロスキャン!”な胸キュン・サウンドやシニカルな歌詞はそのままに、『ノー・ブルーズ(=憂鬱よ、さらば)』というタイトルからもわかるようにシリアスな描写はありつつも最後には希望を暗示させるような作品となっています。

先日、クリスマス企画としてロスキャンのフロントマンであるギャレス・キャンぺシーノス!にお気に入りのクリスマス・ソングを選曲してもらいましたが、今回は彼によるインタビューをお届け! 今作への様々な想いや制作過程から元恋人というパーソナルな話題まで、彼らの現在に迫るインタビューとなりました! ぜひご覧下さい!

Interview:Los Campesinos!(Gareth Campesinos![Vo、Key&Gl])

――まずは今作『ノー・ブルーズ』というアルバムタイトルに込められた思いをお聞かせ下さい。

タイトルを聞くだけじゃ、一発でポジティブなイメージと結び付けられちゃうかも知れないんだけど、タイトル・トラックの歌詞の一部の”There is no blues that can sound quite as heartfelt as mine”ってところから来てるんだ。だけどすごくしっくりくるんだ。なんでかって言うと、このアルバムは前作『ハロー・サッドネス』に比べると、歌詞は割と暗いところもあるんだけど、全体的に希望を持てるコンセプトなんだ。僕たちは2作目からアルバムのタイトルはスローガンのようにして楽しんできたんだけど、『ノー・ブルーズ』がその中でも一番いいスローガンなんじゃないかな。

――前作『Hello Sadness』から約2年ぶりの今作『No Blues』はバンドにとってどんな位置づけになるのかお聞かせ下さい。

難しいね。曲を書いてる時はそういったことを考えずに、ただただ思い立ったものをあるがままに出していくだけだからさ。本当にアルバムを出して、インタビューに答えていくうちに、なんでこういうアルバムにしたのか、とか質問を答えるためだけにアルバムの構成を強制的に考えさせられるようになる。その答えだって、別に正しくもなかったりするんだよね。だけど、バンドとしては、今作ができたのはとても嬉しいし、僕たちのプログレスも喜ばしいことだと思ってる。こういった作品をメランコリックな『ハロー・サッドネス』のあとに作りたかったし、僕たちのアルバムの中で一番ポップな仕上がりだね。

――今作を制作するにあたって、以前と何か変わった部分はありましたか?

初めてUKでレコーディングをしたんだ。北ウェールズに行ったんだけど、今までのレコーディングの中で一番良い環境だった。レコーディングのいいところは、同じ家でずっとレコーディングをするから、とにかくお互いと一緒に過ごす時間が長いということ。もうしばらくの間一緒に過ごしていなかったから、この時間を一緒に過ごせてすごく嬉しかったし、きっとアルバムを聞けば、僕たちの絆の強さも聞こえてくると思う。でも一番大きな違いは、レコーディング体制に入る準備が今までの中で一番整っていた、っていうところだね。だからスタジオにいる時間も楽しく過ごせたし、チューンを磨きあげるのも、アイディアを変えていける時間も沢山あったんだ。

——あなた達の歌詞には“死”を彷彿させるワードが多く出てきますが、歌詞を書いている本人としてその心境をお聞かせ下さい。

どのアルバムの歌詞も正直に、まっすぐ書いているから僕の性格を上手く反映していると思う。もちろん7年の間に僕自身も変わってきたから、リリックのフォーカスも変わってきたけど、基本的な軸は一緒なんだ。死はずっと僕の恐怖でね。死と大切な人を失くす、ということ。これは年月が経っていくにつれ、僕の周りの人も年を重ねていくにつれ、更に気がかりになってきた。よく書くもう一つのテーマと言えば愛と恋愛についてだけど、それはどの作詞者も語ることだろ?

——今作ではフットボールに関連するワードが随所に散りばめられていますね。フットボール含め、アルバムの制作過程で大きく影響を受けた音楽、映画、出来事は何ですか?

あまり他のものに影響された気はしないかな。影響されようとしないし、意識的に自分の脳内だけから物事を抽出しようとしてる。『影響』されることによって、最終的にただ真似ているだけになってしまう気がするから嫌なんだ。だけどフットボールのことがよく出てくるっていうのは本当だね。フットボールは僕が本当に熱くなれるスポーツだから、無意識に歌詞に入っていっちゃうんだろうね。

――”Let it Spill”の歌詞に「生涯孤独の自分に元カノ全員を呪う(=curse all of my exes to a life of celibacy)」とありますが、今作を元恋人達へ聞かせるとしたら、作品と共にどんなメッセージを送りますか?

僕の前の恋人はみんな素晴らしい人たちだったよ。もちろん別れてすぐは正反対のことを言っていたかもしれないけどね。ただ伝えたいことは、彼女たちが何をしていようと、どこにいようと、素敵な時間を過ごしていて欲しい、ということ。

――“Avocado,Baby”の後半の祝祭的なコーラスがあなた達の初期の曲を思い起こさせました。これはどういったアイデアから生まれたのですか?

アルバムの中で一番賑やかで、幼さが残るような曲だよね。だから初代の頃の作品を思わせたのも納得がいくよ。だけど今までとの違いを挙げると、これはわざと幼く聞こえるようにしたってところ。前に幼く聞こえたのは、そういう曲の書き方しかわからなかったから。メロディ・ラインは自分の頭の中でずっと鳴っていたんだけど、みんなが気に入るかわからなかったからとりあえず自分の中に秘めておいたんだ。でもその後チアのチームを使うアイディアをトムと僕らのプロデューサー、ジョン・グッドマンソンに話したら、二人共気に入ってくれて、「それで行こう」ってなったんだ。レコーディングの大半が終わってカーディフに戻った時に、カーディフ・クーガー・オールスターズの子たちにもヴォーカルで入ってもらったんだ。

“Avocado,Baby”

——“Avocado,Baby”のミュージック・ビデオを映画『Submarine』で知られる俳優、クレイグ・ロバーツが手掛けていますが、彼と一緒に仕事をするきっかけは何だったのでしょうか? 

クレイグは近日公開される『Benny & Jolene』という映画に出演するんだけど、その作品に僕たちが楽曲提供したんだ。彼はそれをきいて僕たちを知って、僕たちのバンドにもハマってさ。それで彼と話すようになって、このビデオのアイディアが思いついたんだよね。彼、とてもプロフェッショナルでクリエイティブで驚かされたよ。素敵なビデオになったし、レコーディングもとても楽しかった。あんなに低い予算でこれだけ素晴らしい作品を作れて、見事な出来だった。

——世界的にCDショップがなくなり、Spotify等の音楽ストリーミングが主流となっていく中で、今後アーティストとしてどうやって自分達の音楽を人々に聞かれていきたいですか? 

割とそういう意味では僕は古風で、慣習なアルバムのフォーマットが気に入っているんだ。だけど僕たちの音楽をファンに届けるっていう面では、とりあえず出来るだけ仲介者はなしでやりたい。ウェブ・ストアは自分たちで運営してるし、全てのプロダクションを自分たちが管理している。自分で出来ることを人にお金を出してやるような人にはなりたくないんだ。音楽業界ではそういった人が沢山いるけど、バンドが、本来自分たちでそういったことを、怠けずに、やっていかなくちゃならないんだ。

——最後にこれまでコンスタントに作品を出し続け、常にツアーを行っていますが、今後の予定をお聞かせ下さい。大きな休暇をとる予定はないのですか?

じゃないといいんだけどね! 曲を書くのも、ツアーをして人に喜んでもらうのも最高に楽しいからさ。それを最高の友達と一緒にできるっていうのはとても幸せなことだし、ずっと続けていきたい!

Release Information

Now on sale!
Artist:Los Campesinos!(ロス・キャンペシーノス!)
Title:No Blues (ノー・ブルーズ)
Turnstile / Hostess
HSE-30316
¥2,200(tax incl.)
※初回仕様限定盤ボーナストラック・ダウンロード、全21曲収録ライヴ・アルバム(フォーマット:mp3)、歌詞対訳、ライナーノーツ付