京都在住、京都発信でバンド活動を続けるメロディックパンクバンド、LABRETが去る6月3日にニューミニアルバム『CLAMP』をリリースした。いわゆる90年代<AIRJAM>の影響下にあったバンドたちもさまざまなジャンルに分化する中で、ファストなビートと日本人の琴線に触れるメロディをもった王道メロコアバンドとして、作品のリリースはもちろん、自身のツアーや<京都大作戦><BAYSIDE CRASH><ミリオンロックフェス>などにコンスタントに出演。バンドとしての活動を着実に前進させている。そんな彼らの前述の新作は、キッズの心を掴むエモーショナルな泣きのメロディもあれば、明るいだけだないオリジナリティを感じさせるアレンジも散見され、中には彼らとしては珍しい日本語詞やラップ的なアプローチも行った楽曲まで収録。7曲というコンパクトさながら、LABRETというバンドのユニークさがこの1枚で摑める内容に仕上がっている。

そして、メンバーのバンド以外の表現としてライブ会場でも販売を行っている「ALTAIR」というアクセサリーブランドの存在もファンならずとも気になるところ。ベース&ボーカルの10-9(トク)がステンドグラスに魅了されて作る世界に一つしかないアクセサリーの数々は、毎回、即完するほどの人気を得ている。そこで今回はバンドのバックボーンや新作についてはもちろん、音楽とは異なるアウトプットであるモノ作りを始めたきっかけなどについてもインタビュー。絵画や文筆などで才能を見せるアーティストも少なくないが、表現という部分でオリジナルな感性を持っていることは恐らくまちがいないはずだ。

LABRET『CLAMP』Trailer

Interview:LABRET

——まず、LABRETはどんな音楽の影響下で始まったのでしょうか?

10-9(トク) 僕はもともと、90年代<AIRJAM>直撃だったんで、メロコアのスタートの頃からずっと影響され続けていて。そういう要素は今でも出てるかな? と思いますね。バンドで言うとHi-StandardをはじめHUSKING BEEなど、その時に出会った音楽に影響は受けていますね。

——<AIRJAM>世代だったバンドも、その後音楽性が変わっていったりしましたが、LABRETはあまり変化していない?

10-9 最初の6年、7年ぐらいまではそういう部分にかなり寄った楽曲やスタイルだったんですが、ドラムが今のikeに変わった3年前から、ギターロックとか、メロコアと呼ばれるジャンルとは違う方向に進みだして。そこからいろいろ自分らなりに考えて、今回の作品で昔のメロディを重視した作品を作ろうかって3人で考えて。だから今回はまたそっちに寄っているかもしれないですね。

——メロディック再評価が起こったんですか?

10-9 曲作りをしていて、やっぱり今まで作ってた曲に比べたらシンプルな曲が多いんですよ。実はそっちのほうが難しいなと思いつつも、LABRET初期のメロディックが好きな人とか、メロディからだと入りやすいっていうお客さんへの広げ方をしたいな、というのは今回、狙いましたね。

——元来、得意なところを強化しようと?

10-9 僕らもギターロックやポストロックを取り入れていた時期もあるんですが、例えばポストロックを最初に取り入れた人は先駆者というか、切り開いた人になると思うんですよ。でも僕らがそれを真似て、ポストロックとかを追いかけても勝てないと思ったんですね。

——それは一番最初にきっかけになったものが強いから?

10-9 やっぱそうですね。僕の中ではそれは大きいですね。ま、メロコアっていうのがきっかけで知って、LABRETっていうのを知ってもらいたいっていうのはすごくあります。

——きっかけとしてのメロコアであると?

10-9 今の若いライブキッズと言われている人で、新しい、いい音楽を探している人はけっこう多いと思うんです。その中でメロコアってカテゴリーされているバンドを聴いていって、自分の中で「あ、このバンド好きかも」「このバンドそうでもない」っていうのを判断する入口として、ジャンルってけっこう大きいと思う。ジャンルで判断されたくないって人も多いと思うんですけど、一つの入口として考えている人もやはり多いと思うんで、判断の目安ではあると思いますね。僕の中では<AIR JAM>っていうキーワードが大きくて。フェスっていうか、カルチャーというか、それが僕が憧れている部分で<AIR JAM>は単なるイベントじゃなくて、音楽やファッションもクロスオーバーしたシーンだったじゃないですか? だから、バンドだけじゃなくてお客さんもかっこいいって感じだったんです。

——でも今回のアルバムはメロコア一辺倒じゃない選曲だし、バンドの名刺代わりになるんでは?

10-9 そうですね。今回はそんな感じはありますね。自分らの去年、一昨年まで作っていたようなちょっと雰囲気の違った曲も、メロディックな曲も両方入っていますし、面白いと思いますね。

——ラストに収録されている日本語詞の“夜は鎹”は00年代のヒップホップも思い起こさせる部分もあって。

10-9 最近、THA BLUE HERBを聴きだしたので、そこの影響はすごくあると思います。昔のアルバムから、最近出した『トータル』までひと通り聴いたんですけど、昔のほうが刺々しく刺してくるような言い回しは多かった印象でした。作品ごとにいい意味で心境がリアルに出ているって印象を受けます。アルバムで言うと、最近のも好きなんですけど、昔の深く噛み付いてくるようなスタイルを最初に聴いていたんで、その時の印象が強いですね。

LABRET -夜は鎹- 【Official Lyric Video】

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