々なジャンルとクロスオーヴァーしながら刺激的な状況を迎えている現在のジャズ・シーン。名門ブルーノートに在籍し、ジャズとR&B/ソウル/ロック/エレクトロとを融合させてきたホセ・ジェイムズも、もちろんそんな流れを推し進めてきたキー・パーソンの一人だ。彼が今回、伝説のジャズ・シンガー“レディ・デイ”ことビリー・ホリデイの生誕100周年を記念して、トリビュート・アルバム『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース』を完成させた。

この作品は、’12年のビリー・ホリデイの誕生日にベルギーで行なったトリビュート・ライヴを発端としたもの。ジェイソン・モラン、ジョン・パティトゥッチ、エリック・ハーランドといった現代ジャズのキーマンを迎えた楽曲は、ビリーの魅力に焦点を当てつつも、同時にそれを現代的な感覚で再解釈。声のループをバックに使った“奇妙な果実”を筆頭に、ジャズの伝説と今のアーティストならではの魅力とが、同時に感じられるものになっている。

ロバート・グラスパーしかり、このホセ・ジェイムズしかり、先日行われたホセの来日公演に飛び入りした黒田卓也しかり。彼らがそうしてジャズの新たな表現を模索しているのは、何よりも彼らが、ジャズの歴史を深く愛しているからこそ。今回は同時発売されたビリー・ホリデイの最新ベスト盤『ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド~ベスト・オブ・ビリー・ホリデイ』の選曲も担当したホセ・ジェイムズに、レディ・デイの魅力や『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース』について、たっぷりと語ってもらいました。

José James – “Yesterday I Had The Blues” (album trailer)

Interview:José James

――あなたはビリー・ホリデイの最新ベスト『ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド』の選曲も担当しました。まずはこの作品について、どんな基準で選曲したのかを教えてもらえますか。

この選曲に関しては、とにかく自分の好きな曲を選んでいったんだ。すべてのアーティストにはそれぞれの物語があって、キャリアの中で成功していた時期と、そうでない時期とがあるものだけど、ビリーの場合は大きく分けて初期/中期/後期の3つに分けられると思う。そして僕にとっては、中期のものがとても大切な存在なんだ。初期と後期の曲は、それぞれ理由は違うにしても、自分には聴いているだけであまりに哀しくなってしまうところがある。というのも、初期の頃はハッピーな曲を歌っていたとしても、それが痛々しく感じられるというか……曲を通して彼女が抱えていた痛みや、苦しい経験を感じてしまう。そして後期は、何と言っても彼女の声が出なくなってしまった。声が出ない中で一生懸命歌おうとしている姿には、同じシンガーとしてとても痛々しさを感じるんだ。だから僕にとっては中期の、〈ヴァーヴ〉から出ている作品がとても大切で、その作品を聴いて初めてジャズをどう歌えばいいかということを学んでいった。歌うだけじゃなくて、バンドがどういう形で演奏されれば歌えるのかということもね。ベン・ウェブスターやオスカー・ピーターソンをはじめとする素晴らしいミュージシャンが演奏した上で、彼女が歌うことの素晴らしさを知った。僕にとっては本当に、ジャズというものを教えてくれたのが、その時期のビリー・ホリデイだったんだよ。だから『ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド』では、その時期の曲を中心に選んでいったんだ。

【インタビュー】ホセ・ジェイムズが語る“ビリー・ホリデイの魅力”や“ディープさ”。 music150217_josejames_2

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