――では、ここからちょっと質問を変えさせてください。今回は英語と日本語の2ヴァージョンがあるということで、物事の二面性にフォーカスした質問を用意してきました。

ギャー!

――例えば石橋さんの楽曲の中に「ポップ」と「アヴァンギャルド」というふたつの要素、つまり二面性が存在するとしたら、そのバランスはどのように考えていますか?

あまり意識して作っていないですね。

――では石橋さんにとっての「ポップ」って?

常に進化し続けるもの。あるいはとどまらないもの。あと子供の頃に聴いていて、いまだに自分の中に残っている音楽だったり。

――歌謡曲とか?

そうですね。でも当時の歌謡曲ってシンプルに作っているようで、実はすごく複雑で厳密なんですよね。一切の妥協がないというか。その時代の良いものすべてを詰め込もうっていう気概を感じるんですよね。ある時期まではポップと実験性がいいバランスで同居していた作品がたくさんあったと思います。でもいまの時代にそういう意味でのポップなことをやろうとすると、ポップじゃなくなるような気がしていて。70年代とか、ギリギリ82年、83年くらいまでは理想的なポップ・ミュージックというのがこの国にも存在してたと思うな。

――いまの日本のポピュラーな音楽にはあまり興味ないですか?

うーん、実際にあまり聴いていないですね。

――逆に「アヴァンギャルド」っていうことは意識したりしますか?

意識して作品に入れようと思ったことはないですね。そういうのってバレるので。いろんな音楽を聴いて、それが自分の中で咀嚼されて、出てくるものしかやりたくないですね。

――石橋さん自身には二面性ってあるでしょうか?

もちろんあると思いますよ(笑)。二面性というよりも何面性かあると思う。

――例えばどういうところでしょうか?

すごい真面目なところとすごくいい加減なところがどっちもある(笑)。

――真面目なところというのは?

音楽についてわりと真剣に考えてます。普通のことかもしれないですけど。作品について妥協したくないとか。でも約束とか平気で忘れてしまったりもする(笑)。メールとか返すのも苦手だし、時間を守れなかったり。一度にいろんなことを考えられないんです。あと関わる人間が多くなってくると頭がパンクしてしまう。

――石橋さんはいろいろなアーティストのライヴやレコーディングに参加しているし、とても器用な印象がありますけれど。

全然ダメなんです。「もう死んだ人たち」のメンバーの中では私がいちばん関わっているミュージシャンの数は少ないと思いますよ。

――意外です(笑)。石橋さんはソロでの活動もあり、また(カフカ鼾に代表される)バンドのメンバーとしての側面もあります。さらにはミュージシャンとして様々なアーティストのライヴに参加しているという側面もあります。それぞれどのような違いがありますか?

基本はそんなに変わらないですね。でもそこで与えられた役割とか、関係する人たちのキャラクターや音楽性にも左右されるので、もちろんすべて一緒ではないです。でもそこで私のキャラクターが変わったりすることはないです。最近では自分よりも年下の人たちと一緒にやることが多くなってきたので、だいたいおばちゃん的なキャラクターでいることが多いですね(笑)。

――だはははは。

自分のソロの時はプレッシャーもあるし、責任を背負ってる感じはあります。責任感が強いほうなので(笑)。みんなの演奏をどうやって活かしたらいいのかとか考えますね。でもカフカ鼾とかバンドだとそういうことからは解放されるので、楽といえば楽ですね。

【インタビュー】石橋英子、初の英語詞にも挑戦した新作について、自身のニ面性について語る music140313_ishibashi-eiko_jk

――『carapace』や『I’m armed』のジャケットを手がけた写真家の澁谷征司さんとデザイナーの木村豊さんのコンビが今回もジャケットを担当されています。今回は地元の茂原で撮影を行ったんですよね。写真を見る限り、とても綺麗な場所ですね。

いやいや。綺麗に撮っていただいてますけど、ここは昔言った事のあるテーマパークの廃墟で、本来は全然綺麗な場所じゃないんですよ。今回は人間と風景が混ざらない場所がいいなと思って、ここにしたんです。で、実際に行ってみたら、廃れ具合が想像以上にすごくて(笑)。写真家の澁谷さんはそういう場所ってわざとらしくなっちゃうからなあって懸念もしていたんですけど、でも石橋さんの音楽とキャラクターだったからそうならなかった、とおっしゃってました。

――すごく素敵なジャケットになりましたよね。では今後の活動の予定についても教えてください。2月にカフカ鼾でのツアーがあり、5月にソロでのレコ発ツアーが開催されるんですよね。

はい。今回は「もう死んだ人たち」に坂口光央さんというキーボーディストが加わって6人編成でやろうと思っています。今月はそのための譜面作りを須藤さんと一緒にやっていたんです。私はこのツアーでは鍵盤を弾かないつもりで、立って歌ってフロントマンに徹しようかなと。フルートは吹くかもしれないけれど。当日はガクガク震えるんじゃないかって不安です(笑)。手持ち無沙汰になっても、楽器に逃げられないので。そういう状況を楽しめたらって思ってますけど。

――楽しみです。それでは、最後に現在の石橋さんの夢を教えてください。

ラッシュというカナダのバンドがいるんですけど、そのライヴを観てみたいですね。あともうこれは叶わない夢ですけど、ピーター・ガブリエルがいた時のジェネシスのライヴを観てみたかったなあって。

――いろいろありますね(笑)。

意外と出てきますね(笑)。あとシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)の腕にぶら下がってみたい。

――最後のシュワは本当ですか(笑)。ツアーも楽しみにしてます! 今日は本当にありがとうございました。

ありがとうございました。

(text&interview by Naohiro Kato)

Event Information

石橋英子「car and freezer」発売記念ツアー
2014.05.09(金)@三重・四日市 radi cafe apartment
2014.05.10(土)@愛知・名古屋 得三
2014.05.11(日)@京都・元・立誠小学校
2014.05.16(金)@東京・渋谷 WWW

石橋英子「car and freezer」/
前野健太「ハッピーランチ」ダブルリリースパーティー in 九州

2014.6.21(土)@熊本 NAVARO
2014.6.22(日)@福岡 the Voodoo Lounge

Release Information

2014.03.12 on sale!
Artist:石橋英子
Title:car and freezer
felicity
PECF-1090/1 felicity cap-194
¥2,730(tax incl.)