6月に新作『キャンプ・エコ』をリリースした北欧、ノルウェー出身の男女5人組バンド、ハイアズアカイト(Highasakite)

2014年には、ノルウェー版グラミー賞でポップ・グループ賞を受賞。さらに、作曲を手がけるイングリッド・ヘレネ・ホヴィックは作曲家賞も受賞した。各地のフェスにも引っ張りだこで、ボン・イヴェールのジャスティン・バーノンも絶賛。他のアーティストからも高い評価を得ている。2016年は世界最大規模のフェス<グラストンベリー>にも出演を果たし、来る12月には、過去にポール・マッカートニーなどのビックネームが出演した<ノーベル平和賞コンサート>への出演も決定している。

今回、ハイアズアカイトで作曲を手がけるイングリッド・ヘレネ・ホヴィック(Vo.)にインタビューを行った。世界で起こっている「紛争」がメインテーマの1つとなっている新作『キャンプ・エコ』の製作背景を中心に、アートワークへのこだわりや、日本からの影響や体験についてなど、幅広い話題について語ってくれた。

text by Qetic・

Interview:Ingrid Helene Håvik[Highasakite(Vo)]

——新作『キャンプ・エコ』、バンドとしての飛躍を感じさせる傑作だと思います。18ヵ月間におよぶ体験記が元になっている作品だとお聞きしましたが、モノクロであしらわれたアートワークを含め、アルバム全編に通底するコンセプトのようなものがあれば教えてください。

イングリッド・ヘレネ・ホヴィック(以下、イングリッド) このアルバムの大部分は、9.11事件や当時のブッシュ大統領によるイラクについての演説からインスピレーションを受けているの。私たちがいま生きている世界の状況について、特にそういった(イラクなどの)紛争がどう発展していったか、ということがテーマの中心になっている。それだけではなくて、他の色々なこともテーマになっているけれど。

——3作連続でモノクロのアートワークですが、モノクロにこだわり続ける理由は?

イングリッド モノクロなのは単純に趣味の問題で、ただモノクロの写真が好きだからってだけの理由。

ノーベル賞コンサートへも出演!ノルウェーの新星・ハイアズアカイト新作を語る interview160705_highasakitec_1

『キャンプ・エコ』ジャケット

——『キャンプ・エコ』というタイトルもそうですが、デビュー作『オール・ザット・フローツ・ウィル・レイン』にはイラクとアフガニスタンから帰還した兵士にインスパイアされた“Whatever That Means”という曲がありましたし、前作にも“Iran”というナンバーがありました。あなたにとって、中近東で起きている紛争や問題は無視できないということなのでしょうか?

イングリッド 確かにこれまでの2作品でもこういったテーマを扱っているし、ずっと私自身の心の中を占めている問題でそのことについて考え続けてきている。ただ前のアルバムではそれをどちらかというと人間同士の関係性やそこで生じる摩擦という視点から扱っていたのに対して、このアルバムではその同じテーマを世界の見方という側面から考えているの。だからこういったインスピレーションを中近東だけの問題としてではなく、私たちがいま生きている世界について考察する材料として見ている。中東の他にも色々な事件が起きていて、2011年7月22日にノルウェーで起きた極右主義のノルウェー人によるテロ事件も私にとってより身近な事件として大きな影響があったし、そういった幾つもの出来事が私の心を捉えていて、そういうことについて扱いたいと思った。

——“God Don t Leave Me”のようにセンチメンタルな曲もありますが、全体的には電子音がより効果的に使われていてすごくダンサブルな印象です(個人的にはRöyksoppを連想させました)。リリックはすべてあなたが手がけていますが、サウンドメイキングはメンバーそれぞれがアイディアを出しながら進めていったのでしょうか?

イングリッド 曲は私が自分で書いたあとコンピューターでLogicを使って録音するんだけど、今回はその段階でシンセサイザーをかなり使ったの。私たちのバンドにはシンセのプレイヤーが2人いるし、デモの段階でシンセを使うことで、バンドのメンバーたちにとっても私の目指しているものが伝わりやすくなったと思う。そうやってスケッチ段階の曲を持って行って、バンド全体でアレンジをしていったの。曲によって最初の段階からどんなサウンドにしたいかはっきりしていたものもあったし、逆に私ひとりの時点では自信のないものもあった。後者の場合はメンバーそれぞれが助けてくれてサウンドを作っていったの。

Highasakite – God Don’t Leave Me – Behind the Scenes

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