界最古のノイズバンドとして、2009年には結成30周年を迎え、現在もギネス記録を絶賛更新中である非常階段の最新作が到着。これまでも「スター階段」、「原爆階段」、「S.O.B階段」などの合体ユニットで壮絶な異種交配を繰り広げ、最近ではアイドルグループBisとの「Bis階段」でも度肝を抜かされたのは記憶に新しいが、今度の衝撃は初音ミクとのコラボ!その名も「初音階段」。一体彼らはどこまで行ってしまうのだろう…

その真相を探るべくJOJO広重さんに今回の「初音階段」について語り尽くして頂いたのだが、これがまた凄まじいことに。だって初音ミクとアシュ・ラ・テンペルと『怪奇大作戦』が同列で語られているんですよ。こんな人物はおそらく世界中で唯一人でしょう。

今作をイロモノだと思っている人がもしいるとしたら、それは完全に大間違い。サウンド的にもコンセプト的にも素人には決して到達することのできない音楽の極みが此処には有る。それでいて敷居は低い。この相反する離れ業を軽々とやってのける様はまさに痛快以外の何物でもない。

また、氏の持つ柔軟な姿勢と面白いことへの飽くなき探究心について、ほんの少しではあるが聞き出せたことが、個人的に今回の取材での一番の収穫だったことをここに記しておきます。

Interview:JOJO広重(非常階段)

――まずはじめに、今回の非常階段starring初音ミク『初音階段』始動の経緯をお聞かせください。

最近〈YOUTH〉さんから〈アルケミーレコード〉の過去の音源を復刻して出してるんですよね。正直こんなものも売れるんですか? というものもどんどん出してくださっていて「何でこんなことやってるんですか? 儲からないでしょう?」とお話していた時に、本当はこういう日本のノイズとかアンダーグラウンドが好きなんですが、レーベルとしてボーカロイドのCDも沢山出していてそちらが好調なのでこういうことも出来ているんですというお話だったんですね。

僕自身は初音ミクという名前とコンピュター上で機械が歌うというのは知ってるんだけど、どういうものかは知らなかったんです。そこでお話しているうちにニコニコ動画をはじめ色々と教えて頂いて、その流れで以前〈U-Rythmix〉からリリースされたニューロティカが初音ミクとコラボしている『ミクロティカ』のCDを頂いたんですよ。これ面白いですね、という話をしていたら〈YOUTH〉の社長が「実はこういうものをどんどんやっていきたいんですけど、バンドとかロックをやっている方というのは初音ミクに対して抵抗があるみたいで」と仰っていて。ただ、こういったオタクっぽいカルチャーや同人といったカルチャーというものはアンダーグラウンドという意味では僕らがやっているノイズとかライブハウスでやるロックと底辺では繋がっているんじゃないかという話をしていて。僕自身も子供の頃はマンガが好きでしたし、そういったものに当然興味があった訳で、もし今僕が10代だったらこういったものに興味があったと思うし、ルーツ的には一緒だろうなというのは何となく分かっていて。ニューロティカがやってるんだったら非常階段もアリですかねとお聞きしたら、全然アリですというところから話がスタートしたんです。

そこからは色んなアイデアがパパパっと。ジャケットは日野日出志で目ん玉がドロっと溶けているのを初音ミクで、とか当然思い付くわけですけどそれは無理ですねと(笑)。まずは当たり障りのないジャケットで内容は非常階段らしいノイズとボーカロイドのコラボを提案してみて、クリプトン(初音ミクのライセンス元)にダメと言われたら諦めましょうと。そしたらクリプトンが非常階段のことをご存知で逆に「非常階段が初音ミクとやってくれるんですか?」と。お互い相手のことも知っていて、こういうきっかけさえあれば一緒に出来たことが分かって良かったねと。ですから〈YOUTH〉の高橋社長がいらっしゃらなかったら実現しなかった企画で、これも一つのご縁ですよね。

昨年は異種のコラボレーションが多かった年で、その流れでやっていたので僕の中ではそんなに違和感はなかったですけど、インパクト的にはもんじゅ君→Bis→初音ミクというのは皆さんすごくビックリしてたみたいですね。

――〈U-RYTHMIX〉からリリースされたのはそういった経緯があったからなのですね。

ご縁があればどこからリリースしても構わないのですが、まず非常階段と初音ミクを一緒にやろうなんて思い付く人はどこにもいらっしゃらないと思うので(笑)。〈YOUTH〉の社長が元々ライブハウスの店長をやっていて、パンクやノイズが好きだったというご理解があっての話で。僕らが30何年かやってきた中で、皆さんの記憶の中にあったり、そういった方達との出会いがあった時にこういったものが生まれるんですよね。

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――今までに数多くの合体ユニット(S.O.B階段、原爆階段、スター階段、原爆スター階段、サバート階段、とうめい階段、アシッドマザー階段、にせ非常階段、JAZZ非常階段、もんじゅ階段、Bis階段)がありましたが、特に印象に残っていることがあれば教えてください。

一番最初はザ・スターリンとのスター階段ですよね。あれは1983年でお互いに大体ひと段落ついた頃、ザ・スターリンは実質解散状態で非常階段も学生だったメンバーが就職するような時期で最後の記念に何か一発やっておきたいなぁみたいな。当時ステージできついパフォーマンスをやっていたバンドが二つ合体したら面白いんじゃないかという思い付きですよね。それを京大西部講堂でやって1,000人位お客さんが見に来た中にS.O.Bの子達がいて。ある意味伝説的なユニットになっていて、僕達も機会があればまたやりたいという気持ちもあったし、イベントとかお祭りっぽい時にまたそういうユニットをやろうかという流れの中でS.O.B階段や原爆階段が出来てきた感じですね。だから元々それをやろうというよりは打ち上げのノリや、彼らバンド達が非常階段へのオマージュというかリスペクトを込めて一緒にやってくれた形です。

それとはまた別に僕は1994年にスラップ・ハッピー・ハンフリーをやってまして。それまではずっとノイズ一辺倒でやってたんですけど、歌とノイズのコラボレーションをやってみたいと思い、あれは森田童子のカバーをやるというもので実際すごく面白いなと思ったんですよ。それが自分のソロ活動を始めるきっかけとなりましたし。スラップ・ハッピー・ハンフリーのようなキレイな音楽があって、その中に印象的にノイズを被せていくという手法はG-SCHMITTのSYOKOちゃんのソロや沢口みきさんとやった時を含めて時々やっていて今回はそうしたやり方を僕らの中で混ぜてやったような感覚で。だから決して新しいアイデアではないんですよ。20年位前にやっていたアイデアを今ボーカロイドという新鮮な形でやったという。今回の“やさしいにっぽん人”と“タンゴ”は正にスラップ・ハッピー・ハンフリーの手法でお手のものですよね。

――逆に僕の世代からすると“やさしいにっぽん人”と“タンゴ”のカバー・アプローチはすごく新鮮でした。

そうなんですよね。逆に昔から知ってる人達はスラップ・ハッピー・ハンフリーですよねとツイートで書いてくれたりして。今回こういうやり方でもう一回やってみて今でも新鮮に思ってもらえるのは嬉しいですね。

――2曲とも原曲の持つ素晴らしさを生かしつつ、時折曲間から顔を出す非常階段が非常に計算しつくされたカバーだと感じました。

非常階段のアルバムは全編ノイズですから本当に混沌とした音の塊ですけど、ああいう形で音楽の間に入れると音楽で表現し切れない感情みたいなものがそこのノイズに乗ってくるんですよね。それは悲しみであったり切なさであったり、恐怖を煽るようなものであったり暴力であったり。そういったものを象徴するような音になるんですよ。普通ロックバンドであればそこにギターソロやキーボードソロが入ったりする部分を僕らはノイズでやってるだけで、そこに意味性はないんだけど逆に意味性がないからこそ意味を感じてしまう。それを20年前に気付いてて、このやり方は新しい音楽の印象付け方だなと。

それはノイズというものが持つ力のエネルギーなのかなと思うんです。ノイズって全ての音の集合体なんですよ。それは優しい音も切ない音も厳しい音も怒りのような音も全部が入っているんです。だからどんな表現にも使える。今回サンプリング的に使ってるんでしょと言われればその通りですけど、僕はライブでも再現できるので、今後機会があればライブでもやっていこうかなと思います。

――そもそもスラップ・ハッピー・ハンフリー的手法はどのようにして生まれたのでしょうか?

僕が今やっていることというのは19歳前後に思い付いたことをずっとやってるんですよ。三上寛さんが仰った「男は19歳が全てだ。19歳の時にやりたかったことを一生かけてやるのだ」という言葉があるんですけどまさにその通りで、僕も人前でライブをやり始めたのが18~19歳の時で、こんな音楽があったらいいのにとか一生かけて突き詰めたいのはこういう音だとかは大体その辺りに出来てるんですよ。その中にノイズであったり、早川義夫や三上寛のような切ない歌の世界だったり色々あって。そこで森田童子の音楽を聴いた時にこれがノイズの向こうから聴こえてきたらもっと良いのにと思ったんですよ。例えば裸のラリーズのようなもの凄く激しいフィードバックの向こう側に水谷さんの歌が聴こえてくる。その印象が70年代当時かっこいいなと思っていましたし。ノイジーなギターやサウンドの中から漏れ聴こえる切ない歌があればもっと良いのにと。実際、自分の家で方や森田童子をかけつつ、方やカセットでノイズをかけたりして遊んでたんですよ(笑)。

そういう意味では昔から同じようなことを考えていてイメージの再現なんですよ。それを50過ぎてもやってるだけで、だんだん遊びが派手というか大袈裟になってきたというか(笑)。早川義夫さんとライブ・ツアーに行ったりしましたけど、中学生の時に聴いてたシンガーと一緒にやるなんて僕にとっては考えられないことですよ。「早川さんノイズ嫌いですか?」と言ってギャーとかやると顔をしかめたりして(笑)。でも(これを僕が中学生の時にやりたかったことなんですよ)とコチラは気持ちの中で思いながら(笑)。僕の中では子供の頃からの遊びの延長というか、楽しみながらずっとやってますよ。

アンダーグラウンドの王様になるつもりは全然なくて、もっと俗なもので良いと思うんですよ。僕はアーティストではないし、皆さんと同じようにディスクユニオンに行ったら何枚かCDを買ってしまうような(※取材当日、ディスクユニオンでお買物をされてました)普通の音楽好きの方と変わらない人間だし、だからあくまでも現場に居たいし、皆と一緒に遊びたい。もちろん非常階段でやってきたキャリアというものがあれば使わせてもらいますけど、今の若い人達と一緒になって音楽で楽しみたいですね。

インタビュー、まだまだ続く!
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Qetic編集部

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