一鬼のこという名は、すでに伝説になっていた。

写真展・一鬼のこ展<Red>が、神田・神保町画廊において2015年9月9日(水)から9月13日(日)にかけて開催された。これは、裸体の女性を縄で縛った情景、つまり緊縛の世界の写真展だ。「緊縛」と聞くと恐ろしいイメージがあるが、展示され並んでいる写真はどれも可憐で美しい。さらに、会場にはタンカンが組まれていて、そこに赤い縄を張り巡らせるという、凝った演出がされていて驚かされた。赤い森の中に迷い込んだような、あるいは人間の体内に潜り込んだような、不思議な感覚を見るものに与えた。

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僕が初めてライヴで「女性を縛る」という緊縛のショウを見たのはそんなに古い話ではなくて、2013年のこと。もちろん、緊縛というものがあるということはずっと以前から知ってはいたが、それはSM雑誌に掲載されている、和服の女性(しかも肉付きのよいおばさん)が縛られて吊るされているという光景で、その写真は妙にグロくて生々しく、縛り手、いわゆる緊縛師もオシャレという言葉からは程遠い(はっきり言うと好色おやじ)ものだった。

しかし、初めて見た緊縛ショウは、とあるフェチなイベントで行われたパフォーマンスで、スタイリッシュな若い緊縛師数名が各々、若くて可愛いスレンダーな女の子をアップテンポな音楽に合わせて華麗に縛って行くという趣向のものだった。僕はそれを見た瞬間、魅了された。「こんなポップな緊縛ショウがあるんだ」と驚いた。

その後、Mな女の子と付き合い始めたことを切っ掛けに、ある緊縛師に弟子入りすることとなる。そんなことから知り合った何人かの緊縛好きの友達からいつも、「一鬼のこ」の名前は聞かされていた。緊縛に興味を持つ者にとって一鬼のこは雲の上の人、伝説の人、そして憧れの存在だった。もちろん、僕も憧れていたひとりだったのだ。だから、一鬼のこは日本を代表するとにかく優しくてカッコイイ、緊縛師、ロープアーティストだと、自信を持って言うことが出来る。

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Profile:一鬼のこ(はじめ・きのこ)

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1977年、愛知県名古屋市の生まれ。ロープアーティスト、現代アーティスト、緊縛師、フォトグラファー。
2001年、本格的に縛り始める。
2006年、一鬼のこを名乗り、縛りのパフォーマンスと作品作りを始める。
2010年から日本以外にも世界10カ国以上の場所でロープアートのワークショッフプとショーを行うようになる。
2012年以降、自分で写真も撮るようになり作品制作のスタイルを変えるようになる。
2014年、一鬼のこ緊縛写真集『紅天狗』発表。
2015年、一鬼のこ緊縛DVD『インソムニアボンテージ七菜乃×一鬼のこ』発表。一鬼のこ緊縛写真集『ナワナノ 七菜乃×一鬼のこ』発表。

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