――曲構成にもメッセージが強く込められているんですね。

松尾 ファーストだからこそ“焦燥”が収録できましたし、それに“さよなら僕の町”は大学が決まり春に家を出なくてはいけないという時に書きましたが、私にとっては地元とのさよなら、そして本当の新しいスタートが待っているという曲なんです。これらはファーストでなければ収録できませんでした。“さよなら僕の町”は空気感を伝えるために実際に2人で母校まで行って美術室でレコーディングをしました。

――“さよなら僕の町”は明らかにスタジオが違う! とわかるほど急に音質が変わっていましたがそういう背景があったんですね。

松尾 その美術室は私が大学入学のため毎日デッサンを描いていた原点の場所。スタジオレコーディングとはまったく違う空気感。マイク一本、編集もしない「ミスをしてもそれでもよし!」の一発録りです。「この音楽はちゃんと人間がやっているんだ。」という事、実際にそこに行ってその頃の気持ちをリアルに届けたいという気持ちがありました。

亀本 レコーディング場所はとても大切です。気持ちの問題かもしれませんが、気持あってこその音楽だと思っているので。

松尾 外で野球部が練習していたり、犬が吠えていたりして……それらもすべて閉じ込めました。当初GLIM SPANKYは4人でしたが、この2人になってからがはじまりだったので、本当にあの場所に行って、アコースティックでやって2人だけで本当に原点に帰る。それを伝えるためにこの曲は生でこの場所でやるべきでした。

亀本 バンドアレンジも考えましたがバランスもとりたかったんです。収録曲は全部ロックですけど、本当に沢山のものが詰まっているファーストアルバムにしたかったので、“さよなら僕の町”は完全な2人の生演奏にしました。

――“焦燥”も17歳で作ったということにビックリしますよね。

松尾 これはGLIM SPANKYをはじめてすぐに作った「はじまりの曲」なので、私の中では青いものですが、今でも伝えたいことは変わっていないですね。

亀本 デビューする時にはこの曲だ! という気持ちがあったのでどうにかして出したいと思いました。

GLIM SPANKY – “焦燥”

――2人にとって“焦燥”は特別な思いが詰まっているんですね。

亀本 それでも、そのまま今の自分たちがやるには違うという気持ちもありました。今の2人が“焦燥”を出すためにはどうしたらいいんだろうとサウンドプロデュースをしてもらった、いしわたり淳治さんと一緒に話し合いを重ねて、昨年のリリース時に今のGLIM SPANKYとして一新したアレンジにしました。

――アルバムを聴いた時も今お話を聞いても、最新の曲も収録されていますが「昔作った曲も、今作る曲でも私たちは変わってない!」といった意志を感じました。

松尾 伝えたい部分は変わっていないということを改めて確認できました。時代の流れや流行りの音はありますが、GLIM SPANKYは何年経っても柔軟に自分たちのものにしながら、核の部分は絶対に変わらない。芯がないと伝えたいことは伝わらないという証明になる1曲になったと思います。すべてはここから幕開けしたのでアルバムでは1曲目に入れました。

――『SUNRISE JOURNEY』収録曲の多くはサウンドプロデュースにいしわたり淳治さんを迎えていますが、どのように作業の進行していったのでしょうか?

亀本 淳治さんは自分が演奏を加えてプロデュースする方ではないので、バンドのディレクションをしてくれるという感じでした。

松尾 淳治さんは生粋のバンドマンでスタジオにも昼から夜、時には完成が朝方になってもアドバイスをくれたりして一緒に考えてくれますし、メンバーが増えた様な感覚で真剣に向き合ってくれる人です。だからこそなんでも言えますし同じ目線に立とうとしてくれました。今は本当にやりたいことを素直にやれて、なんでも言い合えるチームがいる。本当に良い活動ができていると常々思いますね。

――その心境は『SUNRISE JOURNEY』にも反映されていますか?

松尾 まさに自分が乗るべきバスがやってきて、今それに乗り込んだところですね。そのバスにはお客さんやスタッフ、関わってくれた人たちもみんな一緒に乗っていて、私たちはそのみんなで夢を見たい! そのバスに一緒に乗っている人たちが私たちに夢を見させてくれるから、私たちも夢を見せることができる。みんなで一緒にのぼっていきたいです。本当に夢と野望と情熱を込めたアルバムになりました。

――もちろん多くの方に聴いて貰いたいと思いますが、特にどんな方に聴いて欲しいですか?

松尾 私には命を懸けている人生のテーマがあります。それは年齢も性別も国も関係なく「全人類に向けて音楽を作る」ことです。私たちはターゲットを絞っていません。例えば私たちより下の世代の子たちや同世代、上の世代に年配の方……聴いてくれる全ての人に「これからの人生に沢山新しいものが待っている。」と思って欲しいです。外国の人にもサウンドやメロディ、そして空気感で伝えられることがあると思っています。それが不可能なことだとはまったく思いませんし、日本語でも通じるはずだと思います。このアルバムは全人類に向けた第一段階です。

亀本 あえて特定の方たちをあげるとしたら、ロックが本当に好きな人、ロックがないと生きていけない! そんな人に聴いて共感してほしいですね。

本気でロック!GLIM SPANKY初のフルアルバムリリース interview150716_glimspanky_1

『SUNRISE JOURNEY』ジャケット

次ページ:亀本「やっぱり年代、性別、国も問わない普遍的で世界的な恰好良いロックスターになりたい」