ルト音楽のメロディに理屈抜きの郷愁を感じる日本人は少なくないのではないか。そしてその感覚は日本人固有のものではないことは、ケルト音楽の文化圏がアイルランドにとどまらないこととも無関係ではないだろう。ガリシアというスペイン北西部の地域もまたケルトの文化を継承している。そのガリシア出身のガイタ(ガリシアン・バグパイプ)奏者であるカルロス・ヌニェスの音楽にも、実は私たちは数多く触れている。たとえばスタジオジブリの映画『ゲド戦記』で著名な“テルーの唄”のインストゥルメンタルヴァージョンや、ザ・チーフタンズの諸作品、坂本龍一の『キャズム』、元ちとせの楽曲“死んだ女の子”など枚挙にいとまがない。

何故、彼の音楽、ガイタは国境を越えて呼応し得るのか。それは、たとえばブラジルのバイーアにはガリシアの移民が多く暮らしていたり、今回、カルロスがプロモーション来日の合間を縫って訪れた三陸は小石浜海岸にはスペインと日本の国交のきっかけになった400年前のスペイン人との交流があった。

「音楽は言語や国境を越える」という言説も逆に使い古されたタームに聞こえるが、人類がいかに世界に分布し、辿り着いた土地の自然とともにそのオリジナリティを変化させてきたかを探る時、それは安易なスローガンを越える。何よりガイタの音色を聴く時、冒頭で書いたように、それがどんなジャンルでも私たちのDNAは素直に反応を起こすのだ。

8月には彼の代表作を編んだベストアルバム『DISCOVER』もリリースされているので、その仕事を俯瞰するにはうってつけのタイトルとタイミングでもある。今回は10月に開催される日本スペイン交流400周年記念コンサート<スペイン音楽フェスティバル 祭典の日>に先駆けてプロモーション来日した、この稀有なバグパイプ界のスーパースターに、ガイタという楽器、そして彼の音楽の必然について訊いた。

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