この春は、胸を揺さぶる注目の「母と子」の映画が続々公開されるよう。近い存在だからこそ、普段は忘れてしまいがちな母親の偉大さ。母との向き合い方を見直すことで、自分の人生もまた変わっていく……。そんな主人公の母に対する姿勢や、葛藤を描いた作品には、万国共通、老若男女に共感するものがあるのではないだろうか。

変わりゆく世界と、変わらぬ人々の想い――

中国の名匠、ジャ・ジャンクーの最新作『山河ノスタルジア』が4月23日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開される。今作は、世界三大映画祭すべてで受賞をはたしたジャ・ジャンクーの、『青の稲妻』(02)、『四川のうた』(08)、『罪の手ざわり』(13)に続き4作目となる、第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、各紙から大絶賛された注目作だ。

映画『山河ノスタルジア』予告編

本作で描かれるのは、母と子の愛から浮かび上がる、過去・現在・未来へと変貌する世界と、それでも変わらない市井の人びとの想い。その全てが愛おしくも哀愁に満ち溢れた、世界が賛辞を贈った壮大な叙事詩がこの度誕生した。

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「『山河ノスタルジア』を作ったきっかけは、私と母のことが大きく関係している」と語るジャ・ジャンクー監督。本作は、これまで監督が 生み出してきた作品とは、一線を画す、人々の“感情のひだ”に 焦点を当てた作品だ。

ジャ・ジャンクー監督は『長江哀歌』(06)撮影後、父親を亡くし、 母を故郷に一人残し仕事に励んできたが、あるとき、母に「これは、 あなたの家の鍵だからね」と実家の鍵を渡されたという。 「私は、故郷に帰るたびに、母親に着るものや食べるものに不自由しないようにとお金を渡していました。しかし、母親が本当に必要だったのは、そうした物質的なものではなく、私の存在だったのです。お金で何もかも 手に入るという消費社会の中に、自分も気づかないうちに飲み込まれていたのだと気づいてハッとしました」と話す監督。

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『山河ノスタルジア』は、そうした自分と母親の関係性から監督自身が感じた、人との繋がり方や 個人における価値観さえも変化させてしまう社会の在り方についても考えさせられる作品となった。

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