レオナルド・ディカプリオをそれ以上苦しめないで! 心の中でそう叫んだ。体調2メートルを優に超えるクマが、レオナルド・ディカプリオの体を噛みつき、のどを切り裂いた。服はボロボロで、泥だらけ。痛みに堪えるように固く噛みしめられた口元。もう見てられない。しかし、クマは獲物を完全に仕留めるまで攻撃し続けることを動物図鑑やテレビで見たことがある。

急に現実と比較する不思議さ。スクリーンで起こっていることは“フィクション”のはずだった。その不思議さに1ミリも不信感を抱くことなく、ひたすらレオナルド・ディカプリオの痛みを共有しながら、「やめて!」と心の中で叫び続けた。

“エンドロールまで観たい映画”ー『レヴェナント:蘇えりし者』 film160415_revenant_sub2

4月22日(金)から公開される『レヴェナント:蘇えりし者』を見て、しばらく呆然と街の中を歩き続けた。いつもは耳につく街中で流れてくるヒットソングや街頭ビジョンから聞こえてくる宣伝文句などが遠くの方で鳴っているように聞こえた。下唇を噛み締めながら、普段は全く来ない六本木の町をひたすらうつむき加減で歩き続けた。心の中で、誰も話しかけないでくれと思いながら。

3月23日に行われた『レヴェナント』ジャパンプレミアの記者会見を思い出した。<アカデミー賞>5度目のノミネートで初めて受賞した、主演男優賞の感想を求められ、「私が仕事をしているのは、こうやって賞をもらうためではなく、元々持っていた理想や夢を追求して、最高の映画を作り上げていくことです。俳優を15歳から初めて、その時から映画の世界は、偉大な俳優たちの方の上に成り立っていることを感じていました。私もその英雄たちの後に続きたい。本当にこの映画の世界が大好きです。」

授賞式では、『タイタニック』で共演したケイト・ウィンスレットと喜びを分かち合う姿が記憶に新しい。

レオナルド・ディカプリオの“現実”の人生は知らない。でも、それは知らなくても良いと思った。知らないほうが自分にとっては良いと思った。壮大な恋愛をした『タイタニック』から、極寒の地でサバイバル生活をする『レヴェナント』まで、レオナルド・ディカプリオの人生は、現実のように激しくて、面白くて、悲しい。良い時も、悪い時もある。だから人生は楽しいと映画を通して真っ直ぐに伝えているように見える。

“エンドロールまで観たい映画”ー『レヴェナント:蘇えりし者』 film160415_revenant_sub1

映画を見終わった後、瞬く間に『レヴェナント』は「コトバにできない映画」だと思った。コトバにできないから、したくないから、監督のアレハンドロは「映画」で表現した。それを体現したレオナルド・ディカプリオの演技は文章にできない力を持っている。

「作品に関わった全ての人がつながり、この映画の世界にのめり込んだ」と話しているように、誰か一人欠けてしまったらできなかった映画だろう。

“エンドロールまでずっと観たいと思う映画”は、久しぶりだった。

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