『光りの墓』

3月26日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

タイが生んだ、映像作家・アピチャッポンの待望の新作。決して一般受けするとは思えないアピチャッポン。しかし最近、何故か人気である。彼のファンが臆せず言うのは、「鑑賞中に寝てしまうのは悪いことじゃない」ということ。それは、「寝てしまっても、その映画が面白くない訳じゃない」ということでもある。それ程に彼の映画は、まるで我々が自然と呼吸をするように、ただそこに寄り添う。彼の映画では、大事件が起こるでもないし、登場人物たちがベラベラ口論することもない。ただ主人公たちが、なんだか変なところで、ちょっと変わった慣習と共に、生きている。そして、その場所の時間の流れかたが、すこし独特だ。しかしその時間は、日々に追われながら生き急ぐ我々には、とんでもなく贅沢な時間にも感じる。だからこそ、この“映画体験”を望む者が多いのではないのだろうか。未体験の方は是非。

監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
出演:ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー

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『リップヴァンウィンクルの花嫁』

3月26日(土)よりユーロスペース、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー

『リリィ・シュシュのすべて』『スワロウテイル』など、根強いファンも多い、岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』以来の日本公開作。黒木華やCoccoなど、彼の世界観にピッタリのキャスティングで、それだけでも期待感が募る。登場人物を上からも下からも撮る、執拗に彼女たちに迫るカメラは、言葉以上の何かを我々に訴えかける。“ここではないどこか”を頻繁に描く彼だが、今作はおそらく日本の何処か。「これ」という何かが足りていない訳ではない、でも満足感にはほぼ遠い。そんな毎日を生きている我々には、きっと届く予感がしている。透明感の溢れる画面にも注目してみてほしい。

監督:岩井俊二
主演:黒木華

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『無伴奏』

3月26日(土)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー

成海璃子の久々の映画主演作。共演には、池松壮亮に、おばさまのハートをがっしり掴んで離さない、人気俳優・斎藤工。そんな彼らが演じたのは、学園紛争が盛んだった時代を駆け抜けた男女3人の物語だ。そんな時代に、野心を胸に抱く若者は輝かしく、それだけに盲目的でもある。正しさ間違いもすっ飛んで、今を駆け抜ける彼らに、我々が抱くのは郷愁か、それとも虚無感? 多感な時期を全力で演じきった役者たちは必見。

監督:矢崎仁司
主演:成海璃子

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それでは今週も映画三昧!

text by Mara