広告のような映画

映画『ロバート・アルトマン』は広告のような映画だ。アルトマンを描写する11の言葉(キャッチコピー)を手がかりに、映画監督としてのキャリア(ボディコピー)を紹介する。本作の特徴は、ジャーナリスティックな視点を排除することにある。さらに、偽りがない。なぜなら、アルトマン夫妻が“ナレーション”を務めているからだ。本作の監督ロン・マン曰く、この手法はドキュメンタリーのトレンドになってるという。

この映画の体裁は、主題である人物の「熱量」にかかっている。ロバート・アルトマンは、カンヌ・ベネチア・ベルリンという世界3大映画祭で最高賞を受賞した3人目の監督だ。さらに、<アメリカ・ゴールデングローブ>で最高賞を受賞した、名実ともに著名な映画監督である。しかし、本作は決して彼の「市場での評価」を焦点にしていない。本作の良さは、どんな権威を持ってしても、決して物怖じしないアルトマンの映画に対する姿勢・言葉を純粋に伝えることにある。それは、カンヌ映画祭受賞の喝采よりも、何十倍も力強い持続性と普遍性を持っている。

クリエイティブの源泉―映画『ロバート・アルトマン』 film151001_altman_1

インディペンデントに生きる

インディペンデントに生きるとはどういうことか? 商業の対抗馬として描かれる「インディペンデント」のイメージが、それ程良くない。それは多くのインディペンデントが、通常では描けないようなシーンや実験的なテクニックを用いることに、優れた特徴があるからだ。ロバート・アルトマンの映画も同じ特徴を持っているが、観客に見せることを意識した作品が多い。なぜなら「批判者は良き常識人」でもあるからだ。映画の常識とは、「人間を描き、撮ること」にある。セリフを発する、動く役者が、映画の中で生きる必要がある。ロバート・アルトマンの数々の映画作品が面白いと感じるのは、徹底して人間を描くという映画の基本を、忠実に実現しているからだ。アルトマンは、「俳優を気持よくさせ、もっとやれると励ますこと。やりすぎても笑われねよう自分が口実を用意しておく」と、役者との関係について話す。また、実験的な撮影技術に取り組むことで、ハリウッドに嫌われるエピソードが多く見受けられるが、今ではハリウッド映画だけでなく、多くの映画制作の“常識”となっている。

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