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『アメリカン・スナイパー』を殺害した男の壮絶な半生に迫る

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リント・イーストウッド監督最新作『アメリカン・スナイパー』はイラク戦争に4度にわたって遠征、アメリカ軍史上最多160人以上を射殺した伝説のスナイパー、クリス・カイルの半生を元に、残酷な戦場と幸せな家庭の狭間で精神が崩壊していく男の葛藤を描いた作品だ。現在日本でも大ヒット上映中の本作だが、本稿では映画では触れられなかったクリス・カイルを殺害した元海軍兵のエディー・レイ・ルース(以下ルース)の半生について書きたいと思う。決して多くは語られない伝説のスナイパー殺人事件の背景、そこにはアメリカが抱えるもう一つの闇があった。

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エディー・レイ・ルース(27)

1987年、テキサス州で生まれたルースはダラス郊外の小さな町で3歳年上の姉と共に教育熱心な両親の下で育った。母親が小学校の教員助手だった事もあり、整った環境の中で教育を受けていたルースは、この地で幼少期を過ごす多くの少年達と同様、父親から猟銃の使い方を教わり、週末には家族でハンティングやキャンプを楽しむ”テキサスの少年”だった。また、ルースは大人顔負けのユーモアで度々周囲の大人たちを驚かせる少年だったという。

2001年9月11日、13歳のルースはテレビが映し出すある映像に衝撃を受けた。それはアメリカを襲った同時多発テロによって崩壊するツインタワーの映像だった。戦慄の光景を目にしたその日、ルースは父親に「将来は軍隊に入りたい」という決意を告げていたという。そして翌年、ルースは地元の高校に進学した。ルースが進学した高校は後に自らが殺害するクリス・カイルが10年前に卒業した高校だった。

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少年時代のルース

短気で問題児」高校時代の同級生はルースについて一様にこう証言している。事実、学校でのルースの成績は悪く、高校生ながら飲酒やドラッグを頻繁にするようになっていた。そして高校2年生になった頃、教育熱心だった両親に窮屈さを感じていたというルースは、姉と共に両親の下を離れ、近所に住む伯父の家で新たな生活を開始する。しかし、共に暮らし始めた伯父はドラッグに依存していた。頻繁に家を訪れていたという伯父の友人は「不法占拠された家のようだった」と証言するほど環境は悪かった。そして事態は最悪の結末を迎えた。ルースの伯父がオーバードーズで死亡したのだ。この事件をきっかけにルースの姉は両親の元へと戻る決心をした。しかし、ルースは亡くなった伯父の家に叔母と共に残った。そして軍隊に入る為に、高校卒業までの残りの1年間を過ごした。そして2006年、ルースは高校を卒業と同時に海軍に入隊。新兵訓練プログラムを経たルースの凜とした表情を見た母親は一人前の男になった息子に誇りを持ったという。

井川智太

コラムニスト

TVディレクターとして働くかたわらフリーライターとして活動中。2011年よりニューヨークに移住してからは、アメリカの犯罪、ユースカルチャー、三面記事的な話題など幅広く執筆中。

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