前回に引き続き、<Amsterdam Dance Event>(以下、ade)の現地レポートをお届けしたい。デイプログラムの終わりとともにナイトプログラムがスタートするノンストップフェス。アムステルダムの街中が歓喜に満ちたパーティータイムの模様を写真とともに紹介したい。

もはやどこのどのパーティーを見てもカルチャーショックを受けるような衝撃はなくなってしまった。しかし、<ade>は他の音楽フェスとは少し違う視点から見るべきだと思っている。何より、<ade>とは一体何なのか? 世界基準のダンスミュージックビジネスとはどんなレベルなのか? そういったことを知る価値があり、現地で実際に携わっている人たちと触れ合いながら、自分には何が出来るのか、何をしたいのか、パーティーを純粋に楽しむだけでは終われないもどかしさをひしひしと感じた。

アムステルダムは今また新たなクラブシーンが生まれている。FourTet、Floating Points、optimoなどが出演したDe Schoolは今年1月にオープンしたばかり。さらに、<ade>開催中にプレオープンとなったShelterでは、Peter Van HoesenやDonato DozzyとNeelによるVoices From The Lakeらが出演し、世界のトップアーティストを一気に受け入れ可能なインフラをそこら中のクラブで整えているのだ。さらに、アムステルダム発の<DockYard Festival>やベルリンを拠点にイビサ、NY、クロアチアなど世界各地で開催されているテクノフェス<HYTE>までもが巨大なホールやイベントスペースで同時開催されているとあって、そこまで広くない街に一体いくつのクラブやイベント施設を持っているのだろうと感心するほど。

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De School

そんな“音が出せる箱全部”で、テクノ、ハウス、ディスコ、EDM、トランス、ヒップホップ、ジャズなど、ジャンル別のパーティーが同日同時間違う場所で、しかも5日間に渡り開催されるのがナイトプログラムのすごいところである。それだけではない。アパートメントのバルコニーをDJブースにしてプライベートパーティーが行われ、個人タクシーの中は若きスター、Martin Garrixが爆音で流れている。個人的にはEDMには全く興味がないが、ジャンルの好き嫌いを言う前に、街全体が歓喜に満ちていることに自分自身も歓喜したのだ。

スケジュールの都合で二日目からの参加となった今年は、友人であり、ベルリンを拠点に世界各地で活躍している尊敬するDJの1人、ANRIが出演したパーティーが自分にとっての開幕となった。いくつものローカルクラブが近隣に点在し、観光地としても中心エリアに位置するHunter’s barで開催された<Rhythm Converted invites:SHIFT Digital Audio>は、ベルギーを代表するテクノDJ Tom Hades主宰「Rhythm Converted」による招待オンリーのパーティーであり、規模は小さいものの、夕方の早い時間から多数の関係者が集まっており、<ade>の成功を祝うかのようなアフターパーティーの雰囲気だった。

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Photo by Atsushi Harada

日本人アーティストの活躍で最も欠かせないのは、やはりDJ NOBUの存在だろう。最終日、中心地からは少し離れた倉庫街にあるH7 WAREHOUSEにて開催された<Klockworks>は、Ben Klock、DVS1といったBerghainのスターチームが揃って出演しており、アムステルダムにいながらベルリンテクノを存分に堪能できる一夜となった。DJ NOBUの出番は、Berghainの30時間以上続くパーティーの終盤の夜ではなく、夕方スタートのパーティーのまだフレッシュな時間帯である夜8時からだった。安定したオープニングから通常より早めのピークタイムに持ち込んだセットは、テクノがベースにあることに変わりはないが、より実験的でエクスペリメンタルなサウンドが絶妙に入り込み、洗練された美しさがとても印象的だった。

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Photo by Yuta Sawamura

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