そこにはいつもとびきりのHappyとDeepがある。ノイケルンにある大人のおもちゃ箱<Griessmühle>は、クラブが密集しているシュプレー川沿いのエリアとはまた少し違う、そこだけにしか存在しない独特の雰囲気を持つローカルクラブだ。そこで毎月超ディープなゲイパーティー<CockTail d’Amore>が開催されている。36時間ぶっ通しでハウスやディスコが流れる中、スタイリッシュで可愛らしいゲイとハードクラバーたちが入り混じり、激混みのフロアーの中で踊り狂う。

今のベルリンのシーンを象徴するこのクレイジーパーティーに、過去4度出演しているのがDJ Chidaである。友人を通じて知り合った白人男性が“Chidaを知ってる?? 僕は彼のプレイが大好きなんだよ!!”と、私が差し出したコロナに口も付けず、ボトルを握りしめたまま、興奮気味に繰り返し熱く語ってきたのがとても印象的だった。

5月1日のメーデーに、<Panorama Bar>にてツアーのフィナーレを終えたChida氏を捕まえて話を聞かせてもらった。そこに立った人間にしか分からない緊張と優越と未来、そして、音楽に対するどこまでも熱い思いを初夏の陽気となったベルリンで語ってもらった。

スペシャルロングインタビューとなっております。是非ご覧下さい!!

INTERVIEW:DJ Chida

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る chida1

ベルリンの<Panorama Bar>って、一番ハードコアなパーティーが最後というプレッシャーが常にありました。

宮沢香奈(以下、宮沢) まずは、ワールドツアーお疲れ様でした!

DJ Chida(以下、Chida) ありがとうございます!

宮沢 今回のツアーはいかがでしたか? 2ヶ月弱の期間で全16ヶ所ってかなりハードなスケジュールだったと思うんですが。

Chida 毎週末移動が大変でしたね。前半のメキシコ、US、カナダのギグを終えて、後半のヨーロッパツアーに備えて、一度レコードをピックアップしに東京に戻った時が一番キツかったです。何と自宅滞在4時間!! でも、これは僕が東京からアムステルダム行きのチケットを間違って一日早くブッキングしてしまったからなんですけど……(笑)。

宮沢 (笑)。文字通りのトンボ帰りですね。

Chida でしたね。週の前半とかは比較的各地でのんびり出来てたんですけど、毎週金曜の夜にギグをして土曜の朝に終えてからそのまま空港に行ったり、ホテルも1、2時間ぐらいしか滞在出来ずにすぐフライトとか。NYからサンフランシスコまで直行便で6時間もかかるし、サンフランシスコからメキシコのモンテレーなんて、2回も乗り継いで12時間もかかるんですよね。だから、寝れるのが移動中のフライトだけってことが多くて、ちゃんと寝れない時もあるし、いかに週末に自分自身の心と身体のコンディションをキープするかが大変でした。今回のツアーでかなり鍛えられましたよ(笑)。

宮沢 もう聞いてるだけで心折れそうなんですけど(笑)。それには相当強固なメンタルと体力が必要ですよね。

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る chida_tour

Chida そうですね。でも、幸い今回のツアーは、前半のギグが全て良いパーティーだったおかげもあって、メンタル面は絶好調でした。ヨーロッパツアーが始まってからは、ツアーの千秋楽であるPanorama Bar(以下、Panorama)でのプレイのことが常に頭にありましたね。

宮沢 やはりそこに焦点を合わせようとしてたんですか?
 
Chida ベルリンでは以前にも、Loftus Hall、Soju Bar、Renate、“CockTail d’Amore”(以下、CockTail)のGriessmühleでプレイしたことはあったけれど、PanoramaでDJするのは初めてだったし、ダンスミュージックを生業にする身としてとても特別な場所ですからね。プレイするのが5月1日のメイデー、しかも日曜の夕方4から8時っていう自分の力を最も試される時間帯だけに、何をやろうかって、そればかりずっと考えてました。

日本だったら、まず、土曜の夜から月曜の夜まで遊ぶことなんてないですよね?でも、普段のPanoramaの状況でいったら、日曜夕方はまだ折り返し地点。しかも、フロアーは窓から太陽光が降り注いでいて明るめだし、どれだけの人数で、どんなお客さんがいて、どんなセットがハマるんだろう?って。最もハードコアで難関なパーティーがツアーの最後に待っているというプレッシャーがすごかったですね。(笑)。

宮沢 確かに。一番手強いですからね(笑)。まず、ドアポリシーがあるから誰でも入れるわけじゃないし、日曜の深い時間になればなるほどツーリストや初心者がいなくなって、ハードな常連たちが自分たちのフロアーを作りにやってきますからね。

Chida そうなんですよね。日曜の午後以降はまさにカオス。これまでにPanoramaでプレイしてきたいろんなDJ陣から、“その日のお客さんによってすごく手強い時があるよ”って聞いていたのもあって、少し不安もありました。

宮沢 ベルリンはPanoramaに限らず、フロアーの反応がダイレクトだから、好きじゃないと思ったらサーっと人がいなくなるし、文句言う人までいますからね(笑)。

Chida 確かに(笑)。何度もベルリンでプレイしてきて慣れつつあるとはいえ、過去に何度か“外した!”って思ってしまう瞬間もあるわけですよ。想定外の雰囲気や流れに即座に対応し切れない時もあったりして。正直、今回のPanoramaでの序盤1時間は心穏やかでなかったですもん。

宮沢 え? そうだったんですか? 私がPanoramaに着いた時は、ゲストの列が見たことない行列になっていて、入るのにけっこうな時間が掛かってしまい焦りましたが、中は至っていつもの雰囲気で盛り上がってたし、全然そんな風には感じませんでしたけど。

【インタビュー】欧州ツアーを終えたDJ Chidaがベルリンで語る chida2

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