世界中に響めきが起こったSoichi Terada『Sounds from the Far East』をワールドリリース。店には世界各地からファンやアーティストが連日押し寄せ、ダンスミュージックを扱うレーベルであればどこでも心の底から提携を望むであろうディストリビューション力。これが、小さな貿易国オランダが世界に誇るアムステルダム発<Rush Hour>である。近年、その勢いは留まるどころか増してゆくばかりである。

Amsterdam Dance Event(以下、ADE)>を皮切りに、ベルリン<Panorama Bar>、ロンドン<Corsica Studio>、パリ<Concrete>と一流クラブをサーキットしてきたレーベルツアーが今月いよいよ日本でも開催される。

今年の夏、アムステルダムの運河沿いのカフェでレーベルオーナーAntalへのインタビューを行った。その時に語ってくれた貴重な内容と共に、音楽好きなら一度は体感すべき<Rush Hour>の魅力をお伝えしたい。
レーベルボスAntalが語る<Rush Hour>の威力 rushi-hour-submit-8

レーベルボスAntalが語る<Rush Hour>の威力 rushi-hour-submit-14

レコードショップ、レーベル、ディストリビューション、パーティーオーガナイズとダンスミュージックシーンの全てを網羅する<Rush Hour>

1997年、アムステルダム市内の中心地にレコードショップ<Rush Hour>は誕生した。それほど広くない店内には、選び抜かれたレコードがぎっしりと詰め込まれ、一流アーティストたちから絶大な信頼と支持を得ている。さらに、ヨーロッパを代表する世界的レーベルである<Rush Hour Recordings>を立ち上げ、その後ディストリビューションを開始する。今やベルリンのHard Waxを始めとする世界有数のレコードショップで見ない日はない。パーティーオーガナイズもスタートさせ、日本を含む世界中でツアーを決行。瞬く間にその名は世界へと広がって行った。

<Rush Hour>というフォーマットでダンスミュージックの全てを網羅するAntalは、一見やり手のビジネスマンかのように思えるが、90年代からアムステルダムを代表するDJの1人であり、近年世界中から出演オファーが絶えないトップDJである。

「もともと、個人的にレコードを買ったり売ったりしていて、当時アムステルダムには自分好みのレコードショップがなかったから、それなら自分で作ってしまおうと思って始めたのがきっかけなんだ。だから<Rush Hour>の始まりはショップからだね。」

90年代シカゴハウスやデトロイトテクノをルーツに持ち、そこから派生した様々なレーベルやアーティストを絶妙なタイミングで展開している<Rush Hour>の最近の傾向には個人的にもとても興味がある。さらに、日本でもレコードの売り上げが伸びているというニュースが舞い込んでいるが、オランダの市場ではどうなのだろうか?

「Soichi Teradaの人気はまず実証されてるよね。<Rush Hour>がディストリビューションしているレーベルで言えば、Music From Memoryからリリースされているものが人気かな。あと、ローカルDJとしても人気のSan ProperやYoung Marco、そしてGerd Jansonがコンパイルした『Music For Autobahns 2』のセールスは好調だよ。

日本同様にオランダでもレコードは売れてるよ。50%がオランダからで、もう半分は他国からになるけど、BandcampやBeatportなどからデジタルもすごく売れているね。でもCDは売れなくなってしまった。CDの需要がなくなってしまったのはどこの国でも同じじゃないかな。」

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