グラフィティーに塗り潰された見慣れた壁を抜けると、一瞬ひんやりとした真っ暗闇の空間が目の前に広がる。遠くからずっしりと重いキック&ベースが響いてくる。その音を頼りにブースへと近づいて行くと、最小限のライトの中で次々とウィークエンダーたちの笑顔が見え隠れする。パーティーボルテージを一気に上げてくれるのはこういった瞬間だ。私は早まる気持ちを抑えながら手探り状態でバッグの中から取り出したカメラのシャッターボタンを押した。

ベルリンのローカルクラブは基本的に撮影禁止である。その事実は何度も伝えてきているが、これほどまでにも魅力的で、他にはないオンリーワンなクラブカルチャーを伝えていきたい気持ちは変わらない。

それと同時に、実力派揃いのローカルアーティストに混ざってこの地に根を這って挑み続けている日本人アーティストたちの目覚ましい活躍も伝えたいのだ。

今回、友人でもある日本人アーティストたちの協力を得て、いくつかのローカルパーティーの取材をさせてもらった。ちっとも上達しない私の写真ではリアリティーに欠けてしまうかもしれないが、少しでもベルリンのパーティーやクラブの素晴らしさやおもしろさが伝わってくれることを願って、通常より写真多めでお届けしたい。

ロンドン屈指の〈ToiToi Music〉がベルリンにてウェアハウスパーティーを開催!

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眠らない街Warschauerのクラブ・バーエリアの一番奥にある倉庫のようなスペースで開催されたのは、ロンドン屈指のレーベル/エージェンシーである〈ToiToi Music〉が主催するウェアハウスパーティー。今回のベルリン開催には参加していなかったが、ロンドンを活動拠点としているJunki Inoueもレジデントの1人である。〈ToiToi Music〉はベルリン以外にもバルセロナやミラノ、NYなど世界各地で勢力的に開催しているロンドンローカル発の人気パーティーだ。

この日、シークレットゲストは、〈ToiToi〉の看板アーティストの1人でもあるAudio Warnerだった。会場に着いた時には、お目当てのマシュー・ジョンソンのライブが始まったところだった。背の高い欧州人を掻き分けて一番前で踊りながら写真を撮らせてもらったが、常に変わらないどっしりとした貫禄とマシュー独自の変化球なプレイは妙な安心感を与えてくれた。

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クラブよりもインターナショナルでクレイジーな客層が多かったのも興味深かった1つ。仲良くなった女性に他にはどこのクラブに行っているのかと訪ねたら、いくつかのローカルクラブの名前をあげてくれたが、Berghainには入れないから行かないのだと言われた。ドアポリシーの壁に打ち当たっているのはアジア人だけではないのだ。昔のベルリンを知るレコードショップやクラブのオーナーたちも言うように急激な都市開発と人口増加はこういったところにも影響される。移住してきた外国人の1人として、いろいろ考えさせられることの1つなのだ。

日本人アーティストと文化をフィーチャーした<Made in Japan>