ルリンはクリエイティブ系のスタートアップが多いと聞く。実際、様々な分野において成功している人たちが大勢いる。そして、そういったクリエイターたちとは、ひょんなきっかけで出会 うことが出来るのもこの街の特徴である。もちろん、口を開けてポカーンと間抜け面で待っていても何もやっては来ない。常に興味のある分野や可能性のある前 衛的な物事にアンテナを張っているからこそ、出会いが降りてくるのだけど。

今回、友人を通じてインタビューをさせてもらうことになったのが、Magnum38としても活動しているミュージシャンで、プログラマーのOliver Greschke氏(以下、オリバー)だ。オリバー氏は、アーティストやマニアの間ではすでに話題になっているiPhoneアプリ”Elastic Drums”の開発者である。ステップシークエンサーやバラエティーに富んだエフェクトが組み込まれたモジュラーシンセサイザーとして話題になっているこのアプリの誕生秘話を聞かせてもらった。

【インタビュー】Mouse on Marsも熱烈ラブコール! 話題のシンセアプリ開発者とは? column150120_km_interface

【インタビュー】Mouse on Marsも熱烈ラブコール! 話題のシンセアプリ開発者とは? column150120_km_interface2

Interview:Oliver Greschke

宮沢(以下、M) iPhoneアプリ”Elastic Drums”をリリースすることになった経緯を教えて下さい。

オリバー(以下、O) アプリ制作には以前から興味があって、自分でリサーチを始め出した。そこで、いろいろ探っているうちにサンプリングを使わずにドラム音を出せる構造を作り出せたらおもしろいなあと思って。そこで行き着いたのが、この“Elastic Drums”なんだよ。ネーミングにある通り、サンプリングにありがちな固い音ではなく、もっとElasticな、つまり、融通の利く、弾力性のある音を出せるものにしたくて、研究を重ねてきたんだ。

(ここで、オリバー氏は実際にアプリで作ったおもしろい音をいくつも聴かせてくれた。)

M 確かにデジタルだけど伸びやかな不思議な音がする!

O 他にもいろんなおもしろいパターンを作り出すことが出来るよ。それで、こういった音がどうやったら出せるようになるんだろう? って、研究してるうちにある 理想的なパッチと出会うことが出来た。しかも、それを開発している人が、もう15年ぐらい福岡に住んでいるオーストラリア人で、すごい偶然だよね。まだSkypeでしか会ったことないけど(笑)。

M それはまたおもしろい出会いですね(笑)。でもそのパッチのおかげでこの”Elastic Drums”が誕生したわけですね。このアプリは、Mouse on Marsオフィシャルであるアプリケーションレーベル〈MoMinstruments(以下、MoM)〉からリリースしていますが、以前から交流があったんですか?

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O イヤ、そうではないんだ。僕はもちろんアーティストとしてMouse on Marsを知っていたけど、一緒に活動することになったのは今回のアプリがきっかけなんだ。僕は僕自身のソロプロジェクトとして、”Elastic Drums”を作っていて、〈MoM〉は〈MoM〉で2名の専属プログラマーがすでに所属している状態。そんな中で、僕は周りにいるアーティストたちにアプリを試作品として送っていたら、Mouse on Marsの目に止まって、「何これ?! おもしろい! 是非一緒にやろう!」という流れに。

M わお! それはまたまた嬉しい出会いですね!アーティスト同士、クリエイター同士が繋がりやすくて、すぐに一緒に何か出来る環境にあるのもベルリンならではですよね。〈MoM〉がアプリケーションに特化しているレーベルというのが、とてもユニークな発想だと思ったんですが、それはなぜですか?

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