に続いて、ロンドン在住のフリーライター、津田昌太朗氏(nekomeguro London)を迎えて、音楽談義の続きをお届けします。今回は、互いが住んでいる街、ロンドンとベルリンについて。音楽をキーワードにそこに暮らす人々やカルチャーの違いなど、様々な視点から語っています。

何でも揃っているオールマイティーな大都市ロンドンは、ファッション、音楽、アートなど、最先端カルチャーの発信地として、常に注目され続ける。それに対して、ドイツの首都でありながら他の都市に比べて貧しく、独特な空気感を持つベルリン、近年の都市開発に伴い、異常なまでの注目を集めている。しかしながら、実際に住んでみないと見えてこない本当の姿。対照的でありながら、世界から注目される2つの都市の実態を探ります!!

Interview: 津田昌太朗(nekomeguro London)× 宮沢香奈

Qetic連載コラムスペシャル?!噂のフェスジャンキーに会いにロンドンまで行って来た。【カルチャー編】 column141203_km_9

「ロンドンに住んでることが凄いんじゃなくて、
“ロンドン自体”が凄いだけだから。
自分探しとかもう家でやって下さいって感じですよ」

宮沢香奈(以下、宮沢) 津田さんは、ロンドンに住み始めて、結構長いと思うんですが、最近のロンドンはどうですか? 特に音楽シーンとかアーティストとか、その辺が知りたいですね。

津田昌太朗(以下、津田) ぶっちゃけると、思っていたより面白い人に出会えないのがロンドン!

宮沢 え? そうなの?!(笑)

津田 うーん、その言い方には語弊があるかも。アーティストは面白いですよ。才能ある人にもたくさん会えるし、常に面白いことは起こっていると思います。でもそれを外に伝える人が少ないように思います。特にこっちに住んでいる日本人で発信力がある人とか、そもそも発信したいと思っている人が少ない。こんなに面白いことが起こっているのに、みんな何してるんだ!? みたいな。あとはスタートアップ的な新しいことやろうとしている人も最近ベルリンの方が多い気がしますね。

宮沢 なるほど。確かに、“おもしろい”と言うかキャラが濃い人が多いですね。あと、仕事はしたいけど、会社に属したくない人が多い(笑)。スタートアップで成功してる人や挑戦してる人ももちろんいます。クラブビジネスの成功は誰もが知ってる代表例だと思いますけど、クラブコミッションがあって、そこに投資する人たちがいるっていうシステムがすごいと思いますね。私も関わらせてもらった<AFTER25>や、つい先日開催された<Berlin×Tokyo デザイン・アート・カルチャー展>を見てもらえば分かるように、きちんとビジネスや文化として捉えているんですよね。ベルリンの街自体に関して言えば、とにかく、ストレスがなくて、自由で、生き急ぐ必要がないんですよ。だから、定職に就かない人も多いし、アーティストが創作意欲が湧く環境だって言うのはすごくよく分かります。良くも悪くもマイペースに生きれますから。

津田 ロンドンも、こっちに長年腰を据えて活動してる人たちは面白いことやってるなあって思ってて、先日もQeticにUK拠点の日本人アーティスト特集を掲載したんです。ただ僕みたいに1年とか2年の短いスパンで来て掻き回してやろう! っていうのがいないんですよね。そういった発想の人はみんなベルリンに行っちゃってる気がする。

London

宮沢 確かに、ロンドンに住んでいた友達のほとんどは、今違う都市にいますね。10年前ぐらいからズバ抜けておもしろいことを仕掛けてた人たちがいなくなってしまった。でも、どこにいてもそれぞれ活躍してるし、私がヨーロッパ取材とかをするようになって、プライベートではなく、仕事で絡むことが多くなりましたけど、やっぱりみんな行動力とか発想力が他とは違う気がします。ロンドンは東京に似てるなあってすごい思う。お金がないと何も出来ないし、何より街がすでに完成されていますよね。何でもあって便利で、街にいるだけで刺激が受けれるし、ベルリンより圧倒的にオシャレですよ(笑)。お金があったらちょっと住んでみたいって思いますね。ビックリしたんですけど、ロンドンってワーホリ(※)が抽選なんですよね??

※ワーキングホリデー(YMS):就労VISA取得が非常に難しいイギリスにおいて、30歳以下であればUK内で2年間働く/住む権利をもらえる

津田 そうなんです。でも、そのシステム本当にやめた方がいいと色んなところで言っています。出来ることなら面接制にすべき。まあ僕がとやかく言う筋合いはないけれど、目的もなく何となく来ちゃう人もかなりいて、ちゃんとやりたいことを持っている人が何度も抽選で落ちているのも目の当たりにしてますからね。もうね、自分探しとか家でやって下さいって感じですよ(笑)。

宮沢 (爆笑)。それを言うなら、ベルリンは自分を見失ってる人とかいますけどね(笑)。

Qetic連載コラムスペシャル?!噂のフェスジャンキーに会いにロンドンまで行って来た。【カルチャー編】 column141203_km_1

London

津田 ロンドンにいることが凄いんじゃなくて、ロンドンで何をするかが大事だと思うんですよね。そもそもロンドンっていう街が凄いだけですからね。

次ページ:津田「流行ってないものとか、普遍的なものの中に敢えて入って、自分が何ができるのかを試してみたかったんですよ。」