入梅の砌、移り気な天気に振り回されつつも、紫陽花の色に心を奪われる候、みなさまに於かれましては、いっそうのご清祥のこと、お慶び申し上げます。

さて、今回は「梅雨に捧げるレシピ」を紹介致します。

梅雨時の楽しみ方

ついつい、梅雨と言うとジメジメしてるだとか、洗濯物が乾かないなど、ネガティヴなイメージが先行致します。しかし、短歌や俳句などを訪ねてみると、梅雨は梅雨で美しいものだと捉えています。

一つ例を挙げますと、明治期の歌人、前田普羅の残した句に、“梅雨の海静かに岩をぬらしけり”というものがあります。私は、この句が好きで梅雨の季節になるとこの句を思い出します。普段は白くゴツゴツした海辺の岩が、梅雨の雨に濡れ、黒々と艶めいていく、静閑な風景をついつい思い浮かべてしまいます。

確かに、梅雨は湿度も高く、外出するのに傘をささなければいけませんし、革靴を履けば革が痛むし、食べ物は直ぐにダメになるし……、悪い部分の枚挙に暇に困りませんが、普段見てる景色がしっとりと艶めき美しく、そして、とても静かです。梅雨には、激しく煌く夏に向けて、この静かな時期にゆっくりと備えたり、年始からの諸々の問題の整理をしたり、ただ、雨音に耳を傾けながら惰眠貪るなど、様々な楽しみ方があるはずです。

この時期の静けさと共にいただきたいレシピ

この様なゆっくりと静かな時期にどの様な料理が良いかを考えました。ハレの料理ではなく、ケの料理で、重くなく軽く、そして爽やかなものが良いと思います。爽やかで、軽く、そして、ケの料理と言う意味で、すだちうどんが良いとも思いました。しかし、うどんを啜る音が梅雨の静けさには邪魔です。

そこで、サラサラと食せる「茶漬け」にしようと思います。

また、ただの冷やし茶漬けにならないように、雨の日に米を食すことに長けた、タイや、ベトナムの食文化に習い、ささやかなアレンジとして出汁を干し海老から取ることに致します。是非、この時期の静けさと共に、囁く様な主張しすぎない出汁の旨味と、凛としたすだちの爽やかさを味わって下さると幸いです。

下記にレシピをまとめましたので、ご参照ください。

【梅雨に捧げるレシピ – 茶漬け】

材料
干し海老…10g
白胡麻…適量
日本酒…10cc
白出汁…30cc
冷や飯…150g
帆立の缶詰…50g
しそ…適量
氷…適量

作り方
①、干し海老を砕き、日本酒に30分ほど漬け、200ccの熱湯に入れ沸かして出汁を取り、白出汁で味を整え放置し粗熱を取ります。※氷を入れて冷やしますので、お好みで濃さを調整してください。
②、冷や飯をざるに乗せ、軽く滑りが無くなるまで洗い、しっかりと水気を切ります。
③、②を器に盛り付け、①を注ぎ、帆立の缶詰、しそ、白胡麻を盛り付け完成。

※今回は、干し海老のグルタミン酸を引き立てる為に白出汁のイノシン酸、帆立のグアニル酸を使いましたが、お好みで、干し椎茸を加えたり、チキンスープに変えて中華風にしたりとアレンジを加えても面白いと思います。

具も帆立に拘らず、タイやアジ、スモークサーモンの様な魚類、ハマグリやツブ貝などの貝類、さっぱりとした蒸し鶏などもおすすめです。

梅雨は“ハレの料理ではなく、ケの料理”をいただく column150616_okamura_2

岡村飛龍
梅雨は“ハレの料理ではなく、ケの料理”をいただく column_recipe_okamura-in01

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