Posted on 2010/02/03 水 18:41 Music |
これは凄い。聴けば聴くほどハマってしまう。セルフタイトルの本作『アウフガング』でいよいよ世界デビューを果たす彼らのサウンドは、終始驚くべき展開の連続。まるでカタルシスの乱れ打ちだ。ありえないスピードで難解な旋律が駆け巡る2台のグランド・ピアノ、生ドラムと打ち込みの区別がつかないほど正確無比に刻まれるビート、誰にも模倣不可能なレベルまで高められた綿密な曲構成。しかし、クラシックの要素があるからと身構える必要はなく、アティチュードはきわめてポップなので、クラブ・ミュージックのファン以外にも幅広くリーチする存在といえるだろう。もし、あなたがまだアウフガングを知らないのであれば、今すぐ彼らの奏でる音楽にアクセスしてみてほしい。
ドイツ語で「上昇」という意味を持つこのトリオは、フランチェスコ・トリスターノ・シュリメとラーミ・ハリーフェという2名の天才ピアニストに、生ドラムからシンセ、サンプラーまで操るエイメリック・ヴェストリヒを加えた、弱冠20代の鬼才アーティスト/ミュージシャンによるスーパー・プロジェクトである。その類まれなルックスから、「クラシック界の貴公子」の異名をとる中心人物のフランチェスコは、1981年ルクセンブルグ生まれ。パリの市立音楽学校を経て、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院でも学んだ生粋のサラブレッドだ。2004年の<オルレアン20世紀国際ピアノ・コンクール>で優勝した実績を持ち、これまでにバッハの『ゴールドベルク変奏曲』(02)をはじめ、クラシック演奏とオリジナル楽曲のアルバム双方を多数発表している。
ダフト・パンクに衝撃を受け、テクノやエレクトロニカに開眼したというフランチェスコ。ジュリアード音楽院の同級生だったラーミとその旧友だったエイメリックを引き連れ、夜な夜なニューヨークのクラブに通っていたようだ。その当時に触れた最先端のディープ・ハウスや、デトロイト・テクノに夢中になった経験が、ともすれば「行儀の良いお坊ちゃん」になりかねないクラシックのセンスに、現代的なエッセンスを与えることになった。彼らが正式にアウフガングの名義で活動をスタートするきっかけとなったのは、スペインのバルセロナで毎年開催されている前衛音楽とアートの祭典<ソナー・フェスティバル>、2005年への出演。その才能を見出しオファーを仕掛けたのは、たまたまフランチェスコのピアノ・リサイタルに足を運んでいた、デトロイト・テクノの生き証人ジェフ・ミルズ(フランチェスコは、ジェフの“ザ・ベルズ”を大胆なアレンジでカヴァーしている)だったというのだから、音楽の世界は何が起こるか本当にわからない。

近年、アーケード・ファイアやグリズリー・ベアなど、ストリングスを多用した「チェンバー・ポップ勢」の台頭があってか、若いリスナーにとってもクラシックやオーケストラは、とても身近なものになっている。そんなジャストなタイミングで投下されるこのアルバムは、確実に大きな熱狂とリアクションでもって歓迎されることだろう。個人的には、今もっともライヴを観てみたいユニットであり、エイフェックス・ツイン、オウテカ、バトルスといった「テクノ以降」のイノヴェイティブな音楽を生み続けている<ワープ・レコーズ>のファンに対しては、真打ち登場! と、声を大にして言いたい気分である。
そして、2月下旬にはこれまた絶好のタイミングで、フランチェスコ単独のピアノ・リサイタルが日本にて6公演行われる。会場ごとにプログラムが異なり、バッハ、ドビュッシー、モーツァルト、ストラヴィンスキーなどのクラシックを中心に、オリジナルやカール・クレイグの楽曲も演奏される予定だ。アウフガングとしての来日公演にも期待を寄せつつ、まずはその頭脳であるイケメン貴公子の繊細な鍵盤さばきに、骨抜きにされてしまいたい。
(text by Kohei Ueno)
Now on Sale!
Artist: AUFGANG(アウフガング)
Title: AUFGANG(アウフガング)
Third-Ear
Cat-no.XECD-1125
\2,380(tax in)
※ 日本先行発売、日本盤のみボーナストラック収録
www.myspace.com/aufgangsonar
www.third-ear.net
2.23(tue)14:00~ @ 東京文化会館小ホール
チケット情報:\5,000(tax incl.) / 学生当日券 \2,000(原則24歳まで、学生証・必)
ユーラシック03-3481-8696 / ぴあ 0570-02-9999 Pコード: 337-932 /
ローソン 0570-000-407 Lコード: 39976 / e+
【他、来日公演 2010・スケジュール】
-2.20(sat)14:00~
@ 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール / info: 0570-064-939
-2.21(sun)14:00~
@ Hakuju Hall / info:03-5478-8700
-2.25(thu)18:30open/19:00start~
@ サンビームやない
-2.27(sat)16:00~
@ 大阪倶楽部 / info:06-6241-8255
-2.28(sun)14:00~
@ 藤沢リラホール / info:046-872-1963
www.myspace.com/francescotristano
www.francescoschlime.com/
Artist: Francesco Tristano Schlime(フランチェスコ・トリスターノ・シュリメ)
Title: Not for Piano(ノット・フォー・ピアノ)
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