■ WSPEEDI情報の一部がようやく公開された・・・
文部科学省が5月10日、隠し続けてきたWSPEEDI情報の一部をついに公開した。WSPEEDI(第二世代SPEEDI)とは数千km圏内をカバーする広域SPEEDIのことで、日本全域が範囲内のはずだが、今回公表されたのは静岡・長野の一部から岩手・秋田の一部まで、しかも3月25日まで、ヨウ素131のみ、というごく限られたデータである。予測値ではあっても、4月に気象庁が公表した飛散濃度予測マップよりもかなり細かい放射性物質汚染分布が分かるので、人々の安全にとって最重要情報の一つであるはずだ。事故発生から約2ヶ月経ってのこの公開はあまりにも遅すぎると言わざるをえない。情報隠蔽を決定した者たちの罪が法廷で問われるべきであるが、その怒りはここではいったん抑えて、今回公開されたWSPEEDIのヨウ素131の地表堆積量(沈着積算量)の濃度区分から読み解ける新たな情報を見ていきたい。
資料出所:文科省のリンク元ページ(3月25日のところ)、PDF文書「福島第1原子力発電所(特定条件WSPEEDI)[3月25日]」(3ページ目が地表堆積量)
■ ヨウ素131汚染区分(3月25日時点の地表堆積量)
WSPEEDI_ヨウ素131地表堆積分布図
※画像をクリックすると拡大されます
超高濃度汚染地区(黄色):1,000,000-10,000,000Bq/m2
福島県東部(避難エリア)だけでなく郡山市北部から福島市中心地を経て宮城県白石市南部あたりまで、そしていわき市より南の茨城県北茨城市・日立市あたりまでのエリア。ちなみに同じ資料の2ページ目を見ると、福島県本宮市や茨城県高萩市あたりまでヨウ素131による幼児甲状腺等価線量が50-100ミリシーベルトという凄まじいレベルの汚染エリア(オレンジ色)、福島県福島市や宮城・茨城・千葉の一部に20ミリシーベルト以上の超高濃度汚染エリア(黄色)が広がっていることが分かる。
高濃度汚染地区(緑色):100,000-1,000,000Bq/m2
福島県中部の大部分、宮城県の約8割、山形県の南東部、茨城県のほぼ全域、栃木県の約5割、千葉県の北部・東部と南端部、埼玉県の約4割、群馬県の約2割、東京都の奥多摩を除く大部分、神奈川県の約5割(横浜市の一部含む)、静岡県伊豆半島(熱海市から伊東市にかけて)などのエリア。
中濃度汚染地区(水色):10,000-100,000Bq/m2
上記以外の東北・関東・静岡・山梨のほぼすべて、秋田県南東部、新潟県の約5割(南側)・長野県北東部などのエリア(※福島県西部は東京都心より濃度低い)。
低濃度汚染地区(濃い水色):1,000-10,000Bq/m2
東海地方の一部、日本海側の北陸・東北地方の一部。
※超高濃度・高濃度・中濃度・低濃度という言葉は当ブログ独自もので、あくまでWSPEEDIの濃度区分に便宜上当てはめただけです。画像にある通り「実際の放射線量」ではなくあくまで予報データではありますが、各地の相対的なヨウ素131堆積濃度に関しては今のところ一番信頼できる情報だと思います(都道府県別降下量実測データは3月18日以前の一番肝心な部分が抜けている点が致命的)。ちなみにヨウ素131は放射線を出し終わるとキセノン131という放射性物質に変化します。
■ セシウム137の地表堆積量を推定してみる
当ブログでは文科省が公表してきたヨウ素131・セシウム137の地表降下量(3月19日以降、福島・宮城はデータ欠損)を集計してきたが、3月25日までの降下量累積でヨウ素131のセシウム137に対する倍率を求めると、静岡3.3倍、茨城8.1倍、東京13.2倍、千葉40倍など地域によってかなりばらつきがある(福島県についてはデータの得られる3月28日以降の1週間の合計値で比較すると約20倍)。この比率をWSPEEDIデータに適用して、3月25日時点でのセシウム137堆積量を推定すると、以下のようになる。
<セシウム137>
千葉県千葉市:250-2,500Bq/m2(実測値では53,000Bq/m2)
東京(奥多摩以外の大部分):7,700-77,000Bq/m2
静岡県の一部(熱海・伊東など):30,000-300,000Bq/m2
茨城県(北茨城・日立除く):12,500-125,000Bq/m2
福島県福島市中心地:50,000-500,000Bq/m2
ただし千葉市については日本分析センターの土壌調査(調査地点は4月14日)で、小石混じりの土の表面から、ヨウ素131が48000Bq/m2、セシウム134が53000Bq/m2、セシウム137が53000Bq/m2検出されている(3月26日から4月14日の分が含まれてしまっているが各種データを見れば3月25日までの分が圧倒的な割合を占めることは確実)。東京の大部分が千葉市よりも1ランク高濃度であるという新たに分かった事実と、この千葉市の53000Bq/m2という実測値を合わせて考えると、東京の値が53000Bq/m2を下回ることはほとんど考えられない(文科省の降下量データでも千葉より東京の方がセシウム137降下は多い)。また福島市中心地については、5月6日に公開された航空モニタリングの結果でもセシウム137の堆積量が300,000Bq/m2以上という値が出ている。これらのことから、上の予測値の中の最低値よりも最高値の方が現実に近い値であると考えられる。
以上のように今回のWSPEEDIの一部公開によって、3月25日時点のおおまかな値ではあるが、各地のセシウム137の地表堆積量を以前よりはましな方法で推定できるようになった。それにしてもこの国の政府、アルファ線も地表からの放射線の多くもキャッチできないビル屋上で測った放射線量でよくもまあ人々を騙してくれたものだ。

■ チェルノブイリ汚染区分に当てはめてみると・・・
最後にチェルノブイリの汚染区分と比較しておこう。ここでは先述した理由から予測値の最高値を使って計算する。
<セシウム137>
東京(奥多摩以外の大部分):77,000Bq/m2(MBq/km2)=2.1Ci/km2
茨城(北茨城・日立除く):125,000Bq/m2(MBq/km2)=3.4Ci/km2
福島市中心地:500,000Bq/m2(MBq/km2)=13.5Ci/km2
※Ci(キュリー)=37000MBq(MBqは百万ベクレル)
福島市中心地の13.5Ci/km2とは、自主移住が進められたチェルノブイリの第二汚染区分(5-15Ci/km2)に匹敵する。東京の2.1Ci/km2はチェルノブイリの第三汚染区分(1-5Ci/km2)に匹敵する。この記事ですでに千葉市が第三区分に含まれると書いたが、WSPEEDIの情報から東京の大部分も第三区分に含まれる可能性が濃厚になった。この第三汚染区分は、チェルノブイリ災害から10年から20年の間に、その地域で呼吸しその地域の食品を食べていた人々(成人含む)の中でガンや白血病が増加したエリアである。
これらは3月25日までの堆積量の推定値であるが、もちろんその後もセシウムは放出され続けている。地表がコンクリートでかなり下水に流れたエリアを除けば、堆積量もさらに多くなっているはずだ。福島市近辺でもすでに第一汚染区分(15Ci/km2以上)つまりソ連が強制移住としたレベルにまで達しているかもしれない。航空モニタリングのデータでは30km圏外の飯舘村で81Ci/km2以上(セシウム137)というとんでもない値が出ている。
引き続き政府には、まだ隠し持っているすべてのデータ・予測値の公表と、一向に行われないプルトニウムやウランの計測を求めたい。また25人に1人の子供をガン死させるレベルの学校の基準値や、国際基準より数十倍ゆるい食品・水の基準値を早急に見直し、徹底的な放射性物質の除去・排除に努めてもらいたい。



source : 中鬼と大鬼のふたりごと 文科省ようやくWSPEEDI予測値(広域汚染状況)の一部を公表:東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に