クラブ明けはあっさりご飯でデトックス、emです。

 

今回はとある繋がりから、ネットレーベル「Hz-Records」のアーティストお二人をご紹介。Junichi Akagawa、Yaporigamiのお二人を、ライターの東郷さんがインタビューされております。

こちらのインタビューは東郷さんより掲載のお願いを頂きまして、当ブログにて全文掲載を致しました。

YaporigamiさんはOut Of Dotsにも出演されたことがあるほか、MEOW!!!にもゲストとして出演して頂いた、激注目のアーティストでございます。直近では2.5DでのUST出演もされてたり。Junichi Akagawaさんは、PROGRESSIVE FOrMのコンピにも参加された実力ありまくりなアーティスト!

IDMやエレクトロニカの現状について興味のある方、ぜひ!こちらのインタビューをお読み下さいまし。

また、今回のトピックとなっております、お二人のスプリット作品『Nil Bit Berg Horn』は、フリー配信となっておりますので、こちらを聴きながらインタビューを読まれると更に楽しめますよ!

 

* * *
6月20日にHz-Recordsからリリースされたスプリットアルバム『Nil Bit Berg Horn』。本作品を手がけた同世代の若手アーティストJunichi Akagawa、Yaporigami(a.k.a.Yu Miyashita)両者に電話インタビューを試みた。ベルリン、ブライトンと国をまたいで活動する二人の気鋭の、それぞれの制作への向き合いかたとは? 要注目のコラボレーションである本作について話を伺う。

―早速ですが、『Nil Bit Berg Horn』についてお聞きします。今回コラボレーション作品の制作に至った経緯を教えて下さい。

Yu Miyashita 去年11月、ベルリンのChez Jackiというクラブでライブをした時に赤川くんに出会ったんです。そのころ友人の家に滞在させてもらっていたんですが、もう一週間くらいベルリンに滞在したいな…と考えだしていて。

Junichi Akagawa その時ちょうど、僕がルームシェアしてる部屋が1つ空いてたんです。で、「そういうことなら泊まりなよ」って。最初は泊まるってだけの話だったんだけど、音楽やってる2人が一緒になると急になんか一緒にやりたくなっちゃって(笑)。それで自然にコラボレーション作品を作ろうって話になったんです。こんなチャンス滅多にないし。

―Yuさんはベルリンにどのくらいステイしていたんでしたっけ?

Y まず友人のところに1週間いて、その後赤川くんのところに1週間です。

―どんなシェア生活をしていたんですか?何か思い出に残ってることはありますか?

J 同じ部屋に籠もってビール飲んで音楽作って。それから夜は一緒に料理作って。なんか合宿みたいだったね。

Y そうそう、合宿(笑)。一緒のフラットで生活していたこと自体についてはそれほど思い出みたいな出来事はないんだけど、Berghainでやってたraster-notonの15周年イベントに一緒に行ったときに、赤川くんがファンキーに踊ってたのを一番良く覚えてる。

J それどういうこと(笑)。

Y いや、赤川くん、純粋に音を楽しんでる感じでさ。周りの人が割とグダグダと踊ってるなかで赤川くんは、水を得た魚みたいにファンキーに踊ってて。「うわー、こんなに楽しそうに音に反応してダンスする感覚、俺忘れてたわ」って思った(笑)。

―Junichiさんは?

J 僕はとにかくよく2人でビール飲んでたなあって。基本ドイツはビール安いのに、その中でも一番安いやつ選んで飲んでた。

―それはひどいですね(笑)。

J ペットボトルに入ってるビールで、すっごい薄いやつ。

Y 飲んでた飲んでた。キッチンにどんどんボトルが溜まっていっちゃって(笑)。

Yu Miyashita

―今回どういった形でコラボレーションしたんですか?

Y 曲作りに使う音の素材をそのまま渡して、それをベースに楽曲を作っていきました。

J 音楽づくりに使う道具を交換したみたいな感じで、面白かったね。

―お互いの曲や素材を聴いたときには、どんな印象を持ちましたか?

J  僕は制作にはすごくシンプルな音だけを使うようにしていて、音色にかなり制限を加えてるんです。だからYuくんのすごく暴力的な音色だとか、自分では今まで使ったことがない音を聴けておもしろかったです。あとは一緒の部屋で作業してて、作業の仕方や、音の組み方とかも自分とは根本的に違うなって思った。Yuくんの曲が持つ独特な勢いとかっていうのは、やっぱり僕には出せないし、いろんな違いが見えたことがすごく刺激になりました。

Y  赤川くんの音は、凄くピュアな感じの印象。今回コラボレーションするにあたって、今まで僕はそういう音をあまり使ってこなかったから、とても繊細に感じたし新鮮な経験ができたと思います。これまでは大雑把な料理してたのに、いきなり和食を作る事になったみたいな(笑)。

―当時Junichiさんはまだアルバムをリリースしていませんでしたが、YuさんはJunichiさんに出会う以前から作品は知っていたんでしょうか?

Y PROGRESSIVE FOrMのV.A.『Forma3.10』に赤川くんの曲が収録されていたので、音は聴いたことがあったんです。それに加えてMimiCofさんの映像( “Sea and Sun” PV from the album 『Rundskipper』 )を制作した人としても知っていて。ベルリンに来た時に友人からも赤川くんの話をちらっと聞いたりして、サイトにアップされていた作品をチェックしたりしました。赤川くんの作品は「和」な印象がすごくありましたね。グリッチやノイズを使うけど、全体的な印象はピュアで繊細、みたいな。

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=WQ1Su1Wj3u0[/youtube]

PV”Sea and Sun”  Directed by Junichi Akagawa

―互いの曲をリミックスしあうというのはよくある話ですが、今回素材の交換という手法でコラボレーションした理由は?

Y たまたま、お互い素材の整理のしかたが一緒だったからだと思う(笑)。単音でフォルダに分けてたから。

―おもしろいアイディアですよね。

Y 自分の知っている一般的な素材の提供方法は、各トラックをソロで書き出してそれを渡すっていう形なんですが、今回は単音素材のみの受け渡しだから、それぞれのトラックを渡すよりもさらに要素を分解した感じだと思います。

―今回自分が作っていない素材を使ったことで、曲づくりのときに影響はでましたか?互いの作風に引っ張られたり、これまで自分が作ったことないような作品になったりとか。

Y 僕の場合、素材の音を自動書記をするように組み合わせて曲を作っていくんです。それぞれの音素材を、自分の中でベストな形で鳴るように配置していくという感じで。今回は赤川くんの素材が活きるように、自分のフィルターを通して配置していきました。「普段こういう置き方はしないけど、赤川くんのこの音だったらこういう配置の方がいいかな」とか、曲を作っている時に思いましたね。

―Junichiさんは?

J いつもとはかなり違いましたね。Yuくんの音を自分の音楽のなかでどう処理していくかっていうところに苦戦したかなあ。そのまま使ったら、Yuくんらしい音になっちゃうし。普段は自分が使わない音でどう自分らしさをだしていこうかとか、意識する点は多かったです。音色以外の部分でも、ビートの組み方とか配置の仕方が変わりましたね。

―素材はどれくらいやりとりしたんですか?

J 今回渡したのは50くらいかなあ?この間はYuくんから700くらい来たけど。素材を聴くだけで1日かかっちゃった(笑)。

Y 最初に渡したのは『Loops 1.0』の音素材だったよね?

J そうそう。僕のサイドのうち3曲は『Loops1.0』の素材からできてる。

―今作はJunichiさんの曲のマスタリングも、Yuさんが担当してますよね。マスタリングにおいて何か意図したところはありますか?

Y 原曲をそのまま忠実に、ですかね。実は1回やり直してるんです。最初のマスタリングではYaporigamiのような、自分っぽい音にしちゃって。サンプルをHz-RecordsのPakcheeさんに聴かせてみたら、「赤川くんの音はもっとスマートですっきりした印象な気がする」と諭されて、確かに僕もそう思ったんですね。そのあと赤川くんが再度ミックスを修正して送ってくれた楽曲を微調整して、最終的なマスターができあがりました。

―YaporigamiのマスタリングはJunichiさんのマスタリング作業を受けて、変わったりはしましたか?

Y 自分の作品は、いつも通りのYaporigamiの雰囲気でマスタリングしました。赤川くんの作品と並べてみて、そんなに違和感が無かったのはラッキーでしたね。

―Yaporigamiの前作『Jade Fib』同様、相変わらずタイトルや曲名が難解ですが。

Y 今回も実はアナグラムなんですよ。BrightonとBerlinのアナグラム。

―まじで?

Y まじまじ。

―曲のタイトルも?

Y  そう。スプリットのタイトルを和訳すると「ゼロビットの山頂」という意味で。だからイギリスとドイツの一番高い山の名前を検索して、それをアナグラムして決めたんです。もうその山の名前忘れちゃったんだけど(笑)。

J 忘れちゃったなー(笑)。(ドイツの最高峰はZugspitze、イギリスはBen Nevis

Y そのアナグラムが、僕と赤川くんどちらのサイドでも完成するようになってます。それとPakcheeさんが気を利かせてくれて、今回はアートワークもコラボレーション作品になってます。グラフィックがbunaさん、タイポグラフィーが『Loops 2.0』のアートワークを担当してくださったACTGRAMの石橋由悠さんのものです。

J かっこいいよね。

Image by Junichi Akagawa

―初のEPから、今回のアルバムと2ヶ月連続のリリースと相成ったJunichiさんにお聞きします。音楽のスタートは元々バンドでしたよね。今電子音楽のキャリアはどのくらい?

J  5年くらいです。その前は元々バンドをやってて、その後ソロでDTM始めると同時に、電子音楽に入っていきました。音自体は始めたころからずいぶん変わったんだけど。

―曲単位でのリリースはありながらも、これまでアルバム作品にしてこなかったJunichiさんが、このタイミングで一気に作品をリリースし始めたのはどうしてですか?

J 実はYuくんとのスプリットをHz-Recordsからリリースするって話が最初に決まってたんです。でもリリースの話をPakcheeさんと進めていくうちに、いきなり僕がYuくんと音を交換してスプリットをリリースするのは良くないなと思い始めて。YuくんはすでにYu Miyashita、Yaporigamiとしても作品をリリースしてるから音がどんなものかは知られてるけど、僕は作品を出してないから、元々どんな音を僕が作ってるかみんなは知らない。だからスプリットの前にオリジナル作品をリリースした方がいいなと思ったんです。それで、今回のスプリットの前にHz-Recordsから『I, All Things』をリリースすることになりました。

―さきほど「楽曲に使う素材を、シンプルな音色だけに制限している」という話がでましたが、それはなぜですか?

J ちょっと抽象的な言いかたになってしまうけど、自分の使う音は自分の範囲内の音でないといけないという思いがあって、例えばプリセットを適当にいじっていてちょっと良いなとか思った音を使いたくないんです。「自分の音は全部自分でサイン波とかホワイトノイズとかをいじってオリジナルで作らないと嫌だ」とか考えてやっていたら、自然にシンプルな音色に収まったっていう感じです。

―Junichiさんはベルリンで活動を初めて3年目になりますが、日本で活動していたときと比べて生活に何か変化はありましたか?

J 自分のペースが作りやすくなったかな。基本的な生活にしても音楽にしても。ベルリンは自分が自分のスタイルで生活できる良い場所だなって思ってます。

―アジア映画祭へ映像を出展したり、MimiCofさんのPVを担当したり、また自分のパフォーマンスの時にもライブで映像を制御してますよね。映像作品でも評価されているJunichiさんですが、音楽や映像に向かう姿勢について聞かせてもらえますか。何か映像や音楽に一貫してるテーマというのはあるのでしょうか?

J まだベルリンに来たばかりの頃に見たパフォーマンスで、全身を持っていかれるような、五感を支配されるような経験を何度かしたんです。それで、こういうのを自分でもやりたいなって思って。お湯を触ったときとかって、熱い!って感覚があるでしょ?そういう思考が先にあるんじゃなくて、直接感覚に伝わるものを音楽や映像を通してできたらな、と思ってます。制作においてはそのあたりを狙っていますね。

―じゃあ映像作りはじめたのはベルリンから?

J 一応ベルリンに来る前もライブのときに用意した映像を使ったりはしてたんだけど、リアルタイムに楽曲とリンクさせるような映像をつくり始めたのはベルリンに来てから。だからまだ2年くらいかな。

―お二人とも海外から日本のシーンに入っているわけですが、外から見ていて、今の日本の電子音楽のシーンにどんな印象を持ってますか?

Y シーンがすごくおもしろくなってきていることを最近日本で活動していて感じます。『日本から世界へ羽ばたこう』っていうのは割と良いキャッチフレーズとして使われていると思うんですが、でもそれっていうのは裏を返せば海外のほうがやっぱり素晴らしい、と考えてるという意味にも取れる。でもそうじゃなくて『日本を世界の中心にしてやろう』っていう思いをもつ人が増えてくれればな、とは考えます。日本を世界で一番ヤバイ場所にしちゃえば、世界からみんなが集まってくるわけですから。音楽の側面から見ても、今の日本のシーンを見てると世界を引っ張る力は徐々に芽生えてる気がします。そうなって欲しい、という自分の願望も多分に入っていますが。国とか関係なく世界的におもしろい人がどんどん出てくればそれがベストだとは思うんですけど、僕やっぱり日本人だし、自分の国が面白くなってくれるのはうれしいことですしね。

―Junichiさんは?特にベルリンという電子音楽が盛んな街で活動していて。

J 日本のシーンについては、Yuくんに教えてもらうことが多いんです。Yuくんからよく聴くのは「日本には可能性がありまくる」っていうこと。今日本で、僕らがやってるような音楽のシーンが本当に盛り上がってるということを聞いていると、やっぱりうれしい。

―僕も、日本の電子音楽のシーンが盛り上がっているのを感じています。大小問わず色んなイベントが曜日関係無くひらかれてますし、そういうイベントがあるからこそ若手のアーティストもどんどん活躍できる。良い状況ですよね。さて、今年ももう折り返しです。最後にお二人の今年の動向を教えてください。

Y Hz-Recordsから9月6日にCDアルバムが出ますので、よろしくお願いいたします。それと日本の滞在が延びそうなので、ライブのオファーもお待ちしております。

J  僕のライブはここで告知しても、誰が来れるかわからないけどね(笑)。7月に1本MimiCofさんのライブのVJをやります。あとは去年からダンサーの人とずっと進めているコラボレーションの企画があって、Kinectを使ったり、音と映像を使ったプロジェクトを進めていきます。

Interviewed by 東郷晴也

<Profile>
◆Junichi Akagawa(http://junichiakagawa.net/)
1985年生まれ。現在ベルリン在住。様々な音楽活動を経て、2008年よりエレクトロニック・ミュージックとヴィジュアル・アート作品の制作を開始。これまでにPROGRESSIVE FOrMのコンピレーションアルバム“Forma 3.10″ ‚Sea And Sun”MimiCof”(a.k.a Midori Hirano)のPV制作、ライブビジュアルサポートなど東京とベルリンにて多数のイベントに参加。また自身のオーディオ・ヴィジュアルパフォーマンスに加え、コンテンポラリーダンスとのコラボレーションや楽曲提供、イベントオーガナイズ等幅広く活動する。主にラップトップを用いてリズムを基調とした電子音楽/映像を制作し、「音楽である事を意識したその空間にしか鳴らない音を探し、聴覚と視覚をリンクさせる音楽/映像」を表現し体感させる。

◆Yaporigami(www.underarrow.com)
日本と英国を拠点に活動する電子音楽家Yu Miyashitaによるソロプロジェクト。これまでに+Mus, Hz-records、Merry WorksSymbolic Interactionなどから作品をリリースし、国内外多数のコンピレーションアルバムに参加。近年はYu Miyashita名義の活動も精力的に行なっており、自身のレーベルvvhyの設立、Mille PlateauxやmAtterからのアルバムリリース、SIGNALDADAからのshotahiramaとの共作等で知られている。ノイズ、グリッチといった素材を駆使し、Yaporigami名義ではビートのある作品、Yu Miyashita名義ではノンビート作品を生み出している。

 

〈Hz-Records〉
今作『Junichi Akagawa / Yaporigami “Nil Bit Berg Horn”』など、インターネット上で先端電子音楽をフリー配信し、今最も注目を集めている電子音楽レーベル”Hz-records”から、初のフィジカル作品がリリースされます。

Yaporigamiと、同レーベルを主宰するwk[es]が下記日程にてCDアルバムをリリースします。CDジャケットデザインは、デジタルアートの最先端を走るビジュアルレーベル・Recodeが担当。さらにCDジャケットに使われたビジュアルは、Recodeからもキャンバスプリントとしてリリースされます。サウンドとビジュアルの最先端を走る2レーベルのコラボレーションについても要注目の作品となっています。

・2012/07/22(日) wk[es]
・2012/09/06(木)Yaporigami

詳細近日公開予定
URL: www.hz-records.com

 

 

※今回の記事には、複数の箇所にリンクを埋めています。気になるレーベル・作品は、ぜひチェックしてみてね!