kim(UHNELLYS)

コラムニスト

声とバリトンギターによるリアルタイムサンプリングと、それにジャストのタイミングで合わせたドラムを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えた唯一無二のサウンドを構築する「UHNELLYS」で歌う男。2013年には2度目の<FUJI ROCK FESTIVAL>に出演し、夜の食堂を大いに盛り上げる。そして2014年3月、自身で設立したレーベル、〈I’mOK〉から5thアルバム『CHORD』をリリース。何度でも言うが音楽は素晴らしい。

NEW

kim(UHNELLYS)

俺たちに明日はない

僕たちは生まれた時から一緒。ブリーダーの繁殖作業により僕らは生まれた。だから父親も母親も知らない。でも不思議と寂しいなんて感じたことは無かった。同じ境遇の兄弟達が周りにたくさんいるし、次から次へと弟や妹が増えていく。

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kim(UHNELLYS)

あなたの未来についてお話が

私は課長だ。ずっと前から課長だ。この先もずっと課長だろう。なにしろ課長のまま10年以上経っている。小さい会社だが少しづつ業績も上がっていて、社員も年々増えているが私は課長のままだ。

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毒
kim(UHNELLYS)

道無き道を何時間も歩いて、やっと辿り着いた山奥のそのまた奥にある湖。ここは僕が地学を研究し、探し求めていた水源があるとついに断定した場所だ。ある決まった年代の岩石を通過した水のみに含まれる貴重な成分を、僕は何年も追いかけている。

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ハッピーバースデー
kim(UHNELLYS)

ハッピーバースデー

私は壊れてもいない靴の修理のためにここに座っている。どうしても会社に戻りたくなくて。昔、実家がカバン屋だったから革のニオイを嗅ぐと少し落ち着くのだ。

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視線
kim(UHNELLYS)

視線

僕たち3人は保育園で出会いすぐに親友同士になった。まだ言葉もうまく喋れないうちに。親たちが迎えに来るまで3人はずっと一緒。誰かが泣いていれば泣き止むまでそばにいる。

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kim(UHNELLYS)

鶴の恩返し

「しばらくの間海外に行け。俺が連絡するまで俺に連絡するな。帰ってこいと言うまで帰って来るな。すぐ出発しろ」深夜3時の電話は僕が多額の借金をしていた金融屋からだった。とうとうこの時が来た。

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kim(UHNELLYS)

終点の先に

私のパパは毎日みんなを学校に届けてくれるスクールバスの運転手。私もそのバスに乗って学校に通っていた。バスに乗り込む時に運転席のパパと目が合うと、少し恥ずかしくて、でもやっぱり凄く誇らしかった。

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kim(UHNELLYS)

未来予想図

観光客が集まる繁華街を抜けてしばらく歩いたところに、陽気な兄弟が営む路上マッサージ店がある。僕はタイに来ると必ずここに寄る。もちろん腕が良いのだけどそれだけじゃない。この兄弟は足の裏を見て占いをしてくれる。

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kim(UHNELLYS)

プラスとマイナス

会社が妻の愛人に乗っ取られてしまったことに気づき、急いで事務所から飛び出して私は車に轢かれた。減速することなく走り去る茶色いワゴンをなんとなく憶えている。目が覚めたのは病院のベッドの上。下半身は不随になっていた。

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kim(UHNELLYS)

島のマドンナ

私がアルバイトをしている船乗り場には、到着する船をこっそりと待つネコがいる。1日に5本しか船は来ないのに、いつも同じ場所で律儀に誰かを待っている。船が乗船場に近づくたびにどこからともなく定位置に現れ、最後の乗船者が降りるのを見届けてまたどこかに歩いて行ってしまう。

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kim(UHNELLYS)

感情論

ロボットに感情を持たせることが解禁されたのは2年前。倫理的に問題があるとして日本ではなかなか規制が緩和されなかった。でも人間同士の付き合いに限界を感じている僕を含む大勢にとっては、これまでに無い嬉しいニュースだった。

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kim(UHNELLYS)

私はこの数ヶ月間、毎日1時間かけてここに来ている。数100メートル向こう、360度見渡せるこの場所に。犬のバドも一緒だ。

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僕たちの視界

4年ぶりに見る外の景色にアカネはとても興奮している。こんなにはしゃいだ声を聞いたのは久しぶりだ。どうしてこんなにはしゃいでいるの? と近くにいるはずの妻に聞くと「シャボン玉が沢山飛んでるの」と教えてくれた。

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夫婦のかたち

離婚してください。なかなか言えなかった言葉を今日、私はするりと言った。なにかきっかけがあったわけではないけど、天気の良い日に布団を干すようにとても自然に言えた。

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ひとりごと

僕は別に監視員でも警備員でもない。海鮮を店先で焼いてお客さんを引き寄せるただのアルバイトだ。毎日ここに立っているから、岬に向かう人はみんな僕の前を通り過ぎる。

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黒い太陽

アカネが産まれた時にはもう太陽は暗かった。日中明るい時間は1日6時間くらい。その時間も段々短くなっていて、アカネが物心ついた頃には、夕方と夜しかなくなった。

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いつかの紅葉

「この人をよろしくね」そう言って妹の紅葉は旅立った。結婚式まであと数週間だったのに。それまで必死に明るく振る舞っていた紅葉の婚約者は、堤防が決壊したかのようにその場に泣き崩れた。

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交差する刹那

最近小さい女の子がさらわれる事件が続いてるんだって。学校の友達もいつの間にかいなくなったりしてるし。新聞には載ってないけど噂は本当なのかも。実は私は犯人に心当たりがあるの。

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私から離れて

結核にかかった私はしばらく隔離されることになった。どうりで何週間経っても咳が止まらなかったわけだ。レントゲンで結核らしき影が見つかった時のお医者さんの慌てようは今思い出しても笑ってしまう。

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まな板の恋

割烹料理屋だから目印になるだろう、そんな軽い気持ちで俺の家を待ち合わせ場所にしたのが大きな間違いだった。

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彷徨う理由

今から50年ほど前「ゾンビは人を襲う」という迷信があった。だからゾンビが初めて街に現れた時は酷い扱いを受けた。見た目が気色悪く、言葉が通じない死人がノロノロと近づいて来るのだから恐怖を感じても仕方がない。

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猫の家来

殿、連れて参りました。中山道のあの茶屋の娘でございます。一目で惚れたんだ、と殿が興奮気味に仰っていたあの時の娘です。なんとこの娘も「殿の熱い視線がどうしても忘れられなかった」と申しております。これには驚きました。はい、十分に人目につかぬよう気を配りました。

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パズル

目覚めると男はもういなかった。平日の朝だし、仕事に行ったのだろう。名前を聞いた気がするけど思い出せない。汗ばんだ顔と力んだ手つきは憶えてる。

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More Than Words

会話も無く引っ越しの準備をしている私達。別居なんて離婚と一緒だって思っていたのに。先月、夫から「別居したい」って言われて私はどうしても断れなかった。だったら離婚しようよ、って私ならすぐ言い返すと思っていたのに。

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夏の終わりと始まり

「やたら陽気なおデブ」僕は小さい頃からそう思われてる。大声で笑ったり、大げさなリアクションをしたり、ハンバーガーをいくつもたいらげたり、膨れたお腹を揺すってみせたり。ずっとこんなことをして来た。

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声の記憶

「やっと見つけたぜ。俺はあんたに憧れて育ったんだ。いつか会いたいってずっと願ってたんだ」訪ねて来た若い黒人が興奮気味に私に言う。私には一体何のことかさっぱり分からない。君は誰かと私を勘違いしているよ、そう言っても若者は一向に譲らなかった。

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kim(UHNELLYS)

不可能リサイクル

法律が改正され、不要な家族は粗大ゴミとして捨てられるようになった。住んでいる地域の福祉課の許可が必要だが、本人の了承があればそんなに難しいことではないらしい。

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トライアングル

僕たち3人は幼なじみ。幼稚園で出会ってすぐに仲良くなった。喧嘩もせずに毎日遊び回り、褒められるときも叱られるときもいつも一緒。

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おんなは度胸

息子の家族が海外旅行先で爆発に巻き込まれた。テロなのかどうかはまだ不明だが、真昼の商店街での爆発で多くの観光客が被害にあった。日本のマスコミでも連日報道されるほどの大事件だ。

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書きかけのスコアブック

初めて発作が出たのは高校1年生の時だ。走り込みと球拾いを繰り返していた最中に、息子は気を失って病院に運ばれた。近くの病院では原因がよく分からず、あまり無理せず野球を続けていたが半年後にまた倒れてしまった。

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kim(UHNELLYS)

賛美歌が聴こえる

「人通りが少ない場所に車を移動してくれ」夫がイラついた声で言う。私は返事をしないまま言われた通りにする。裏通りに車を停めて辺りを見回し、誰もいないことを確認してエンジンを切った。

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LIGHTS, CAMERA, ACTION

カメラマンになるために上京して3年。僕はまだアシスタントにしかなれていない。事務所の先輩の重い荷物を運び、セッティングを済ませ、光の調節をする。斬新な構図なんていらない。相手先が求めるのは、どこの誰が見ても違和感のない写真。それを熟知したカメラマンが期待通りの写真を撮る。

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次の方どうぞ

娘による最終テストが始まった。彼が自分の父親として相応しいかどうか、自転車に乗れない女の子を演じながら試すのだ。

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オバケと不倫

彼はいつもの時間にやって来た。私は約束の時間より少し前に到着して彼を待つのが好き。そして新聞を読んだり、湖面を眺めたりしながらなんでもない時間を過ごす。誰にも邪魔されないこの時間を私達はずっと待ち望んでいた。

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kim(UHNELLYS)

兵士のスマイル

「政治になんて興味ないさ、あんなのはネクラの人間のやることだよ」大学生だった彼は笑いながらいつもそんなことを言っていた。

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kim(UHNELLYS)

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10年に1度くらいの頻度で私立探偵が流行する。おそらくTVドラマや漫画の影響だと思うが、その度に目をキラキラ輝かせた若者達が我が探偵事務所に詰めかける。

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