戸内国際芸術祭の関連事業の1コンテンツとして、音楽による地域活性プロジェクト<ノベルサウンズゲート>の試みにより、香川県観音寺市の各所をテーマに制作されたオリジナル曲が、瀬戸芸の舞台・伊吹島のある観音寺市で初披露された。

ウツツキの「ちょうさ祭り」からスタートした公演は、商工会議所からお借りしたちょうさ太鼓によるパフォーマンスで、地元のおばちゃん方から興奮気味な喝采を浴びる。続いては、広島コンピュータ専門学校・音楽制作コースの小林先生と元生徒の紫水。紫水の幽幻なヴォーカルと堂々とした立ち振る舞いは、まるで和製ビョーク!? テーマである「雲辺寺」本尊の千手観世音菩薩のようでもあった。

ArtLism.JPからhideride+藤翠、邂逅のレーベルオーナーtomoki takeuchi、 little phrase、stabiloとmatryoshkaのヴォーカリストCaluのコラボレーションと続き、moshimossでクライマックスの盛り上がりとなる。 観光協会パンフレットの表紙も飾る「有明浜(燧灘)の夕日」、海に真っ赤に溶け落ちてゆく夕日を表現するようなmoshimossのサウンドワークは、一歩外に出れば詫びた古い街並みが静寂と宵闇が佇むのに、かまぼこ倉庫の中では音のさざ波と渦巻く熱気が溢れていて、これは本当にもう、体験した人にしか解らない感動であったと思う。最後は、Flower Triangle+江口智恵(no;ches)が熱さのあるヴォーカルとは対照的に、場の空気に露を含ませて涼しさを齎して終わった。気付けば外はもう夜で、虫の声が涼しく響いていた。

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外観

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little phrase

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moshimoss

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4日は、地元香川のAjiroが、バグパイプとアコーディオンを演奏しながら登場し、タブラなどでイサム・ノグチの遊具と自然が融合した「一の宮公園」を夏の似合う音楽で表現。次いで、北海道からの木箱、夢中夢のヴォーカル・Hatis NoitとAureoleのフロントマン・森大地によるmagdala。DJまほうつかいは、ピアノを使って地元の子供達に「今日は何食べた?」「観音寺のどこが好き?」と問いかけていく。それに笑いながら答えるサンプリングの子ども達。いつもの観音寺の人懐っこい子ども達とのやり取りが、ここに再現されていたのは見事という他に無かった。子ども達の声のレコーディングは、ドイツ・ベルリンで活動する豊浜出身のアーティスト・usaginingenに手伝ってもらった。京都精華大学の若干19歳の学生による、笑う環境音楽の黒く重いアンビエントは、伊吹の海を司る八幡様が指揮棒を振るっているようでもあり、波の音やノイズが縦横無尽に海に黒い絵を描いた。

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Ajiro

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magdala

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DJまほうつかい

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大トリは、今回の公演全体の音響監督を務めた、北川フラム氏のアートフロントのアーティスト・船田奇岑と、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部のRAKASU PROJECT.(落晃子)と西田彩の3人によるIpso facto。練馬区立美術館、京都国立近代美術館、広島県立美術館などでのコンサート歴のある、無機と有機を音の向こうに繋ぐ空間即興音楽はアンビエンスでノイジー。VJ・filmoutの演出する、雷雨の中に乱立し続く観音寺松原の風景と、会場の煤けた赤煉瓦の土の質感、そしてこもった熱い空気と全てが混沌に融解して、私は、室内にいるのに、台風に覆われた観音寺松原に遭難していた。そして、不安に襲われながらも、この気持ち良さがどこまでも続いて欲しい・‥と思っていた。公演終了後も、頭の芯がじんわりと痺れていて、しばらくはポーッとしていた。。。

Ipso facto

こうして真夏の夢のように終わった幻想的な公演だが、次は瀬戸内国際芸術祭・秋会期スタート日の10月5日に本公演楽曲を収録したアルバムが配信リリース&巡回公演がスタート予定という事で、これからも行方を追いかけていきたいプロジェクトである。

先行披露公演ダイジェスト映像


Release Information

2013.10.5 on sale!
Artist:V.A.
Title:おとくち ~香川県観音寺市~
このプロジェクトは音楽家だけでなく、写真家、映像作家、イラストレーター、日本画家、割烹、学生、美術館学芸員、Webデザイナー、地元住民の方々など様々な分野の方が参加し、作り上げています。

(写真:ヨシガカズマ)